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1万年に1度!最新研究で、史上最強のγ線バーストの驚くべき新事実が判明

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「史上最強のγ線バーストとその新事実」というテーマで動画をお送りします。

2022年10月9日、観測史上最大のガンマ線バーストが発生したと大きな話題になりました。

発生当初にこの宇宙ヤバイchでも紹介しましたが、その後も研究が進み、2024年4月にはより詳細な研究で得られた驚くべき新事実も発表されていました。

本動画ではまず本題をよりよく理解できるよう、基本的なガンマ線バーストの性質を解説し、その後2022年に発生したガンマ線バーストの基本情報と、2024年発表の最新情報について解説していきます。

●ガンマ線バーストの基本情報

本題に入る前に、まずはガンマ線バーストについて基本的な情報を解説していきたいと思います。

○ガンマ線とは何か

ガンマ線バーストとは、ガンマ線が短期間で爆発的に放出される現象のことです。

では「ガンマ線」とは一体何なのでしょうか?

私たちが目にする光は、「電磁波」と呼ばれるものの一種です。

電磁波は波なので波長があり、この波長が長いと電波、赤外線などと呼ばれ、逆に短いと紫外線、X線、ガンマ線などと呼ばれます。

このような電磁波にもエネルギーがあり、波長が短いほど高エネルギーになります。

そのためX線やガンマ線は高エネルギーで有害な放射線の一種となります。

中でもガンマ線は最も高エネルギーな電磁波です。

そんなただでさえ強力なガンマ線が膨大な量放出されるガンマ線バーストは、とてつもなく高エネルギーな現象です。

大質量の星が死んだ際に起こる「超新星爆発」と並び、宇宙最強クラスの高エネルギー現象とされています。

○即時放射と残光

ガンマ線バーストは、最初の短い期間だけ膨大なエネルギーのガンマ線が放射される「即時放射」と、その後X線や可視光、電波など様々な波長の電磁波が長期間、次第に弱まりながら放射される「残光」に、段階的に分けられます。

ガンマ線バーストは、ブラックホールが形成された際に発生する現象であると考えられています。

ブラックホール形成時、ブラックホールの両極から水素などのガスが光速に極めて近い速度でジェットとして放射されます。

一般的には、ジェット内のガス同士が衝突することで即時放射が起こり、その後ジェットが周囲の物質と衝突することで、残光が放射されると考えられています。

ガンマ線バーストは一般的に、数ミリ秒~数十秒ほど継続する即時放射によって、太陽が100億年の生涯を通して放出する総エネルギーと同等かそれ以上のエネルギーを放出してしまう、宇宙最強の爆発現象とされています。

○ガンマ線バーストの分類と発生条件

ガンマ線バーストの中でも、即時放射の継続期間が2秒以上のものは「ロングガンマ線バースト」、それ未満のものは「ショートガンマ線バースト」と分類されており、その分類ごとに発生メカニズムが異なると考えられています。

ロングガンマ線バーストは、超大質量の恒星が一生を終える際、星の核が自身の重力で崩壊してブラックホールが形成される際に放出されるとされます。

その際、超新星爆発も発生します。

一方ショートガンマ線バーストは、中性子星やブラックホールなどの超高密度なコンパクト天体同士が衝突する際に発生すると考えられています。

どちらも非常にダイナミックな現象絡みです。

●観測史上最強のGRBが発生!?

2022年10月9日、前例がないほど大規模なガンマ線バーストが発生したと大きな話題になりました。

こちらは可視光で捉えた今回のバーストの実写映像で、約10時間すると非常に暗くなっている様子が見て取れます。

GRB221009A」と呼ばれる今回のガンマ線バーストは、様々な点で一般的なガンマ線バーストと異なっています。

まず、今回のガンマ線バーストは発生した場所が地球から銀河中心部に近い方向に約19億光年彼方で発生しており、これは一般的なガンマ線バーストと比べて極めて近い距離になります。

距離が近い分、多くの情報が得られます。

そして今回のガンマ線バーストは、距離に関係なく極めて高いエネルギーを放っていることも判明しています。

飛来した電磁波が持つエネルギーは、「eV(電子ボルト)」という単位で表現されます。

可視光の持つエネルギーが数eV程度、一般的なガンマ線バーストの即時放射で放たれるガンマ線のエネルギーは1000~100万eVとされています。

それに対して今回のガンマ線バーストで放たれたガンマ線が持つエネルギーは、最大でなんと18兆eVに達していたそうです。

10兆eVを超えるエネルギーを持つガンマ線バーストが観測されたのは、史上初めてとのことです。

今表示されているのは、1億eV以上のエネルギーを持つガンマ線の強度推移を示しています。

明るいほど、より高エネルギーなガンマ線が到来していることを示しているので、今回のガンマ線の強度の異常性が伺えます。

ちなみに今回のガンマ線源は天の川銀河の円盤面に近い方向にあるため、天の川の輝きがこの映像でも帯のように見えています。

今回のガンマ線バーストの即時放射は余りに明るく、宇宙空間にあるガンマ線観測装置のほとんどが一時的に目が眩んだ状態になり、その本来の明るさは不明でした。

ですがフェルミガンマ線宇宙望遠鏡の観測結果から即時放射の情報を復元することができ、今回のガンマ線バーストはこれまでのどのバーストより実に70倍も明るいことが証明されました。

