子供の未来応援 先行する民間 課題は自治体
86団体に助成
10月25日、政府が「子供の未来応援基金」の初年度の助成先を発表した。
86団体に対して、3億1500万円の助成。
助成団体の一覧は以下の通り。
実績のある団体が並ぶ。
これに対し、報道では次のような指摘の上で「寄付金集めが課題」とされた。
課題は何か
たしかに寄付集めも課題なのだが、
今の今、誰に何ができるか、どこが足りないか、という意味では、
「寄付金集め」以上に重要な課題がある。
どこに「課題」があるのか、見ておきたい。
民間の活動は活発
言うまでもなく、問題は、子供の未来を応援する取組がどれだけ充実するか、という点にある。
子供の貧困対策として、535もの団体から申請があったというのは、非営利の民間ベースの取組がそれだけ「盛り上がっている」証拠だろう。
背景に子供の貧困の深刻な実態があればこそだが、活発な活動が展開されていること自体は喜ばしい。
他方、今回、6分の5の団体は助成から漏れた。
公募助成というのはそういうものだと言ってしまえばそれまでだが、
この6分の5の団体の活動が充実すれば、
支援を要する子供たちに対する各種サービス(学習支援や食事支援、居場所の提供等)も充実していく。
できることなら、より拡充する方向でサポートできるのがよい。
自治体が支援するという方法
そして、子供の未来を応援する取組を充実させる方法は、基金だけではない。
地域で生きる子供たちに対するサポートは、地域の実情に応じた形で行われる必要があり、
その設計は、もっとも住民に近い立場でサービスを展開する自治体が担うことが望ましい。
シンプルに言って、どの「こども食堂」あるいは「無料塾」が、
地域住民や団体、行政とうまく連携しながら、
必要な子供たちに必要な支援を届けているかどうか、
それがわかるのは近くで見ている自治体だ。
NPO等民間を、より身近な自治体がサポートするという、より重要なルートがある。
それゆえ政府も、NPO等民間を直接支援する「子供の未来応援基金」とは別に、
「子供の未来応援地域ネットワーク形成支援事業(地域子供の未来応援交付金)」
という自治体向けの交付金をつくって、
自治体が官民挙げて地域の子供の未来を応援する枠組みづくりを国としてサポートしている。
いろんな施策の前提となる実態調査の実施については、4分の3の補助率がつき、
体制整備やモデル事業の実施ができるようになっている。
おさむい応募状況
ところが、この交付金の応募状況がかんばしくない。
今年8月1日の段階で、
都道府県9
市町村49
(うち政令指定都市7)
というお寒い状況だ。
空白県は21
県下に申請した自治体が一つもない空白県は、21県に及ぶ。
東北:青森、宮城、山形
関東:茨城、栃木、群馬、神奈川
中部:福井、山梨、長野、岐阜
近畿:和歌山
中国:島根、広島
四国:徳島、愛媛
九州:長崎、熊本、大分、鹿児島、沖縄
8月1日の申請状況なので、10月末の現在は増えているかもしれないし、
この交付金を申請していなくても、しっかりした対策を行っている自治体もある。
しかしそれにしても、少なすぎる。
交付金を活用して、より効果的な施策を
NPO等民間のがんばりも大切だが、
子供の個人情報や家計に関する情報は、自治体が握っている。
その自治体が、どこまで実態を把握し、その実態に基づいて、どんな事業を立てるか。
NPO等民間との官民連携で、より効果的な施策を行うためにも、
より多くの自治体がこの交付金を活用してほしい。
子供の未来を応援する首長連合にも
住民や議員の方たちにも、ご自分がお住まいの自治体がどう対応しているか、ぜひ関心を寄せていただきたい。
それぞれの地方議会で、この交付金に関する質問は出ているだろうか。
11月には、今年発足した「子供の未来を応援する首長連合」のシンポジウムも予定されている。
首長連合には、160を超える自治体が参加している。
せめてこれらの自治体には、率先して交付金を活用し、モデルとなる先駆的な事業を展開し、
全国の自治体を引っ張っていただきたいものだ。
期待を込めて。