なぜバルサはクラシコで勝利できたのか?カンテラーノの躍動とハンジ・フリックの信頼。
ビッグマッチが、選手を成長させる。
今季序盤、良いペースで歩みを進めているのがバルセロナだ。リーガエスパニョーラで10試合消化時点まで首位をキープ。リーガでバルセロナに土をつけたのは、オサスナだけだった。
そのバルセロナを、ビッグチームが待ち受けていた。
リーガエスパニョーラ第11節、レアル・マドリーとバルセロナが対戦。首位と2位、勝点3差で迎えた試合に注目が集まった。
■ラ・マシアの力
重要な一戦を前に、関心を集めたのはラ・マシアの選手たちがどれだけできるか、だった。
ラ・マシアは、言わずと知れたバルセロナの育成寮である。バルセロナのカンテラーノを、総じて、そう呼ぶ。つまり、この度のクラシコは近年のバルセロナの育成の試金石になる試合だったのだ。
バルセロナは、今夏、監督交代を行なっている。シャビ・エルナンデス前監督に代わり、ハンジ・フリック新監督が就任した。
シャビ前監督が、ラ・マシアやカンテラを信頼していなかったわけではない。彼自身、そこで育ち、トップチームに引き上げられ、盤石なキャリアを築いた。事実、パウ・クバルシ、アレッハンドロ・バルデ、ラミン・ヤマルらはシャビ前監督の下で出場機会を積み、レギュラーポジションを確保した。
だが「バルサの選手がポジショナルプレーを理解していないのは不可解だ」とコメントしていたように、シャビはバルセロナでプレーしてきた選手を信用しきれなかったところがある。最終的には、補強に関してクラブと行き違いが生じて、実質的に解任されるという憂き目に遭った。
■ハンジ・フリックの信頼
一方、ハンジ・フリック監督は違った。容易に補強ができない、という点では前任者と同じ。しかし、そこからのアプローチが異なった。「私はラ・マシアの仕事に感銘を受けている。カンテラには、物凄くクオリティがある。彼らをメンバーに加えられるのは素晴らしいニュースだ。招集するのに躊躇いはない」とはハンジ・フリック監督の弁だ。
あえて分かりやすく、ポジションを指摘してみよう。それはボランチのポジションだ。
バルセロナは伝統的に【4−3−3】の布陣で戦う。なので、基本的にはワンボランチ(アンカー)のシステムだ。このポジションは、長く、セルヒオ・ブスケッツが務めてきた。だがブスケッツが退団した2023年夏以降、ボランチの選手が定まらずに苦労することになった。
今季、このポジションを任されたのは、マルク・カサードとマルク・ベルナルだった。2人のカンテラーノに白羽の矢が立った。ベルナルに関しては、不運にも、シーズン序盤戦でひざを負傷し長期離脱を強いられることになった。だがカサードは、指揮官に与えられたチャンスを存分に生かしている。
カサードは昨季、シャビ前監督の信頼を勝ち取れなかった。トップチームで練習に参加していたものの、4試合出場、35分のプレータイムを得るに留まった。他方で、バルセロナBではラファ・マルケス当時監督から全幅の信頼を寄せられ、31試合に出場(出場時間2683分)した。
カンテラを信頼しながら、ハンジ・フリック監督は戦術的な修正を加えるのを忘れなかった。そもそも、ブスケッツ不在のバルセロナで、アンカーシステムを継続するのは困難だった。そこで【4−2−3−1】に布陣変更し、ダブルボランチで中盤に厚みを持たせた。
フリック監督の下、覚醒したのはカサードだけではない。ラフィーニャが、かつてないほどのハイパフォーマンスを見せている。
ハンジ・フリック監督はラフィーニャを2列目の左あるいはトップ下で起用している。
求めるタスクはプレスのスイッチャー役、そしてシャドーストライカー化してのゴール前への飛び出しだ。
ラフィーニャは今季、公式戦14試合で10得点7アシストを記録している。2023−24シーズン(10得点13アシスト)、2022−23シーズン(10得点12アシスト)と過去2シーズンの数字を上回るのは時間の問題だろう。
今季最初の山場となったチャンピオンズリーグ・グループステージ第3節バイエルン・ミュンヘン戦では、イニャキ・ペーニャ、バルデ、クバルシ、ヤマル、カサード、フェルミン・ロペスと6人のカンテラーノがスタメンでピッチに立った。
カンテラと補強。若手とベテラン。その融合が、フリック・バルサの理想の形だ。