首都での車規制は観光客減につながるか?ノルウェー・オスロ市長から一言
2015年に統一地方選挙で勝利し、左派陣営が指揮するオスロ市議会。2019年の次の選挙までに、首都中心部をカーフリー化すると宣言し、世界各地のメディアで話題となった。
一方、自転車道を増やす政策は、自転車乗りには歓迎されたが、車の運転手からは不評を買っている。反対する勢いも強かったことから、行政部はその後の都市開発計画や気候目標を緩和した。
「カーフリー」と未だに名乗っているが、事実上は車を締め出すことはせず、「一般車が以前よりも少ない街」計画と言ったほうが事実に近い。
市議会の政治家が仕事をするオスロ市庁舎は、毎年のノーベル平和賞授与式の会場でもあり、街のシンボルとなっている。
市庁舎は、首都政治の象徴でもあるため、「政治家の手腕を目に見えてわかりやすく披露するための舞台」としても利用されやすい。
市庁舎前の駐車場は続々と撤去され、代わりに市民や観光客が座って休憩できるようなイスやテーブル、花壇が設置された。
驚くことに、市庁舎前にあった電気自動車(EV)の充電スタンドも一部撤去された(車は空間のスペースを独占しすぎるため)。
実際効果があるかは別として、このような政治家の手腕をみせようとする取り組みは、現地では良くも悪くも「シンボル政治」と呼ばれる。
「花壇だけ増やされても」と笑う反対派もいる。夏の光景は良いかもしれないが、寒い冬には花は枯れ、外で椅子に座る人は多くはないだろう。
市庁舎前ではタクシーや観光バスの数は増えたように見えるが、排ガスを出す乗り物の数が大きく減少したわけではない。そもそもの目的である「冬の大気汚染問題の改善」には至っていないのが現状だ。
オスロの左派政治家たちの動きに対し、右派与党のヘッレラン文化大臣(保守党)は、誰もが自転車に乗るわけではなく、車の運転手を追いやる「ベルリンの壁」だと当初から批判(VG)している。
また、反対する保守派は、「観光バスで移動する観光客が移動するのでは」と以前から心配していた。
筆者がオスロ観光局に2年前に問い合わせた時は、「観光客にどう影響するかわからない」というのが答えだった。市議会側からは、「観光業界が、観光バスを排ガスが出ない乗り物に買い替えればよい」という反応もあった(そのような金銭的余裕はあるのだろうか)。
市議会を率いるマリアンネ・ボルゲン市長は、筆者にこう話した。
「観光客が困らないような解決策を、私たちは模索します。もしかすると、観光客は今よりも歩く必要が出てくるかもしれませんが、きっと大丈夫。私たちは観光客を歓迎します。車がなくなり、歩くことができるスペースや緑が増えたら、きっといい街になります」。
Photo&Text: Asaki Abumi