アトレティコはバルサやレアルを倒せるか?スアレス、フェリックス、ジョレンテの「3本の矢」の可能性。
アトレティコ・マドリーから、目が離せない。
リーガエスパニョーラ第12節終了時点、アトレティコ(未消化2試合)は首位に立っている。チャンピオンズリーグではグループステージ最終節でザルツブルクを下して、ベスト16進出を決めた。
■主力の移籍
2019年夏。アトレティコは苦しい状況に追い込まれていた。
ロドリ・エルナンデス(契約解除金7000万ユーロ/約84億円)がマンチェスター・シティに、アントワーヌ・グリーズマン(契約解除金1億2000万ユーロ/約144円)がバルセロナに、リュカ・エルナンデス(契約解除金8000万ユーロ/約96億円)がバイエルン・ミュンヘンに引き抜かれた。加えて、ディエゴ・ゴディン、フアンフラン・トーレス、フィリペ・ルイスと長年主力を張ってきた選手がクラブを去っていった。
グリーズマンの後釜には、ジョアン・フェリックス(移籍金1億2700万ユーロ/約152円)が選ばれた。フェリックスを含めた8選手が新たにアトレティコの門戸を叩き、ディエゴ・シメオネ監督の指揮下に入った。
我々は過渡期にある。シメオネ監督は昨季、そう認めていた。カウンターフットボールからポゼッションフットボールへの移行はうまくいかず、一時リーガで6位まで順位を落とした。原点回帰で堅守速攻のスタイルに戻すとスペイン・スーパーカップでバルセロナを撃破し、チャンピオンズリーグで当時欧州王者リヴァプールを同大会から葬った。
最終的にはリーガでの3位フィニッシュとCLベスト8進出を果たした。クラブの目標を達成して、新たなシーズンに向かった。
■スアレスの加入
この夏も慌ただしかった。アルバロ・モラタがユヴェントスに、トーマス・パーティーがアーセナルに移籍。コロナ禍において主力流出を妨げる術を見つけるのは難しかった。
だが悲観的なニュースばかりではなかった。ルイス・スアレスの加入だ。バルセロナで戦力外になっていたスアレスの獲得に成功。棚から牡丹餅とは、このことである。
「スアレスの存在で我々のプレースタイルは変化した。彼の特徴に合わせて動く必要があるからだ。モラタやジエゴ・コスタはスペースに向けて走るタイプ。だがスアレスは自分の近くに味方がいて欲しいと思っている。我々は最も困難な目的、つまりゴールを奪うために働き続けている」とはシメオネ監督の言葉だ。
指揮官が認めるスアレスの加入で恩恵を受けた選手がいる。ジョアン・フェリックスとマルコス・ジョレンテだ。フェリックス(公式戦16試合8得点3アシスト)、ジョレンテ(16試合5得点3アシスト)と攻撃における彼らの貢献は大きい。
今季のアトレティコはスアレスが前線で起点になり、高い位置でのポゼッションが可能になっている。またスアレスのフリーランニングで空いたスペースをフェリックスやジョレンテで使うようになり、彼らの得点関与率が高まっているのだ。
■エルモソと5バックの可能性
また、ディフェンス面でも変化が見られる。マリオ・エルモソの左サイドバック起用だ。
アトレティコは昨年夏にエルモソを獲得。移籍金2500万ユーロをエスパニョールに支払った。だがシメオネ監督が3バックの施行に失敗し、シーズン終盤に向かうにつれてエルモソの出場機会は減っていった。
今夏、レアル・ソシエダがエルモソ獲得に動いていた。しかしながらアトレティコに残留すると、シメオネ監督は彼を左サイドバックとして重宝するようになった。昨季のようにキリアン・トリッピアーとレナン・ロディが両翼になる形ではなく、エルモソのビルドアップ能力にシメオネ監督は賭け始めている。また、バルセロナ戦では5バックを採用した。そのシステムチェンジを念頭に置いた時、エルモソが欠かせないピースになりそうだ。
CLで決勝トーナメント進出を決めたが、今週末にはレアル・マドリーとのダービー戦が控えている。試合から試合へーー。シメオネ監督はその姿勢を崩そうとしない。2013-14シーズン以来のリーガ制覇の野心が顔を覗かせる。だが彼らは「現在」を生きている。