オーストラリアのブルース狼ウルフ・メイルが2024年10月に来日。ブルース・ギターが吠える秋
“オーストラリアのブルース狼”の異名を取るギタリスト、ウルフ・メイルが2024年10月に日本公演を行う。
ロックなエッジとソウルフルな泣きを兼ね備えたエモーショナルなギターを武器に支持を得てきたウルフにとって10年ぶりの来日。今回は関西のみのツアーだが、久しぶりの日本上陸は嬉しいプレゼントだ。
アルバム『ザ・ウルフ・イズ・アット・アワ・ドア』を引っ提げて戻ってくる彼に、ライヴの展望を語ってもらおう。
<大阪はエキサイティングな都市で、人々は温かく接してくれる>
●日本公演の決定、おめでとうございます。
有り難う。ずっと日本に戻りたかったんだ。でもツアーのスケジュールを調整出来なかったり、コロナ禍でライヴを出来ない時期があって、ご無沙汰になってしまっていた。今回は大阪の音楽ファンの前でプレイ出来て嬉しいよ。
●2009年1月の初来日公演も大阪・神戸・京都という、西日本のツアーでしたね。
うん、自分と日本の関係の原点である大阪から新しいスタートを切るんだ。エキサイティングな都市で、人々は温かく接してくれる。いつだってプレイして楽しいね。来年(2025年)また戻ってきて、東京や名古屋、あらゆる都市でライヴをやりたい。都会だけでなく、地方も回ってみたいんだ。
●前回あなたとインタビューしたのは2023年、アルバム『ザ・ウルフ・イズ・アット・アワ・ドア』を発表したときですが、それからどんな活動をしてきましたか?
アルバムが高い評価を得たことで、本格的にツアーに出ることにしたんだ。2023年11月から12月にかけてヨーロッパ7カ国で25公演をやった。ブルース・クラブから小さめのシアターまで、いろんな規模の会場でプレイしたよ。中国やロシアでもショーをやって、地元のメディアで大きく扱われたよ。今年の夏はヨーロッパのフェスティバルにも出演して、全身が熱くなった状態で日本に行くんだ。日本の後は北欧でショーをやる予定だ。
●ライヴではどんな曲をプレイしていますか?
『ザ・ウルフ・イズ・アット・アワ・ドア』からの曲、昔の曲、カヴァー曲...みんなが聴きたい曲をすべてプレイするよ。さすがにライヴ当日、演奏中にリクエストされても対応出来ないけど、ウェブサイトを通じて「この曲を聴きたい!」とフィードバックがあればちゃんと目を通すし、プレイするかも知れないよ。俺たちにとって大事なのは、バンドとお客さんが一緒にハッピーになることだからね。『ソリッド・グラウンド』(2002)や『エレクトリック・ラヴ・ソウル』(2010)からの曲もプレイするんだ。それからカヴァー曲は、自分が影響を受けてきたアーティストの曲をプレイする。
●リクエストが多いのはどんな曲でしょうか?
「ハロー」「カミング・トゥ・ユー」「ソリッド・グラウンド」...あと俺のインストゥルメンタルを好きな人も多いんだ。「ブルー・ローズ」「レインボウ・バード・ブルース」とかね。
●アルバムとライヴでは曲のアレンジを変えたりしますか?
基本的には同じアレンジにしている。自分が好きなアーティストのライヴを見に行ったらレコードと全然違っていたら、ガッカリするファンもいると思うんだ。俺自身もいろんなアーティストのファンだし、彼らのレコードを聴いてから見に行くから、アルバムと近いアレンジを期待するよ。もちろんギター・ソロまでまったく同じではないし情熱のまま、インプロヴィゼーションも交えている。ライヴならではのスリルと興奮が込められているよ。数週間前にライヴの映像を3〜4台のカメラで撮影したんだ。最近は音楽ブルーレイは売れないし、プロモーションで配信するかも知れないけど、大勢の人に見てもらえるような形で世に出したいね。
●以前海外でピーター・グリーンの曲をプレイするスペシャル・ライヴ“ピーター&ザ・ウルフ”を行いましたが、日本でも彼の曲をプレイするでしょうか?
うん、100%プレイするよ。フリートウッド・マックでピーターがプレイした「オー・ウェル」「ニード・ユア・ラヴ・ソー・バッド」などはカヴァーしているのではなく、ハートで“感じる”んだ。
●ピーター・グリーンの曲には「ザ・スーパーナチュラル」や「ザ・グリーン・マナリシ」のように苦悩や祟るようなダークなムードがあるものがありますが、それもハートで感じますか?
うん、誰にでも苦しみ、落ち込むときがあるし、ピーターはそんな感情を見事に描いていたんだ。彼がフリートウッド・マックでやっていた「アイヴ・ゴット・ア・グッド・マインド・トゥ・ギヴ・アップ・リヴィング」という曲をプレイしたことがあるよ。
<人間らしさを取り戻し、生のエモーションを露わに出来るのがブルースのライヴ会場>
●最近あなたのファンになった若いリスナーに“ウルフ・メイルのライヴ”はどのようなものだと説明しますか?
