【奇跡】ボイジャー1号が最大の苦境を乗り越え正常な通信を再開!
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/title-1718727427823.jpeg?exp=10800)
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ボイジャー1号奇跡の大復活劇」というテーマで動画をお送りします。
2023年11月から、ボイジャー1号と正常な通信ができない状態が続いていました。
世間では諦めムードも漂う中、運用チームの懸命な取り組みの結果、4/20には実に5カ月ぶりに正常な通信が再開されました。
そんなボイジャー1号の奇跡の大復活劇を振り返ります。
●太陽圏を超えたボイジャー
今から45年以上前の1977年に、太陽系の地球より外側にある惑星や、太陽系の外側の領域の探査を目的とした探査機ボイジャー1号と2号が打ち上げられました。
※1天文単位=地球と太陽の距離≒1.5億km
現在、ボイジャー1号は太陽や地球から160天文単位以上、2号は130天文単位以上離れた位置にあります。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718726884290.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
ここまで太陽から離れると、私たちの住む地球近傍の環境とは全く異なる環境になっていると考えられています。
太陽系の主である太陽は、太陽風と呼ばれる超高温のガスを超高速で常に放ち続けています。
太陽風は非常に高温であるために熱運動によって原子核と電子が電離してしまい、ガスがプラズマの状態になっています。
この太陽風は平均450km/s、温度100万度という状態で地球近傍を通過し、地球の磁気圏と衝突することで極地で見れる美しいオーロラの原因ともなっています。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718726943301.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
ですがそんな太陽風でも太陽から離れるにつれて減速し、最終的に太陽から約100au離れた所まで届くと、太陽と別の恒星間にある星間物質と混ざりあうと考えられています。
最終的に太陽風のプラズマと星間物質が混ざり合う境界面をヘリオポーズと呼び、このヘリオポーズの内側の太陽風が届く領域を「太陽圏(ヘリオスフィア)」と呼んでいます。
ボイジャー探査機はあまりに遠くまで離れて行ったため、1号は2012年8月に、2号は2018年11月にそれぞれ太陽圏を脱出し、星間空間に到達したと考えられています。
ボイジャーは打ち上げから45年以上経った現在でも2機とも運用が継続されており、太陽圏を超えた星間空間を直接探査できる唯一無二の探査機として、貴重なデータをもたらし続けてくれています。
●ボイジャー1号最大の苦境
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718727003360.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
2023年11月からボイジャー1号は、地球から送信されたコマンドを受信して実行することはできるものの、地球へと正しい信号を送ることができなくなっていました。
従来、ボイジャー1号からは科学観測のデータに加え、探査機の健康状態に関するデータも含まれた信号が送られてきます。
しかし最近はただ繰り返しで意味のない信号が送られてくるようになってしまっていました。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718727046201.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
ボイジャーの運営チームは、この問題の原因が「Flight Data System, FDS」と呼ばれるコンピュータの異常にあると特定しました。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718727094953.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
しかし具体的にFDSのどの部分に異常があるのかを突き止め、探査機を復旧させることは極めて困難でした。
まず一つ目の原因として、探査機に及ぼす意図せぬ影響を配慮する必要があることが挙げられます。
ボイジャー1号は現在は使われていない古い技術の結晶であるため、現在の運営チームが解決策を導くのに参照しているのは、数十年前に作成されたボイジャーの取扱説明書です。
当然、当時の説明書の内容には、現在ボイジャーが陥っている問題は想定されていません。
しかし当時の説明書を参照して新たなコマンドを実行することで、ボイジャー1号に意図せぬ結果を及ぼすリスクもあります。
そういったリスクを回避するためにも、チームは慎重に方針を決める必要がありました。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718727179015.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
そして二つ目の原因として、そもそもボイジャー1号との距離が非常に遠いことが挙げられます。
現在ボイジャー1号は地球から160天文単位(240億km)以上彼方にあります。
片道だけで、光速で22時間以上かかる距離です。
つまりチームがボイジャー1号にコマンドを送信し、その結果が返ってくるまでに2日近くかかります。
このようなやりとりが複数回必要なら、それだけ長期間を要してしまいます。
●奇跡の大復活劇
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718727238929.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
問題発生から数か月間はボイジャー1号の状態を正確に把握することすらできずにいました。
世間では諦めの声も増えていた印象がありますが、運営チームは諦めずに解決策を考え続けました。
そんな中2024年の3月、チームが探査機に「poke」というコマンドを送信しました。
するとそれまで返送されていた意味のない信号とはまた異なる信号が返送されました。
返送された信号をNASAのエンジニアが解読すると、そこにはそれまで不明だった探査機の状態が記述されており、FDSメモリの一部を保存するための1つのチップが機能停止していることが判明しました。
このメモリに含まれるコードが失われたことで、探査機は正確な内容の信号を送信できずにいたのです。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718727273316.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
このような事態に陥った根本の原因は、高エネルギーの宇宙線がチップに衝突したか、単に長年の運用の中で劣化した可能性があります。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718727336906.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
問題を解決するため、チームはチップの故障で失われたコードを、遠隔操作でFDSメモリの別の場所に配置することにしました。
メモリ内のどの場所も、このコードを完全に格納できるほどの十分なスペースはありません。
そのためチームはコードを分割し、いくつかの場所に格納することに決定しました。
そして複雑に再編成されたコードが正しい順で読み込まれるように、コードの一部をさらに書き直しました。
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/uchuyabaichkyabechi/article/01808286/image-1718727377377.png?fill=1&fc=fff&fmt=jpeg&q=85&exp=10800)
このような努力の結果、問題が発生してから5か月後の4/20、遂にボイジャー1号から正しい状態が記述された正常な信号が返送されたことが確認されました。
探査機の科学データも正しく返送できるようにするには、FDSの破損部分をさらに修復する必要がありますが、大勢が諦めるような苦境からの大復活劇がまさに実現したと言えます。
まだまだボイジャー1号は人類未踏の場所で、未知の世界の情報を私たちに伝えてくれそうです。
https://www.jpl.nasa.gov/news/nasas-voyager-1-resumes-sending-engineering-updates-to-earth
https://www.livescience.com/space/space-exploration/after-months-of-sending-gibberish-to-nasa-voyager-1-is-finally-making-sense-again
https://www.space.com/voyager-1-communications-update-april-2024
https://blogs.nasa.gov/sunspot/2023/12/12/engineers-working-to-resolve-issue-with-voyager-1-computer/
https://www.universetoday.com/164791/voyager-1-has-another-problem-with-its-computer-system/
https://gadget.phileweb.com/post-12242/
https://www.jpl.nasa.gov/news/nasa-mission-update-voyager-2-communications-pause
サムネイルCredit: Caltech/NASA-JPL