2018年6月13日「食品ロスの削減の推進に関する法律案」全文公開 緊急院内集会 於:参議院議員会館
2018年6月13日、「食品ロスの削減の推進に関する法律案」緊急院内集会が参議院議員会館で開催された。食品ロスの削減の推進に関する法律案については、公明党の食品ロス削減推進PT(プロジェクトチーム)が、座長で参議院議員の竹谷とし子氏を中心に、これまで数年間をかけて取り組んで来られた。筆者も2017年2月2日、議員会館に呼んで頂き、法案に入れて欲しい具体的な内容について、専門家の立場からお話させて頂いた。
今回の集会は次の通り開催された。議員や、全国紙などのマスメディア、全国のフードバンク団体や子ども食堂関係者など、様々な立場の人が集まった。
日時:2018年6月13日(水)16:30〜18:00
会場:東京都千代田区永田町2丁目1-1 参議院議員会館 B109会議室
主催:一般社団法人全国フードバンク推進協議会
16:30 開会
16:35 主催者挨拶
16:40 議員挨拶
16:55 「食品ロスの削減の推進に関する法律案」の説明
17:10 国内フードバンク団体の課題と法案への期待
17:25 参加者からの発言、意見交換
18:00 閉会
当日、ハードコピー(紙)で配布された法律案骨子案については、公表可能とのこと、下記に全文を紹介する(ただし、今後、各党の調整の中で修正が入る可能性あり)。
以下
食品ロスの削減の推進に関する法律案骨子案
第1 前文
我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、販売、消費等の各段階において日常的に廃棄され、大量の食品ロスが発生している。食品ロスの問題については、2015年9月25日の国際連合総会において採択された持続可能な開発のための2030アジェンダにおいて言及されるなど、その削減が国際的にも重要な課題となっており、また、世界には栄養不足の状態にある人々が多数存在する中で、とりわけ、大量の食料を輸入し、食料の多くを輸入に依存している我が国として、真摯に取り組むべき課題である。
食品ロスを削減していくためには、国民各層がそれぞれの立場において主体的にこの課題に取り組み、社会全体として対応していくよう、食べ物を無駄にしない意識の醸成とその定着を図っていくことが重要である。また、まだ食べることができる食品については、廃棄することなく、貧困、災害等により必要な食べ物を十分に入手することができない人々に提供することを含め、できるだけ食品として活用するようにしていくことが重要である。
ここに、国、地方公共団体、事業者、消費者等の多様な主体が連携し、国民運動として食品ロスの削減を推進するため、この法律を制定する。
第2 目的
この法律は、食品ロスの削減の推進に関し、国、地方公共団体等の責務等を明らかにするとともに、基本方針の策定その他食品ロスの削減に関する施策の基本となる事項を定めること等により、食品ロスの削減を総合的に推進することを目的とする。
第3 定義
1「食品」とは、飲食料品のうち医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品以外のものをいう。
2「食品ロスの削減」とは、まだ食べることができる食品が廃棄されないようにするための社会的な取組をいう。
第4 責務等
1 国の責務
国は、食品ロスの削減に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 地方公共団体の責務
地方公共団体は、食品ロスの削減に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
3 事業者の責務
事業者は、その事業活動に関し、国又は地方公共団体が実施する食品ロスの削減に関する施策に協力するよう努めるとともに、食品ロスの削減について積極的に取り組むよう努めるものとする。
4 消費者の役割
消費者は、食品ロスの削減の重要性についての理解と関心を深めるとともに、食品の購入又は調理の方法を改善すること等により食品ロスの削減について自主的に取り組むよう努めるものとする。
5 関係者相互の連携及び協力
国、地方公共団体、事業者、消費者、食品ロスの削減に関する活動を行う団体その他の関係者は、食品ロスの削減の総合的かつ効果的な推進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。