このような規模のガンマ線バーストが地球に襲来するのは、なんと1万年に1度という珍しさであることも判明しました。

つまり人類の文明が始まって以降で最強のガンマ線バーストを検出した可能性もあります。

そして今回のガンマ線バーストは即時放射の継続時間も類を見ない長さとなっています。

ロングガンマ線バーストに分類されるので、太陽より遥かに重い恒星が強烈な超新星爆発を起こし、ブラックホールを生成させた現象がバーストの由来であると考えられています。

強力なガンマ線が到来したことにより、なんと地球の長波ラジオの通信を乱す影響を及ぼしたそうです。

遥か19億光年彼方のガンマ線バーストで地球に悪影響が出る辺り、その危険性が改めて伺えますね。

今回のガンマ線バーストの残光では、あらゆる波長の電磁波が記録破りの強度で到来しているそうです。

この画像は今回のバーストの残光を捉えた画像です。

中心の発生源から同心円状に広がるリングは、私たちが住む天の川銀河内にある目に見えない塵の雲に、発生源から到来したX線が散乱し、それが地球に届くことで、このように見えています。

●超新星を特定し、新事実が判明

GRB 221009Aについては最近でも様々な研究が行われており、2024年4月にもnatureで論文が発表されています。

そこで記述されていた新発見についても解説していきます。

GRB 221009Aは大質量星が超新星爆発を起こし、ブラックホールに崩壊する過程で発生したガンマ線バーストであると考えられています。

よってGRB 221009Aの発生源からは、超新星爆発とその残骸が起源となる電磁波が観測されるはずです。

当初、ガンマ線バーストの残光があまりに明るすぎて、関連する超新星による発光を特定できませんでしたが、現在は超新星由来の電磁波の特定に成功しています。

GRB 221009Aは天の川の方向に存在しているため、研究チームはまず撮影データから天の川の明るさ成分を差し引いて、GRB 221009A由来の電磁波の波長ごとのエネルギー分布(スペクトル)を得ました。

そしてその中から超新星由来の電磁波のスペクトルを抽出し、その特徴を調べたところ、驚くべき新事実が浮かび上がりました。

○新事実1:普通過ぎる超新星

史上類を見ない規模のガンマ線バーストに関連する超新星は、ずば抜けて大規模な超新星であると予想されていました。

しかし実際、関連する超新星は何の変哲もない典型的な超新星の性質を持っており、特段大きな恒星が爆発したわけでもなさそうでした。

超新星の規模は一般的であるのに対し、それに付随するガンマ線バーストのジェットだけが超絶エネルギーだった理由として、まずジェットの幅が狭かったことが挙げられます。

単純に幅が狭いほどそれだけエネルギーが集中します。

実際、今回のガンマ線バーストは既知の中で最もジェットが狭いバーストのひとつであるそうです。

また、超新星とγ線バーストを発生させた大質量星が位置する銀河(ホスト銀河)の金属量が極端に低いことも、ガンマ線バーストのエネルギーだけが極端に高いことの原因となり得るそうです。

実際今回のガンマ線バーストのホスト銀河は、既知のガンマ線バーストのホスト銀河の中で最も金属量が少ないことが知られています。

○新事実2:重元素生成をしていなかった

金やプラチナなどの一部の重元素は、中性子星同士の衝突現象(キロノヴァ)などの、中性子が豊富に存在する特殊な条件下のみで生成されると考えられていました。

そして実際にキロノヴァが金やプラチナなどの重元素を生成していることは観測により明らかになりましたが、実際に存在するそれらの重元素量を説明するには、他の物理現象による重元素生成も必要でした。

キロノヴァ以外に重元素を生成できる現象の有力候補が、大質量星による超新星爆発でした。

最強に明るいGRB 221009Aと関連する超新星であれば、重元素生成が行われていてもおかしくないと期待されていました。

しかしそんな中、今回の研究によって、最強に明るいGRB 221009Aと関連する超新星由来の電磁波のスペクトルを調べても、金やプラチナなどの重元素が存在している証拠は得られませんでした。

ガンマ線バーストと重元素生成の関連性は謎が多いですが、少なくとも超高エネルギーのガンマ線バーストだからといって、必ずしもそれに関連して重元素が生成されているわけではないことがわかりました。

GRB 221009Aは非常に希少な現象で、ただでさえ魅力的ですが、今回新たに謎が深まったことで、より多くの研究の対象となることでしょう。

今後明らかになる新事実に要注目です。

https://www.nature.com/articles/s41550-024-02237-4
https://www.universetoday.com/166620/the-brightest-gamma-ray-burst-ever-seen-came-from-a-collapsing-star/
https://astro-dic.jp/r-process/
https://iopscience.iop.org/collections/apjl-230323-172_Focus-on-the-Ultra-luminous-GRB-221009A
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2023/nasa-missions-study-what-may-be-a-1-in-10000-year-gamma-ray-burst

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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