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ジム・ロジャーズ大転換の時代 米中激突期の資産の守り方 海外投資が必要な理由

花輪陽子シンガポール在住FP(CFPⓇ・1級FP 技能士)

ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。ジム・ロジャーズ著『大転換の時代 世界的投資家が予言』(プレジデント社)から米中貿易戦争が激化する中での資産の守り方について考えていきたいと思います。

今、世界的に国々が門を閉じ始めている。これは世界経済に悪影響を及ぼすと私は予想している。(中略)何か悪いことが起きるとき、外国人のせいにするのは最も簡単な方法なのだ。世界の国々の鎖国政策はこれから数十年続くだろう。

ロジャーズ氏は香港の問題やコロナショックが起こった2020年に発したお互いに対するひどい言葉が、戦争の原因になり得ると懸念をしています。過去のイラク戦争などでも適当な理由を作って攻撃を開始しているからということです。

引き続き、米中対立を見守る必要があり、資産運用をする際にも考慮に入れて投資対象を選ぶ必要がありそうです。

「もし戦争が起こったとしたら、資産は安全通貨に入れておくべきだ。ブロックされる可能性がある国の通貨は保有すべきではない。戦争時は政府が自国の金融資産と通貨を封鎖(他通貨や海外に送金不可能)する傾向がある。」

現在、グローバル経済なので昔と比べると、特に先進国では預金封鎖のリスクはかなり低いとは言えます。そんなことをすれば、外国からの投資が呼び込めなくなるからです。

しかし、国や通貨を間違えると、資金を外に出せなくなったり、最悪の場合は手持ちのお金が全部消えるリスクもあるとロジャーズ氏は言います。

「預金封鎖をした国が勝てば資産価格は戻るかもしれないが、勝者の国に投資していなければ意味がない。中立的な国、あるいは戦争に関係のない国に資産を置いておくべきだ。」

日本では個人が保有する金融資産は2020年9月末時点で1900兆円を超え、過去最高となりました。そのうち54%が現金・預金で1034兆円と世界的にも預金比率が高いです。しかし、ロジャーズ氏はこちらにも警告をしています。

「戦争が起こらなかったとしても、日本でも銀行口座の封鎖リスクは十分存在する。国の債務が爆発的に増え、人口減少に歯止めがかからない中、日本にさまざまな危機が想定されるからだ。日本政府は国を支配したがり、国民は政府に従う傾向がある。」

ロジャーズ氏はアメリカの政治や先行きに関して悲観的ですが、まだ大量の米ドルを保有していると言います。世界の投資家はまだ米ドルを安全資産として見ており、基軸通貨としてのドルは当分続くと考えているからです。しかし、20年後を考えると米ドルより人民元を選ぶと言います。

「人民元が他通貨へ変換可能になれば、最初に中国から資金を出したい人々の大きな売りが見られるだろう。つまり、人民元安になる。しかし、それは短期的で、以降は私のように中国に投資をしたい人たちが殺到すると予測する。」

香港に関しては、暴動という不確定要素がある限りは都市としての魅力をさらに失い、人の流出は避けられないと言います。また、中国本土への投資呼び込みは続き、再び上海の時代が到来し、香港はエキサイティングな都市ではなくなると断言します。

「香港ドルは、人民元が自由に取引されるまでは存在するが、それ以降はなくなるだろう。(中略)ただし、オンショアとオフショアの人民元が同一通貨となっても香港ドルがさほど動く訳ではない。現存のレートでただ単に人民元に変換すればいいだけだからだ。」

ロジャーズ氏はブロック経済が進む中でも、今こそ資産を海外に分散すべきだと言います。

「海外に移せば資産防衛だけでなく、国内ではお目にかかれないようなさまざまな投資商品に巡りあうことができるし、それは大きなチャンスでもある。」

海外投資と言っても、詐欺的な商品もあるために十分に注意をするべきです。手始めに米ドル建てのETFを使い、日本語で利用できる外資のオンライン証券などで練習を始めるなどが初心者にはよいかもしれません。

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シンガポール在住FP(CFPⓇ・1級FP 技能士)

外資系投資銀行を経て、スイスのファミリーオフィスでウェルスマネジメントに従事。日本人の海外移住や資産運用、海外富裕層の日本移住のサポートも。著書に『世界標準の資産の増やし方』(東洋経済新報社)、世界三大投資家のジム・ロジャーズ氏の翻訳書を多数出版、『ホンマでっか⁈TV』等TV出演多数 お仕事の依頼は fp@yokohanawa.com へお願いします。花輪陽子のシンガポール富裕層の教え https://www.mag2.com/m/0001687882.html 花輪陽子のnote https://note.com/yokohanawa 

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