6 食品廃棄物の発生の抑制等に関する施策における食品ロスの削減の推進
国及び地方公共団体は、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律その他の関係法律に基づく食品廃棄物の発生の抑制等に関する施策を実施するに当たっては、この法律の趣旨及び内容を踏まえ、食品ロスの削減を適切に推進しなければならない。
第5 食品ロス削減月間
(1)国民の間に広く食品ロスの削減に関する理解と関心を深めるため、食品ロス削減月間を設ける。
(2)食品ロス削減月間は、10月とし、特に10月30日を食品ロス削減の日とする。
(3)国及び地方公共団体は、食品ロス削減の日をはじめ食品ロス削減月間において、その趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。
第6 財政上の措置等
政府は、食品ロスの削減に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
第7 基本方針等
1 基本方針
(1)政府は、食品ロスの削減に関する施策の総合的な推進を図るため、食品ロスの削減の推進に関する基本方針を定めなければならない。
(2)内閣総理大臣は、基本方針の案につき閣議の決定を求めなければならない。
2 都道府県食品ロス削減推進計画及び市町村食品ロス削減推進計画
(1)都道府県及び市町村は、基本方針を踏まえ、当該都道府県又は市町村の区域内における食品ロスの削減の推進に関する計画を定めるよう努めなければならない。
(2)(1)の計画は、都道府県にあっては都道府県廃棄物処理計画等と、市町村にあっては一般廃棄物処理計画等と調和を保つよう努めなければならない。
第8 基本的施策
1 教育及び学習の振興、普及啓発等
(1)国及び地方公共団体は、消費者、事業者等が、食品ロスの削減について、理解と関心を深めるとともに、それぞれの立場から取り組むことを促進するよう、教育及び学習の振興、啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。
(2)(1)の施策には、必要量に応じた食品の販売及び購入、外食において食べきれなくなった食品の持帰りその他の消費者と事業者との連携協力による食品ロスの削減の重要性についての理解を深めるための啓発が含まれるものとする。
2 食品関連事業者等の取組に対する支援
(1)国及び地方公共団体は、食品の生産、製造、販売等の各段階における食品ロスの削減についての食品関連事業者(食品の製造、加工、卸売若しくは小売又は食事の提供を行う事業者をいう。6(1)において同じ。)及び農林漁業者並びにこれらの者がそれぞれ組織する団体((2)において「食品関連事業者等」という。)の取組に対する支援に関し必要な施策を講ずるものとする。
(2)国及び地方公共団体は、食品の生産から消費に至る一連の過程における食品ロスの削減の効果的な推進を図るため、食品関連事業者等の相互の連携の強化のための取組に対する支援に関し必要な施策を講ずるものとする。
3 表彰
国及び地方公共団体は、食品ロスの削減に関し顕著な功績があると認められる者に対し、表彰を行うよう努めるものとする。
4 実態調査等
国及び地方公共団体は、食品ロスの削減に関する施策の効果的な実施に資するよう、まだ食べることができる食品の廃棄の実態に関する調査並びにその効果的な削減方法等に関する調査及び研究を推進するものとする。
5 情報の収集及び提供
国及び地方公共団体は、食品ロスの削減について、先進的な取組に関する情報その他の情報を収集し、及び提供するよう努めるものとする。
6 未利用食品等を提供するための活動(いわゆるフードバンク活動)の支援等
(1)関係者相互の連携の強化
国及び地方公共団体は、食品関連事業者その他の者から未利用食品等まだ食べることができる食品の提供を受けて貧困、災害等により必要な食べ物を十分に入手することができない者にこれを提供するための活動が円滑に行われるよう、当該活動に係る関係者相互の連携の強化を図るために必要な施策を講ずるものとする。
(2)民間の団体が行う活動に対する支援
国及び地方公共団体は、民間の団体が行う(1)の活動を支援するために必要な施策を講ずるものとする。
