Yahoo!ニュース

モドリッチが開幕戦で退場。アキレス腱を守る、リーガのルール修正。

森田泰史スポーツライター
セルタ戦で退場したモドリッチ(写真:ロイター/アフロ)

ルカ・モドリッチがデニス・スアレスにタックルを仕掛ける。主審の笛が鳴り、モドリッチにレッドカードが提示された。

リーガエスパニョーラ開幕節、セルタ対レアル・マドリーの一戦におけるワンシーンだ。後半12分にモドリッチが退場したマドリーは10人になり、数的不利の戦いを強いられながら3-1で勝利した。

また、別日に行われたアトレティコ・マドリー対ヘタフェでは、ヘタフェのホルヘ・モリーナが似たような状況で一発退場を命じられている。その後アトレティコ側にも退場者が出て10対10となり、試合はアトレティコが1-0で勝ち点3を得ている。

モドリッチにせよ、モリーナにせよ、退場の判定に驚きを隠せなかった。これまでのシーズンであれば、イエローカードで済んだかもしれない。だが今季のリーガでは、あるルールに修正が加えられている。

■VARの導入

昨季からリーガにVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が導入された。その結果、ゴール前、とりわけペナルティーエリア内での反則が厳しくジャッジされるようになった。だが一方で、ミドルゾーンで犯されたファールに対して、ビデオ判定が使われることは皆無に等しかった。

しかし、先述したモドリッチのファールの場面では、VARを用いての協議の時間が確保された。その結果、レッドカードに値するタックルだったと、ハビエル・エストラダ・フェルナンデス主審が判断した。

後方からのタックルが、選手に大きなケガをさせる可能性があったかどうか。それを、プレーエリアに関係なく、VARを使いながら、厳しくジャッジしていく。そういった決断だ。これまでのルールが、より厳格になったのだ。

それは後方からのタックルを防ぐためである。アキレス腱、脛骨、ふくらはぎを痛めるようなタックルを許さないようにする。それは選手生命にかかわりかねないからだ。

■修正の効果

ピッチで戦うプレーヤーとしては、故意ではないという主張がある。「偶発的なプレーで退場になった。同業者である選手に対して、意図的にああいうタックルをしたことは、人生で一度もない。まったくもって、故意ではなかった!」とは、モドリッチの弁だ。

これまでの観る側の感覚では、意図的であったかは重要な指標だった。無論、相手選手を傷つけようとする選手はいない。だが戦術的ファールを含め、ファールせざるを得ない状況で後方からタックルを仕掛ける場面はある。

ただ、今回のルール修正で、意図的であったかどうかは、問題ではない。対象になるのは「アキレス腱への接触がある」後方からのタックルだ。意図的であっても、そうでなくても、そういったプレーにはレッドカードが提示されることになる。

リーガエスパニョーラが開幕した週に行われた5大リーグの試合で、負傷した選手の数は615人に上る。だが、アキレス腱を痛めた選手はいなかった。

ルール修正の効果があったと考えるのは、まだ早計だ。このテーマについては、今後も議論がなされるだろう。しかし、第一にこの修正が選手を守るためだと知らなければいけない。そして、理解を深めるために尽力する必要がある。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事