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冥王星の定説が覆る新発見!あのハート地形は予想外の方法で形成されたかもしれない

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「冥王星のハート地形に関する新事実」というテーマで動画をお送りします。

スイスのベルン大学とアメリカのアリゾナ大学などの研究チームは2024年4月、冥王星のハート地形の詳細な分析を行い、その地下の構造に関する定説を覆す新説を発表しました。

●冥王星のハート地形

NASAは2006年、人類初の太陽系外縁天体の探査を行う無人探査機「ニューホライズンズ」を打ち上げました。

打ち上げ時の対地速度は16km/sと非常に速く、そのスピードのままわずか9時間で月軌道を通過し、13ヵ月後に木星に到達しました。

これらはそれぞれ史上最短での到達記録となります。

そんな異次元の速度を誇るニューホライズンズですが、木星でスイングバイをして、さらに約4km/sも速度を上昇させ、冥王星へと向かいました。

Credit:NASA/JHUAPL/SwRI
Credit:NASA/JHUAPL/SwRI

2015年7月14日、ニューホライズンズは冥王星をフライバイし、冥王星の地形や組成、大気、衛星などに関する新たな大発見を私たちにいくつももたらしました。

これは冥王星外観の画像ですが、これまでとは比にならないほど詳細な姿が浮かび上がりました。

驚くべきことに冥王星の表面には、ハート型の模様があったのです。

ニューホライズンズが明らかにしたこのハート地形は、「トンボー地域」と呼ばれています。

そしてトンボー地域の西側の部分、ハートの左半分には、スプートニク平原と呼ばれる氷原が広がっています。

1200km×2000kmという広大な面積を誇っており、他の部分より3~4kmほど標高が低いのも特徴的です。

顕著な窪地であることから、過去に起きた天体衝突の結果形成されたものであると考えられています。

また、冥王星表面の大部分はメタンの氷で構成されますが、平原の大部分は窒素の氷で満たされています。

ハート地形の東側の半分はスプートニク平原と似ているものの、さらに薄い窒素の氷の層で覆われています。

この部分の起源はまだ不明ですが、おそらくスプートニク平原を形成した物理現象に関連して形成されたものだと考えられています。

●ハート地形の新事実

スイスのベルン大学とアメリカのアリゾナ大学などの研究チームは2024年4月、冥王星のハート地形の詳細な分析を行い、その地下の構造に関する定説を覆す新説を発表しました。

研究チームはスプートニク平原を形成した太古の天体衝突についてコンピューターシミュレーションを行い、衝突した天体の大きさや組成、速度や衝突角度などを分析しました。

太陽系の内側の領域は天体の公転速度が速く、一般的に天体衝突のエネルギーが高い傾向にあります。

この場合、天体衝突をシミュレートするにあたって衝突体のエネルギー、運動量、密度といったものを除けば、細部を無視できるそうです。

しかし冥王星が存在するような太陽系深淵部では、天体の公転速度が非常に遅く、天体同士の衝突エネルギーが比較的低い傾向にあります。

この場合はより正確な計算が必要になります。

実際に観測されたスプートニク平原の形状を最もよく再現できたのは、15%が岩石で構成された直径700kmもの巨大天体が、30度という斜めの角度から、比較的低い速度で冥王星に衝突するというものでした。

○地下構造の定説を覆す

最新の研究から、冥王星のスプートニク平原の地下の構造にまつわる定説が覆る可能性があります。

そもそも今回シミュレートされたような巨大衝突は、冥王星の歴史のごく初期に起こった可能性が高く、スプートニク平原も遥か昔から存在するはずです。

一般的に自転する天体は、自転軸上の極地に軽い部分があり、赤道上に重い部分がある方が安定します。

窪地は表面の一部がえぐれている分軽いため、冥王星のように巨大な窪地を持つ天体の場合は、安定して自転するために、非常に長い年月が経つと窪地が自転軸上の極地へと移動するはずです。

それにもかかわらず、スプートニク平原は赤道付近にとどまっています。

これはなぜでしょうか?

従来の定説では、スプートニク平原の地下に液体の水の海があると考えられていました。

スプートニク平原の地下に海があると、冥王星の氷の地殻が薄くなり、海が上方に膨らむことになります。

液体の水は氷よりも密度が高く、重い領域となるため、平原全体が赤道に向かって移動することになるのです。

一方、最新の研究では、スプートニク平原の地下に必ずしも海が存在する必要はない可能性を示しています。

シミュレーションによると、巨大天体との衝突によって冥王星地下のマントルは完全に掘り起こされてしまった可能性があるとのことです。

現在のスプートニク平原の地下には、冥王星の氷マントルよりも高密度な衝突天体の氷マントルと、さらに高密度な衝突天体の岩石の核が眠っている可能性が示されました。

この場合、最も重い岩石の核が赤道上に存在するため、スプートニク平原は現在の位置で固定されていることが上手く説明できます。

研究チームは、冥王星の地質学的な歴史をモデル化し、そのモデルが他のカイパーベルト天体にも当てはまる可能性があることを示すため、今後も研究を続けるとしています。

https://www.nature.com/articles/s41550-024-02248-1#Sec2
https://news.arizona.edu/news/how-pluto-got-its-heart
https://www.sciencedaily.com/releases/2024/04/240415163720.htm
https://www.livescience.com/space/pluto/plutos-huge-white-heart-has-a-surprisingly-violent-origin-new-study-suggests
https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/like_hokudai/article/24890
サムネイルCredit: NASA/JHUAPL/SwRI

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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