4月1日から社会的所属を失ってしまった方へ
新しい年度を迎え、学年がひとつ上になった方。新しい教育課程に進まれた方。新しい職場で働き始める方、担当部署が変わる方がいらっしゃると思います。
本書でもエピソードを書きましたが、大学生でなかなか就職活動が決まらない女学生は、就職が決まらない不安よりも、社会的所属がなくなることが不安と言いました。これまで「○○高校○年○組みの工藤です」や「××大学××学部の工藤です」というように自分が所属している社会的な場やコミュニティーを含めて、自分の存在を伝えてきた世界が突如なくなってしまうことは、想像しただけでも恐ろしいものです。
新しい年度となり、おそらく、少なくない方がこの女学生と同じように社会的所属を消失した状態を迎えられたと思います。定年退職もそれにあたるかもしれません。
1. 少しでもいいので収入の確保をする
引き続き、就職活動を継続される方も多くいらっしゃると思いますが、金銭的な 収入が途切れると、とても不安になります。奨学金返済を抱える学生を支援して 来ましたが、目減りする預貯金を前に、就職活動の範囲が制限されていました。
ここはいいかも、と思った企業がちょっと遠かったりすると、内定の有無の手前で 交通費の有無が立ちはだかります。少しでもいいので収入があることで、就活のための 資本を確保することができます。これは予想以上に、安心材料になるはずです。
2. 昨年度までお世話になった方にご連絡する
家族以外の方と話をしない無業の方が、日本社会には160万人以上いることが ニュースになりましたが、社会的な所属がないと出会いの接点は減りがちです。 さらに、なんとなくこれまでお世話になった方や友人とも疎遠になるパターンは 学生のみならず、無業の若者を支援していても起こり得ます。一方、仕事に限らず まだまだ日本でも「ご縁」は機能しています。
ハローワークや就職応援サイトで仕事を探すのも重要ですが、少しばかりつらくとも 昨年度までお世話になった方や友人に、勇気をもって現状を伝えましょう。その際 例えば、「引き続き就活します!」や「勉強を続けます」といったように意気込みを 添えておくと、ひょんなご縁が生まれることもあります。
本当はいますぐにでもお手紙やメールを出してほしいところですが、どうしても 踏み出せないのであれば、暑中見舞いなど連絡を突然してもいいような慣習を利用 するのも手です。
3. 支援機関を探してアクセスする
ハローワークのみならず、若者の就職を応援する政府の取り組みや、私たちのような 若者支援NPOも多数存在します。また、職業訓練校などでは、一定の条件を満たすと 収入を得ながら資格と取ったり、就職活動を続けたりすることもあります。
地域若者サポートステーションでも、今年度は類似の施策が別途行われるようです。 広い意味での支援機関を探し、意味があるなしを先に決めずにアクセスしてみる ことをおすすめします。
もう一度、自分の状況や悩みを整理することもできるでしょうし、同じように 改めて前に進んでいこうとする仲間に出会えることもあります。いきなりで不安 であればお電話するなどして相手の声を確かめたり、一般向けイベントで どんなひとがいるのかを確認することもできます。
社会的な所属を失ったとき、個人の想いとしてつらいこともたくさんあると思います。だから誰でも構わずつながろうとか、無理して所属を創ろうとする必要はありません。ただ、何らかの形で上に述べたようなことをすると、自分だけでは取れない情報やご縁につながることがあります。
また「3」に書きましたが、自分と同じく一歩前進を試みる仲間と出会えることもあります。同じ学校、同じ職場、同じ仲間、同じコミュニティ、つまりこれまでのように同じ社会に所属していたから仲間や知り合いになれたというプロセスとは違ったひとたちに出会うことも、今後の人生を豊かにする一助になります。
もちろん、嫌だったり、合わなければ無理に付き合う必要はありません。
もうひとつ強調したいのは、社会的所属の有無とは別に、誰もがこの社会の一員なので「社会人」です。働いていること、就職していることが社会人の要件でも定義でもありません。
むしろ、社会にいる多様なひとたちと勇気をもって出会っていく。ときにつらいこともあると思いますが、それも社会の一員として大切な行動だと思います。
※こちらは2013年4月2日に自身のブログで書いたものを再掲載させていただきました。