100%のアドレナリンとパッション、ブルースと偶発的なエモーションを込めたショーだ。俺のショーを気に入るか、気に入らないか判らないけど、きっと何かを感じずにはいられないよ。音楽からフィーリングとインスピレーションを得たい人だったら、きっと楽しむことが出来るよ。
●あなたの音楽はブルース/ブルース・ロック/ソウル&ブルースなどと呼ばれますが、2024年にブルース・スタイルの音楽をプレイするのはどのようなものでしょうか?
最高の気分だよ。ヒップホップやEDMが人気があるといっても、世界最大のアーティストはAC/DCやザ・ローリング・ストーンズだろ?ブルースをベースにしたロックンロールはいつだって人の心を捉えるんだ。彼らほどではないけど、俺のライヴにも大勢のお客さんが来てくれる。しかも若い世代のファンが足を運んでくれるんだ。
●日本でもフジ・ロック・フェスティバルにクリストーン“キングフィッシュ”イングラムやオールマン・ベッツ・バンドが良い時間帯に出演、大きな反響を得るなど、ブルース系の音楽は人気を誇っているようです。
それは世界的な現象だよ。誰もが「ブルースは死んだ」とか決めつけたがるけど、ブルースはますます元気だ。もちろん表面的な小手先のペンタトニック・スケールを弾いて「ブルースでござい」とか言っている人もいる。でも今日でもリアルなブルースをプレイしているプレイヤーはたくさんいるよ。キングフィッシュもそうだし、やや年上だけどゲイリー・クラーク・ジュニアもそうだ。デレク・トラックスは自分が弾くべき音と弾くべきでない音を熟知している。彼らはトラディショナルなブルースを模倣するのでなく、自分の個性、自分のソウルを込めて誠実にプレイしている。そうすることでブルースは現在進行形音楽として生きていくんだ。
●あなたのライヴを見て、もっとブルースを掘り下げたいリスナーに、どんなアーティストをオススメしますか?
ピーター・グリーンがいた頃のフリートウッド・マックはもちろんだけど、ジョニー・ウィンターやジミ・ヘンドリックスもしっかり押さえて欲しい。もっと伝統的なブルースだったらエルモア・ジェイムズを聴くべきだね。究極のブルースマンをたった1人挙げるとしたら、やはりエルモアだよ。それからアルバート・コリンズは最高のブルース・ストーリーテラーである、誰とも似ていない個性的なギター・スタイルをしている。
●ロシアとウクライナ、イスラエルとパレスチナの例を挙げるまでもなく、世界の人々がお互いを尊重しあい、共通する価値観を持つことは非常に困難です。それでもブルースが世界の人々をひとつにすることが出来るのは何故でしょうか?
俺の知っているロシアの人々はみんなクールで寛大だし、ライヴに来るお客さんは音楽に対して情熱を持っている。ウクライナには行ったことがないけど、友人のガールフレンドがオデッサ在住で、ライヴをオーガナイズしてもらう筈だったんだ。両国のあいだに問題があるのは悲しいことだけど、音楽は人々を結びつけるものだ。俺は政治やイデオロギーと関係なく、どこであってもライヴをやるつもりだよ。俺が音楽をやるのは、みんなに人間らしさを取り戻させるためなんだ。人々がスマホを与えられて、感情や思考を奪われている。そんな彼らが人間らしさを取り戻し、生のエモーションを露わに出来るのが、ブルースのライヴ会場なんだ。いろんな音楽がある中で、ブルースは特にエモーショナルなものだ。ブルースは“人間の音楽”なんだよ。
●今後レコーディングの予定はありますか?
メンフィスのハーモニカ奏者ボブ・コリトーとコラボレーションする話が持ち上がっているんだ。次のアルバムでは全編ギターだらけにするより、ツボを突いてより効果的なプレイを志すかも知れない。デレク・トラックスを聴いてみれば判るけど、実はリード・ギターの占める割合は決して高くないんだ。ピアノやホーンズがあるせいもあるけど、デレクはここぞというときに印象的なフレーズを弾いている。2025年3月にニュー・アルバムを出せたら良いと考えているよ。こないだタイでライヴをやって、現地のブルース・プレイヤー達をバック・バンドに起用したんだ。タイのブル−ス・シーンについて初めて知って、魅力を感じたよ。彼らと共演するアルバムを作っても面白いと思う。いろんなことをやってみたいんだ。
【Wolf Mail(ウルフ・メイル)大阪・限定ツアー】
10/3(木) THE RAINCOAT(十三)https://bar-raincoat.com
O.A.)岡部バンド(未定)
オープン:19:00 / スタート:19:30
10/5(土) Red House(堺)https://redhouseosaka.com
O.A.)FEELBOX
オープン:19:00 / スタート:19:30
10/6(日) Doors In Heaven(日本橋)https://doorsin.sakura.ne.jp
O.A.)BSMF
オープン:18:00 / スタート:19:00
https://bsmf.jp/?mode=f5
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https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7ba3faf355b8c4e851717b166cdc3c9c5a30ed28