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藤井聡太三冠(19)ABEMAトーナメント決勝で木村一基九段(48)との激熱リーダー対決を制する

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月18日。第4回ABEMAトーナメント決勝、チーム藤井-チーム木村戦がおこなわれました。

 3人チームで、先に5勝した方が勝ちの団体戦。両チーム譲らずに3勝3敗で7局目を迎えました。そうしたしびれるような状況の中、チームリーダー自らが出場を決断して、藤井聡太三冠(19)と木村一基九段(48歳)の対戦が実現しました。

 両者は第2回AbemaTVトーナメント(個人戦)準決勝の三番勝負でも対戦しています。そのときは藤井2勝、木村1勝でした。

 今大会、藤井三冠はここまで8勝2敗。木村九段はプレーオフの2局も含めて9勝4敗という好成績を残しています。

 先手番は藤井三冠。両者は翌々日にB級1組順位戦という、こちらも大きな対局を控えています。

 順位戦での対局も藤井先手と決まっています。

藤井「作戦的にも普段どおりやろうかと思ってます。そのこと(順位戦)は忘れて普通に指せればと思ってます(笑)」

木村「まあ、あさっても当たるから。しかも先後も同じだ。まあ、なるようになるさ」

 対局開始前、両対局者はそんな言葉が聞かれました。

 本局、戦型は相掛かり。後手の木村九段が7筋に攻めの桂を跳ねたのに対して、藤井三冠はその弱点の頭をねらって積極的に動きます。

 39手目。藤井三冠は7筋の歩を成り捨てます。これは軽妙手。どう応じても木村九段の側にはいやみが残ります。時間があればいくらでも読みたいところですが、超早指しの本大会のルールでは、そうもいきません。

 42手目。木村九段は、飛車でと金を取ります。対して藤井三冠が8筋に歩を垂らしたのが継続の軽妙手でした。

森内「なるほど、この歩がいい手か」

 解説の森内俊之九段がそう感心していました。強者は歩をうまく使うという典型的な場面だったかもしれません。打った歩は成ってと金に出世し、相手の銀と交換になります。形勢は藤井三冠よしがはっきりしてきました。

 木村九段は銀損の代償に藤井陣に飛車を成り込んで龍を作ります。対して藤井三冠は冷静に対応。逆に龍を生け捕りにする順を見せ、駒得を広げながら優位を確立しました。

 やがて藤井三冠はその龍も召し捕ります。

藤井「こちらが居玉のまま戦いになってかなり・・・。途中龍を作られて判断が難しい場面が多かったんですけど。そのあと龍を取る形になって、少しよくなったのかなと思いました」

 藤井三冠は取った飛車を相手陣に打ち込んで決めに出ます。木村九段も必死に粘りますが、やがて受けなしに。

木村「途中から差が開いてしまって・・・。うーん、まあ・・・。残念かな、という感じはします。相手の藤井さんの楽なようにさせてしまったなあ、というところがあります」

 最後、藤井三冠がノータイムで龍を切って、木村玉を即詰みに討ち取りました。111手目、銀打ちの王手を見て木村九段は「負けました」と投了。藤井三冠が大きな大きな一番を制しました。

藤井「これで自分の出番は、対局は終わりなので、あとは祈りたいと思っています」

 8局目。高見泰地七段が佐々木勇気七段に勝利。チーム藤井が5勝3敗で決勝戦を制しました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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