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松本剛はトニー・グウィンのような「規定打席未満の首位打者」になるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
トニー・グウィン July 27,1999(写真:ロイター/アフロ)

 7月20日、北海道日本ハム・ファイターズは、前日に自打球を左膝に受けた松本剛について、左膝蓋骨下極骨折と診断され、復帰まで約4週間の見通し、と発表した。

 松本は、リーグ・トップの打率.355を記録している。2位の今宮健太(福岡ソフトバンク・ホークス)は打率.297(7月20日時点)。現時点で200打席以上の選手では松本に次ぐ、吉田正尚(オリックス・バファローズ)も打率.311だ。

 ここまでに、松本は83試合に出場し、334打席に立った。1試合の平均打席は4.02だ。このペースを当てはめると、あと109打席に立ち、シーズン全体で規定打席の443(143試合×3.1=443.3)に達するには、約27試合の出場が必要となる。

 北海道日本ハムは、8月26日以降に27試合を予定している。雨天や新型コロナウイルス感染による、順延がなかった場合だ。それまでに5週間あるので、復帰が遅れなければ、松本は規定打席に到達するだろう。

 また、規定打席に届かなくても、首位打者を獲得することはできる。日本プロ野球に前例はないが、メジャーリーグにはある。1996年のナ・リーグ首位打者、トニー・グウィンがそうだ。

 この年、グウィンは打率.353を記録したものの、7月から8月にかけて1ヵ月以上欠場し、498打席にとどまった。規定打席は502(162試合×3.1=502.2)だ。けれども、不足分の4打席(502-498=4)を4打数0安打としても、グウィンの打率は.349となり、規定打席以上では最も高いエリス・バークスの打率.344を上回る。これにより、グウィンは3年連続7度目の首位打者を獲得した。ちなみに、翌年も含め、グウィンの首位打者は8度を数える。バークスが打率トップ10にランクインしたのは、この年しかない。

 グウィンに適用されたルールは、日本プロ野球でも同様だ。

 昨シーズン、吉田は、規定打席未満の首位打者となる可能性があった。9月上旬に左太腿裏を痛めて離脱した時点では、437打席で打率.338。規定打席に足りない6打席を6打数0安打とすると、打率は.332だ。9月下旬に復帰した吉田は、規定打席に到達し、455打席でリーグ・トップの打率.339を記録したが、2位の森友哉(埼玉西武ライオンズ)は打率.309なので、復帰できなかったとしても、首位打者は吉田だったということになる。

 とはいえ、今シーズン、松本が首位打者のタイトルを手にするには、復帰が不可欠だ。このまま戻ってくることができずに――そうならないことを願うが――シーズンを終えた場合、不足分の109打席を109打数0安打として、ここまでの304打数108安打と合計すると、打率は.262となる。これでは、首位打者はまず望めない。一方、規定打席に届かなくても、不足分がわずかであれば、首位打者を獲得する可能性は低くなさそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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