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どんな時間設定でも強い藤井聡太竜王(20)銀河戦準決勝で豊島将之九段(32)に逆転勝利!

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月20日。第30期銀河戦準決勝▲豊島将之九段(32歳)-△藤井聡太竜王(20歳)戦が放映されました。棋譜は公式ページでも公開されています。

 豊島九段先手で、戦型は角換わり。両者ともに、手早く攻めの銀を繰り出していく「相早繰り銀」(あい・はやくりぎん)となりました。古くから指されながらも進化を続け、タイトル戦でも指されている戦型です。

 藤井竜王が先に動いたのに応じて豊島九段が反撃。驚くべきは両者の指し手が早いこと。両者のおそるべき研究の深さをうかがわせる進行でした。

 豊島竜王は王手で桂を捨て、相手陣に角を打ち込み、自陣の銀を捨て、角を切る。どの一手も観戦者をあっと言わせるような順です。対して藤井竜王もよどみなく応じていき、バランスは取れたまま推移して終盤に入っていきます。

 藤井竜王が豊島陣の右辺に攻め駒を多く集めたのに対して、豊島九段はそれをうまく渋滞させます。コンピュータ将棋が示す評価値は豊島リードを示していました。

 93手目。豊島九段は攻防に角を打ちます。結果的にはこれが疑問だったようです。しかしすぐに切り返した藤井竜王が見事だったというべきでしょう。

 94手目。藤井竜王は成桂を捨てて王手をかけます。これが好手で形勢は逆転模様となりました。藤井竜王はさらに飛車も切り捨て、その代償に豊島九段の角をはずします。

 102手目。藤井竜王は豊島玉の頭に桂を打ち捨てます。これもまた「次の一手問題」に出てきそうな寄せの妙手。中段に引っ張り出された豊島玉は上下はさみうちの形で、受けが困難となりました。

 豊島九段は最後の追い込みに出ます。しかし藤井竜王は王手を的確にかわしてつかまりません。

 116手目。再び手番を得た藤井竜王は豊島玉の下から銀を打ってしばります。攻防ともに手段が尽きた豊島九段が投了し、藤井竜王の勝ちとなりました。

 早指しでもまたおそるべき強さを見せて、藤井竜王は決勝に進出。本局のあと勝ち上がった高見泰地七段と優勝を争うことになりました。

 本局が収録されたあとの棋王戦4回戦でも藤井竜王と豊島九段は当たり、藤井竜王が勝ちました。現時点の両者の対戦成績は藤井19勝、豊島11勝です。年明け1月には、A級7回戦でもまた当たります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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