(3)調査及び検討
国は、(1)の活動のための食品の提供等に伴って生ずる責任の在り方に関する調査及び検討を行うよう努めるものとする。
第9 食品ロス削減推進会議
(1)内閣府に、特別の機関として、食品ロス削減推進会議を置く。
(2)推進会議の会長は、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)をもって充てる。
(3)推進会議の委員は、次に掲げるものをもって充てる。
1 農林水産大臣
2 環境大臣
3 1及び2のほか、内閣総理大臣が指定する関係大臣
4 内閣総理大臣が任命する有識者
(筆者注:1から4について、資料原文では、まる1、まる2、まる3、まる4・・・と記号で記載されている。入力の関係上、まるは省いた)
(4)推進会議は、基本方針の案を作成する。
第10 施行期日
この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
以上
法案の説明とフードバンク団体からの意見を終え、プログラムは「参加者からの発言・意見交換」に移った。筆者からは、意見として、骨子案に記載のある「事業者」という言葉の中にはヒエラルキー(階層)があり、それが食品ロスの一因になっているので、そこを明確にして斬り込んで欲しい旨を発言させて頂いた。
公正取引委員会は、優越的地位の濫用を禁じているが、実際には、食品業界の中にある商慣習やペナルティにより、立場の下の者が上の者に逆らえない状況がある。それが、必要量以上の過剰生産や過剰販売の実態を生み出しており、食品ロスの要因の一つとなっている。議員の方からは、「具体的なことは、法案が通ってから」との回答を頂いた。法案が通り、審議会ができたら、ぜひその点について具体的な策を議論して頂きたい。
東京都狛江市から参加された、NPO法人フードバンク狛江(こまえ)理事長、田中妙幸(たえこ)さんからは、骨子案の第9にある省庁の大臣に関し、意見が出された。原文には農林水産大臣、環境大臣・・・とあるが、困窮者支援など、福祉の面を考慮し、厚生労働省(厚生労働大臣)や文部科学省(文部科学大臣)が入らないと必要なところに食料がいかない、と提言が述べられた。田中さんは、近所で4人の子育てをしている人と出会ったことから、4年前、フードバンク活動を始め、奮闘されている。
子ども食堂支援機構の秋山さんからは、食品ロスを生み出す商慣習の一つである「3分の1ルール」が時代にそぐわないことの指摘がなされた。3分の1ルールでは、賞味期間全体を3分の1ずつ均等に期間を分け、最初の3分の1で製造者が小売に納品する「納品期限」、次の3分の1で小売が売り切り、残っていれば棚から撤去する「販売期限」が設けられている。法律ではなく商慣習だが、これにより年間1,200億円以上のロスが生まれており(流通経済研究所による)、農林水産省や流通経済研究所、食品業界が2012年からワーキングチームを組み、緩和に取り組んできている。「3分の1ルール」は、1990年代に大手小売が設定し、それに他の小売も追随したと言われる。
この質問に対しては、竹谷とし子氏が、この法案が通ることで事業者側に行動を促す意義について述べ、ICTを活用し、サプライチェーンの在庫を削減していく取組についても触れられた。
この会には東京都板橋区や埼玉県、奈良県、和歌山県、滋賀県のフードバンク団体も参加し、一部から現状についての報告があった。フードバンクいたばしの藤村行一氏からは、議員に提供されるお中元・お歳暮などの活用についての提言もあった。
竹谷氏からは、「骨子案を作る上でも話を聞いてきたが、さらに足らざる部分について意見を頂いたことを有難いと思う。他方では、この法案に対する慎重な意見を伺っている。様々な立場の方に賛同してもらい、全会一致で、できるだけ早く合意形成をするために頑張る」との挨拶があった。
最後に、会を主催した一般社団法人全国フードバンク推進協議会の米山けい子氏から挨拶があり、閉会した。
今後も期待したい。
関連資料:
食品ロスの削減の推進に関する法律案成立に向け、緊急院内集会を開催します(2018年6月1日発表 全国フードバンク推進協議会)
【一般社団法人全国フードバンク推進協議会】 「食品ロスの削減の推進に関する法律案」成立へ向けご協力を!6月13日に緊急院内集会を開催します(ボラ市民ウェブ)