NewJeans『Ditto』『OMG』から「旅サラダ」の中丸雄一を思い出す理由【月刊レコード大賞】
2月のチャートアクションで目立ったのは、韓国の5人組ガールズグループ=NewJeans(ニュージーンズ)。2月22日付のビルボードチャートでは、10位に『Ditto』、18位に『OMG』を送り込んでいるのです。
ちなみに、チャートとしての信頼性の高いBillboard JAPAN Hot100ですが、その結果なのか、ランキングの「岩盤化」=つまり、過去の曲がずっと上位に居座っている状況が進行しています。例えば、同日付チャートで、11位にAdo『新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)』、13位にOfficial髭男dism『ミックスナッツ』など、昨年の曲が居残っているのです。
そんな中で「岩盤」を突き破って、20位以内に2曲を送り込んだNewJeansには、かなり期待が持てるのではないでしょうか(なお、この「岩盤化」については、松谷創一郎氏の優れた論考=「ヒットの固着」「なぜ日本の音楽ヒットは新陳代謝しないのか?」が示唆に富みます)。
さて、NewJeansとは、BTSなどが所属するHYBEが新しく立ち上げたレーベルADORから、昨年デビューしたグループとのこと。このあたり、さらに詳しいことは他のメディアを参照いただくとして、まずは『Ditto』と『OMG』を聴いていただきましょう。
NewJeans『Ditto』
NewJeans『OMG』
両曲、特に『Ditto』を一聴してしっくりと来たのは、音がシンプルなことです。3分台という短尺に、抑制的なビートの裏で、薄くコードが鳴っているだけという感じ。多くのダンス物のような、暑苦しく派手派手しい音圧を感じないこと。
そして両曲に共通するのは、特に邦楽のダンス物のように、サビに入って「ここぞ!」とばかりに盛り上がるのではなく、逆に脱力するところです。これは果たして「サビ」という日本的(J-POP的)感覚で解釈していいのかと思うくらい。
世代的に私が思い出したのはプリンスです。特に『Kiss』(86年)を初めて聴いたときの感覚。当時、ハードロックや「産業ロック」(死語か)の暑苦しい音で耳がヘトヘトになっていたときに流れてきた「何これ?」感に近いものがあるのです。
あと、動画についても、過剰にニコニコしたり、過剰に可愛さをアピールしたりしない薄味感も心地いいなと。
「なかまる印」のコーナーになぜ私は落ち着くのか
さて、話はガラッと変わって、私は土曜朝の朝日放送『朝だ!生です旅サラダ』(旅サラダ)をかかさず見ています。特にKAT-TUNの中丸雄一が地方に行って、名物料理を食べてワチャワチャする「発掘!ニッポンなかまる印」の大ファンなのです。
肩肘張らない「食レポ」が心地いい。滑舌がいいのに過剰さのない、淡々としたトークにも落ち着きます。もちろん、他の番組の食レポが「おいしい!!・うまい!!・最高~!!」と、過剰過ぎて、逆に全然おいしく見えないことの反動なのですが。
これは余談になりますが、バラエティ番組のけばけばしいセットを見るだけでげんなりする同世代(50代)以上の方々も多いのではないでしょうか(番組のセットって、なんであんなにサイケデリックなんだろう?)
過当競争の様相が強まってきているからか、過剰に押し付けがましくなってきているアイドル界・テレビ界の中で、過剰さのない、抑制的で脱力して淡々とした薄味感に惹かれるのです、私は。いや、私も。
「これでもか、これでもか、これでも足りないか?」ではなく「これくらいで、これくらいで、これくらいで十分だよね?」の時代へ。そう、そっちの方が、サステナブル。
というわけで、この「月刊レコード大賞」、2月度はNewJeansに「なかまる印」を差し上げたいと思います。
『Ditto』/作詞:Ylva Dimberg・Hyu-il Cho (The Black Skirts)・Oohyo・MINJI、作曲:250・Ylva Dimberg
『OMG』/作詞:Gigi・Ylva Dimberg・HANNI、作曲:Jinsu Park・Ylva Dimberg・David Dawood