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新興再興感染症は今後も出現するのか?次のパンデミックはまた100年後なのか?

忽那賢志感染症専門医
現代の世界の国際航空ネットワーク(Nat Rev Microbiol より)

2023年5月8日から新型コロナウイルス感染症は5類感染症となります。

次の新興再興感染症はまた現れるのでしょうか?

新型コロナは1918年のスペインかぜから約100年後に起こったパンデミックであったことから「100年に一度のパンデミック」と言われます。

では次の新型コロナのような規模のパンデミックはまた100年後なのでしょうか?

新興再興感染症とは?

過去20年に世界で発生した新興再興感染症と死亡者数(Nat Rev Microbiol . 2022 Apr;20(4):193-205.より)
過去20年に世界で発生した新興再興感染症と死亡者数(Nat Rev Microbiol . 2022 Apr;20(4):193-205.より)

新興再興感染症とは、これまで知られていなかった感染症、または一度大きく減少していた既知の感染症のうち、急速に増加し公衆衛生に大きな影響を与えるものを指します。

過去20年間を振り返ると、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行に始まり、2009年の新型インフルエンザ、2012年のMERS(中東呼吸器症候群)、2014年のエボラ出血熱、2015年のジカウイルス感染症など様々な感染症が出現してきました。

日本も例外ではなく、2014年には70年ぶりとなる国内でのデング熱の流行が起こりました。

新興再興感染症が出現する原因は?

新興再興感染症の出現する要因(Committee on Emerging Microbial Threats to Health in the 21st Century, 2003より)
新興再興感染症の出現する要因(Committee on Emerging Microbial Threats to Health in the 21st Century, 2003より)

新興再興感染症は様々な要因によって出現していると考えられています。

1.人間と動物の接触の増加

新興再興感染症の多くは動物由来感染症(動物が持っている病原体による感染症)ですが、人口増加、都市化、自然環境の破壊、農業の拡大など、人間と動物が接触する機会が増えています。これにより、ウイルスや細菌などの病原体が動物から人間に移行するリスクが高まります。たとえば、SARSやエボラ出血熱はコウモリ由来のウイルスであり、野生動物との接触が感染の原因となったとされています。

2. 国際旅行と貿易の増加

また、グローバル化に伴い、人々が国際的に移動する頻度が増加しています。これにより、感染症が国境を越えて広がるリスクが高まっています。また、国際貿易の拡大により、病原体を運ぶ物品や生物も広がることがあります。

3. 抗微生物薬の過剰使用

抗生物質などの抗微生物薬の過剰使用や不適切な使用は、耐性を持つ微生物(AMR:薬剤耐性)の出現を促します。これにより、再興感染症が発生し、従来の治療法が効かなくなることがあります。

4. 気候変動

気候変動は、感染症の媒介者である昆虫や動物の生息範囲の変化をもたらします。温暖化により、熱帯地域に生息する蚊などの昆虫がより広範囲に分布するようになり、それに伴って病原体も広がります。例えば、デング熱やマラリアなどの感染症が新たな地域で発生することがあります。

このように、新興再興感染症は私達人類がより豊かな生活を求める結果生じてくるものであり、過去20年で急に多くの新興再興感染症が現れてきていること、そして新型コロナの出現は決して偶然とは言えないでしょう。

新型コロナは1918年のスペインかぜから約100年後に起こったパンデミックであったことから「100年に一度のパンデミック」と言われますが、こうした背景を考えると次の新たなパンデミックは100年後ではなく、もっと早く現れる可能性が高いと考えられます。

次に現れる新興再興感染症に備えるためには?

それでは次に現れる新興再興感染症に備えるためには何が必要でしょうか?

感染症の発生を早期に察知し迅速に対応するために、病原体の監視とサーベイランスを強化する必要があります。また、国際的な情報共有や協力を促進し、感染症の拡大を未然に防ぐことが重要です。

また感染症に対する新たな治療法やワクチンの開発の促進、感染症に強い医療体制の構築や検査能力の向上、感染症対策の教育・啓発活動、予防接種プログラムの拡充などが求められます。

これ以外にも、人間と動物の接触の管理、抗生物質などの抗微生物薬の適切な使用など、多岐にわたる対策が必要です。

大事なことは、これらの対策は継続的に行う必要があるということです。

2009年の新型インフルエンザの流行が終わった後には、感染症対策のことは忘れ去られ、国立感染症研究所では予算も人員も削減されていきました

今回も新型コロナが5類感染症に移行し「喉元過ぎれば熱さを忘れる」となり、感染症対策がおろそかにならないように、国民としても注視し続ける必要があるでしょう。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人のテーマ支援記事です。オーサーが発案した記事テーマについて、一部執筆費用を負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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