ディーゼル車2万台が首都から消えた!オスロの車禁止令、批判を浴びた1日の結果は?
ノルウェー首都で大気汚染が悪化する日が続き、オスロ市は17日、ディーゼル車を一時禁止する緊急条例を初適用した。
「明日はディーゼル車を家に置いて、自転車をこぎます」。ノルウェーを代表する美術館、ヘニー・オンスタッド・アートセンターのディレクターであるトーネ・ハンセンさんは、市の案に賛同する意志をツイッターで表示した。
「私たち美術館の心得は、リーダーは発言と行動が一緒であること。禁止条例が発表された日、私はディーゼル車以外で通勤すると宣言しました。だから、今日は往復の通勤は自転車で。片道11キロですが、しっかり整備された自転車道もありますしね」と取材で語る。
規制対象だったディーゼル車の交通量は31%減少、全体の交通量は10%減少。約2万人の運転手が、市の方針に従い、ほかの交通手段で1日を過ごした。
残りの69%は、特例対象だったなど。市への抗議として、わざと運転したという人もいる。
なぜ、予想よりも早く規制解除?
当初は6~22時まで、翌日も続くかと予想されていたが、17日18時に市は規制の解除を発表した。
予想よりも早く規制が解除された理由は、当日の大気汚染状態が、想定されていたほど、朝から悪化していなかったため。
結果、保守的な現地メディア、車の運転者、反対派からは、「禁止などする必要がなかった」と、市議会に批判が集中している。
「環境対策として、そもそも効果があったのか?」ということが、今回は注目されていた。
ノルウェー大気汚染研究室などは、「効果はあった」と主張。しかし、前日夜から降っていた雪の影響も否定できず、「禁止条例のみで」どれほどの効果があったかどうかは定かではない。
まさか、雪が降るとは!
オスロでは、前日夜から、想定されていなかった雪が降った。翌日も、中心部に雪が多少残っていた。また、道路が凍結し、この日の天気は、通常の冬の1日とは異なっていた。結果、停滞していた汚染物質が減少。大気汚染の原因「逆転層」の状態が改善された。
ディーゼル車禁止の決定をする上で、「天気予報」は重要な鍵となるが、そのリスクの高さが露呈することに。
関係各所と市議会は、今回のデータを揃えて、政策の効果を判断することとなる。しかし、本来信頼できるデータは、雪が降っていない日のもの。研究所などは、結論づけるためには、今後ほかの日のデータも必要としている。一方、運転手などからは、「我々は実験体ではない」と不満の声があがる。
市議会行政部のリーダーであるヨハンセン氏(労働党)は、協力してくれた市民に感謝し、「人々の日常生活をいつもより多少不便にしたでしょう。しかし、皆さんのおかげで、健康被害に苦しむ人々の生活を改善することができました」と、現地報道を通してコメント。
同氏の左派政党「労働党」への抵抗は強い。かつて国民にディーゼル車の購入をうながした政党でありながら、今になって「やはり環境に悪かった」とディーゼル車を規制しているからだ。
労働党と、連立する「緑の環境党」には、市民から苦情が殺到中。一方、どこの国でも反発が強い「不人気の環境政策」を推し進めたことに、「政治家として勇気ある決断」、「口だけではなく、やっと動いてくれた」と評価する声もある。
オスロ市議会行政部(左派陣営)と対立する、右翼ポピュリスト政党の進歩党、国の交通の最高責任者であるオルセン運輸・通信大臣は、今回の禁止案に否定的だった。「朝から大気汚染状態は改善されていたのだから、必要不可欠だった」と国営放送局にコメント。保守党のソールバルグ首相は、オスロでの騒動に対して、この日は目立つ発言をしなかった。
Text: Asaki Abumi