早生まれは大人になっても不利!?(東大院教授の研究):では、どのように支援するか
■早生まれは大変
早生まれ(1月~3月生まれ)は大変だと、昔から言われていました。4月まれと3月生まれは、同時に小学1年生になりますが、実際は1年近く離れているのですから、体の成長も脳の成長も違います。
ただ、成長度合いがちがうのは小さな子供のうちだけで、大きくなれば、体の大きさも変わらないし、早生まれなんて関係ないですよね、と思っていたのですが・・・
■早生まれの不利は「大人まで続く」
東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授の研究によれば、
・3月生まれと4月生まれで入学した高校の偏差値が4.5違う。
・大学の進学率も早生まれのほうが低い(アメリカやカナダでも同じ傾向)。
・早生まれの人は30~34歳の所得が4%低くなる。
と、早生まれの不利は大人になっても続きます。
<東大院教授「早生まれの不利は大人まで続く」研究結果発表:livedoorニュース2020年8月18日>
■早生まれは、みんなだめ?
このような研究の報道をみると、早生まれはみんなだめなのかと誤解する人がいます。そんなことはありません。このような研究は、「平均値」を見ていることが多いからです。
3月生まれと4月生まれの偏差値の平均を比べてみると、4月生まれの方が高かったという話です。3月生まれはみんな4月生まれより低かったわけではありません。
個人差は大きいのです。
しかしそれでも、早生まれ不利になりやすいのはどうしてでしょう。
■早生まれが大人になっても不利な理由
成長度合いが違うのですから、早生まれが子供のころに不利なのはわかります。しかしなぜ、大きくなっても不利が続くのでしょうか。
この研究を発表した山口先生は、早生まれの人は、自分の感情をコントロールするなど、勉強以外の「非認知能力」が育ちにくくなっていると述べています。
これは別の研究ですが、人生を左右するのは、知能でも運動能力や外見や財力でもなく、やり抜く力や、自己制御力など、いわゆる非認知能力だと言われています(ちょっと話題の「やり抜く力」GRIT グリット:成功への最強の武器:Yahoo!ニュース個人有料)。
勉強はもちろ大切ですが、勉強に熱心なあまり、このような非認知能力を高める機会が減ってしまうとしたら、逆効果でしょう。
■早生まれ、成長の遅い子への配慮と対策
早生まれの子は、生まれたのが遅かったのですから、小学校に入るときに他の子よりも成長していないのは、当然です。
けれども、そのあとになっても、様々な非認知的能力が低くなるのは、おかしな話です。そんな違いがなぜ出るのか。それは、早生まれだからではなく、その後の経験の差でしょう。
これは、早生まれだけの問題ではありありません。早産で生まれてきた子も、そうでなくても何かの理由で他の子よりも成長が遅い子も同じです。
成長が遅い状態で小学校に入学したために、子供の中での力関係が弱くなったり、様々な経験不足が起きたりするのでしょう。
前述の報道によれば、山口先生は「教職員の皆さんは早生まれの子供は不利であることを認識し、子供たちの力関係に任せず、早生まれの子供にリーダーシップを取らせたりしてみてはどうでしょう。」と勧めています。
一度自信を失ってしまうと、何事も消極的になりがちです。経験が不足します。そうするとさらに自信がなくなり、自己肯定感やチャレンジ精神が低くなる悪循環にはまってしまうのです。
小さな子供などは、弱肉強食の世界です。体が小さいだけで、大きなハンディキャップです。走るのが早い子はヒーローで、その一方、走るのが遅いだけで屈辱を味わう子もいます。
本当は、大人になれば、足が遅いことなど何の問題にもならないのに。
子供にとっても、問題は走るスピードではありません。走るのが苦手でも、人より体力がないとしても、それでも最後まで頑張って走りぬく力(非認知能力、やり抜く力)を身につけることができれば、将来はバラ色です。
私自身、早生まれでも早産で生まれたわけでもありませんが、クラスで一番小柄な子供でした。しかし、私は親にも先生にも、環境に恵まれました(クラスで一番小さかった私が幸せに育った理由:早生まれでも早産でも大丈夫:Yahoo!ニュース個人有料)。
幸いにして自己肯定感が下がることなく、元気に育つことができました。小さいことで、かえって有利なこともあるものです。
成長が早い大きな子も、成長が遅い小さな子も、どちらもみんなが輝ける学校にしていきたいと思います。そのために、早生まれの子など一歩出遅れている子たちに、温かな支援をしていきたいと思います。