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岡村靖幸+斉藤和義=岡村和義の『少年ジャンボリー』に同世代として盛り上がる理由【月刊レコード大賞】

スージー鈴木音楽評論家、ラジオDJ、小説家
岡村和義オフィシャルサイト

 東京スポーツ紙の連載「スージー鈴木のオジサンに贈るヒット曲講座」と連動して毎月お届けする本企画。

 今回は、岡村靖幸と斉藤和義の同世代ユニット「岡村和義」の『少年ジャンボリー』を取り上げます。

 5月16日(木)からスタートした彼ら初の全国ツアー“OKAZ TIME”に向けて、「どうしても聴いてもらいたい曲がある!」という彼らたっての要望を受け、配信が急遽始まったとのこと。

 いやぁ、爽快、いや「痛快」の一言。

 「OK! Rock’n Roll! Jamboree! Come On!」というラモーンズ風のシャウトから始まり、「♪マイナスなニュース」「♪情報操作」とか「♪そんなのどうでもいい頃がよかった」と、せちがらい令和の現代から、青春時代を振り返るようなノスタルジーも効いている。

 2人は1960年代中盤=「ミドル60's」生まれ。だから青春時代とは「ミドル80's」ぐらいでしょうか。

 そして歌っている間に「♪パパママどうして今夜は こんなに目が冴えてしまうんでしょう」と、いつのまにか若返っている。

 歌うだけでなく、作詞・作曲・編曲、さらにはいろんな楽器を操る、いわば「オールインワン型音楽家」として平成を駆け抜けた2人。孤独を感じたり、煮詰まったりする局面もあったことでしょう。

 そして今、還暦へのカウントダウンが始まった2人がめぐり会い、心より楽しんでワチャワチャしながら音楽創りをしていることが分かる1曲だと思いました。

 面白かったのが、彼らの出演した5月23日放送のNHK『SONGS』。2人が仲良さげに吉祥寺を探訪するのですが、その中で、驚くべき事実が明かされたのです。

 何でも、アマチュア時代の2人は、吉祥寺で、歩いて30秒と離れていない部屋に住んでいたらしい。

 番組の中、2人が当時住んでいたアパートの跡の前で、岡村靖幸が放った「似たような時期に似たように戦ってたね」という言葉には、グッとくるものがありました。

 というのは、少し自分語りをすれば、私も彼らと同世代(岡村靖幸は1歳上、斉藤和義は同い年)で、吉祥寺に近い阿佐ヶ谷に住んでいて、かつ一応ですが、音楽家を目指していたのですから。

 「似たような時期に似たように戦ってた」若者たちの中で、最上級の勝利者がタッグを組んだのです。その音楽が面白くないわけがないでしょう。

 さて、『少年ジャンボリー』に話を戻すと、ちょっと気になるフレーズがあります――「♪パパママ子供の頃には どんな音楽が好きだったの?」「♪パパママ子供の頃には どんなオシャレが好きだったの?」

 調子に乗って自分語りを続ければ、私はすでに両親を亡くしているのですが、それ以降、あんなことこんなことを聞いておけばよかった、話しておけばよかったと、何度も悔やんでいます。

 亡き母親に聞いておきたかったこと――「私が中学生の頃に聴いていたジーン・ヴィンセント『ビー・バップ・ア・ルーラ』に反応したけれど、あんなのどこで聴いてたの?」とかとか。

 両親がおそらく高齢、もしくは私のように、すでに亡くなっている可能性も高い同世代から聴こえてくる「♪パパママ子供の頃には どんな音楽が好きだったの?」から、いろんなことが思い出されて、ちょっとだけキュンとしたのですが――。

 とにかく、同世代最上級の勝利者がタッグを組んだ『少年ジャンボリー』は、まるで「ON砲」、いや世代的には「AK砲」(秋山幸二+清原和博)的なパワーで、私たち世代をぐいっと少年時代に立ち戻らせます。

 ――ミドル60's、なめんなよ。

  • 『少年ジャンボリー』/作詞・作曲:岡村和義
音楽評論家、ラジオDJ、小説家

音楽評論家。ラジオDJ、小説家。1966年大阪府東大阪市生まれ。BS12『ザ・カセットテープ・ミュージック』、bayfm『9の音粋』月曜日に出演中。主な著書に『幸福な退職』『桑田佳祐論』(新潮新書)、『EPICソニーとその時代』(集英社新書)、『平成Jポップと令和歌謡』『80年代音楽解体新書』(ともに彩流社)、『恋するラジオ』(ブックマン社)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト新書)など多数。東洋経済オンライン、東京スポーツなどで連載中。2023年12月12日に新刊『中森明菜の音楽1982-1991』(辰巳出版)発売。

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