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学校休校で、こども食堂にできること

湯浅誠社会活動家・東京大学特任教授
(写真:k.k/アフロイメージマート)

こども食堂は今何を考え、どうしようとしてるのか

政府が公立小中高校の休校を要請するに至り、全国各地で対応が協議されている。

そのような中「この状況下で、こども食堂はどうするのか?」について、筆者の団体(NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ)にも問合せが相次いでいる。

週明けからの休校実施の見通しの中、全国各地のこども食堂のみなさんが今、何を考え、どうしようとしているのか事態が流動的なだけに、「今日現在のところ」という限定を強くかけざるをえないが、伝えたい。

広がる中止の動き

当然ながら、子どもが集まり食事する場所であるこども食堂にも、開催中止の動きは広がっている。

たとえば滋賀のこども食堂のとりまとめ団体「子どもの笑顔はぐくみプロジェクト」は、今日、以下のメッセージを公表した。

子ども食堂の開催中止について(お願い)

時下、ますますご清祥のこととお喜び申しあげます。

皆さまにおかれましては、日頃より子ども食堂を通じた地域づくりにご尽力いただきありがとうございます。

さて、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、27日に政府からの全国の小中高校等の臨時休校の要請があったことを受け、子ども食堂にかかわる全ての方の健康と安全を守るため、子ども食堂を当面の間中止いただくようお願い申しあげます。

開催の準備をすすめていただいていたところと存じますが、ご理解いただきますようお願い申しあげます。

出典:子どもの笑顔はぐくみプロジェクト(筆者が一部抜粋)

開催中止だけでは済まない個別事情も

ただ、「開催中止」だけでは済まない個別事情にも、多くのこども食堂関係者が気づいている。

給食がなくなることも踏まえて様々な問題が出てきます。

とりあえず学童は対象外であるため、学童がどうなるのか、こども食堂のように集団でご飯を食べることへの懸念はどう考えていくのか、ひとり親家庭の子どものフォローはどうするのかなど、明日は内部でも検討していくことになります。

こども食堂に深く関与する市役所職員の27日のメッセージだ。「長い夜になりそう…」との記述もあった。

感染拡大を最大限防止するためには、みんなが集まらず、家でじっとしているのがいい、というのは理解できる。

他方、自宅待機やテレワークが可能な職場ばかりではない。祖父母に頼れる人ばかりではない。

さまざまな家庭の個別事情がある中で、小さい子を長時間、1ヶ月近くの長きにわたって、突然、家に置いておくことによる「別の危険」も意識される。

学校が休校になり、そして児童クラブや保育園も含め、子どもを取り巻く環境がどうなっていくのか、見えてくると、子どもや保護者のニーズや子ども食堂としてできることが見えてくると思いますが、、、今は分からず不安です。親も、子どもも、学校も、みんな不安ですよね

(鹿児島のこども食堂運営者)

私たちもかなり、パニックです。

(長崎のこども食堂運営者)

こども食堂の運営者は、地域の一住民。特別な情報を持っているわけではない。

学校をどうするか、保育園や放課後児童クラブ(学童)をどうするか、自治体によって対応が分かれる場合もあるだけに、不安を抱えながら、それでも自分たちに何ができるかを考えているというのが、こども食堂のみなさんの今現在のありのままの姿だろうと思う。

「みんな」の中に、さまざまな事情を抱えた家庭がある

そのような中、多くのこども食堂関係者が、自分にできることを考え、動き出している。

ほとんどのこども食堂は、地域のみんなが集まる多世代交流の「子ども会」のような場所。困っている子どもや家庭だけが来ているわけではない。

しかし「みんな」の中に、さまざまな事情を抱えた家庭があることは、学校や保育園と変わらない。

こども食堂のみなさんは、その「みんなの中の誰か」にアンテナを立てている

さきほど運営者みんなで決めたのですが、予定の3月7日は中止するけど、いつも提供してもらっているパンや野菜は予定通りいただき、必要な御家庭にお渡しすることになりました。

(前述の鹿児島の運営者)

もともと、市内7店舗のお弁当屋さんにご協力いただき、「こどものつながるごはん」として、18歳以下の子どもに無料でお弁当を渡していただいていました。

そのときの「無料チケット」がありますので、今回、各ご家庭に(参加者の住所は把握しておりますので)配ろうか、と思っております。

(福井のこども食堂運営者)

3月のこども食堂は中止して、当日は会場で待機し、必要な家庭にだけ食事を提供しようと思っていました。

でも今回の小中高の休校のニュースをきき、それでは全く足りない、他の策を考えなければ、と思っています。

うちで個別にフードバンクで支援している家庭でも、休校の間は給食がなくなってしまうため、緊急に食品のお届けをする必要があると思っています。

また、年2回開催しているフードパントリー(注)を、3月に緊急でやろうかと考えています。

また、学校給食の食材が大量に余るので市からそれを提供していただけることになりました。

何らかの形で必要な家庭に届けたいと考えています。

(三重のこども食堂運営者)

(注)フードパントリーとは、直訳すれば「食糧をストックする小部屋・倉庫」のことだが、ここでは生活困窮者等に取りに来てもらって食料配布する活動そのものを指す。

県の母子会会長とこども食堂が連携しパントリーの拠点を数カ所設置しようか、という話し合いも始まってます。

(ある県のこども食堂運営者)

私は今、医療関係の仕事ですが、病院から「休みになったら医療機関がパンクするおそれがあるので、居場所作りとしてこども食堂を開けてくれないか」と要請がきてます。

クローズドで、ふだんから、こども食堂に来ているシングルマザーのお子さんを中心に預かるのと、病院で働いている人などのお子さんを中心に預かることとしました。

夏休みに、子どもの居場所作りとして週に3回開けていて、また、昼食も出してましたので、やろうと思います。

(前述の長崎のこども食堂運営者)

フードバンクも

もちろん、こども食堂だけではない。

フードバンクも動き出している。

山口のフードバンクは、今日、次のようなページを開設した。

子どもたちにとっては、長い春休みになります。

学校が休みになると、給食がなくなり

お昼ご飯が食べられない子どもたちがいます。

フードバンク山口では緊急支援として、

食品が必要なのに支援が届いていない家庭に

食品を届けたいと思っています。

皆さまに食品寄贈のお願いです。

*募集する食品*

・常温保存ができ未開封で賞味期限が4月末まである

・調理が比較的容易または不要なもの

出典:NPO法人フードバンク山口

できることを、できる人が、できることから

今も、全国で、週明けの対応を考えている多くのこども食堂関係者、フードバンク関係者がいるだろう。

週明けになれば、さらに多くの対応が各地域で行われていくだろう。

できることを、できる人が、できることから。

コロナ感染の直接の被害者も、コロナ感染対応による間接の被害者も、出ないことを祈る。

※こども食堂からは「今、自宅で子どもが作れるレトルト食品などの支援があれば、必要としているお宅に配れる」との声も出ています。「むすびえ」では、今後どのような形で寄付を受けられるか、フロー等を調整していきます。寄付等を検討してくださる企業・団体の方がおられたら、「むすびえ」サイトからの発信にご注目いただければ幸いです。

社会活動家・東京大学特任教授

1969年東京都生まれ。日本の貧困問題に携わる。1990年代よりホームレス支援等に従事し、2009年から足掛け3年間内閣府参与に就任。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授の他、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長など。著書に『つながり続ける こども食堂』(中央公論新社)、『子どもが増えた! 人口増・税収増の自治体経営』(泉房穂氏との共著、光文社新書)、『反貧困』(岩波新書、第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)など多数。

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