自衛隊のロイヤルウィングマン無人機の構想
日本防衛省は有人の新型ステルス戦闘機を開発中ですが、これとコンビを組むロイヤルウィングマン型の無人機(ドローン)も同時に構想しています。完全自動の自律戦闘を行う人工知能の開発はまだ技術的にハードルが高いので、有人戦闘機から大まかな指示を得てチームを組む半自律行動型の無人機です。(ロイヤルウィングマンとは「忠実な僚機」という意味)
令和3年度 事前の事業評価 評価書一覧:日本防衛省
事前の事業評価の「自律向上型戦闘支援無人機の機能性能及び運用上の効果に関する研究(PDF)」という項目で、今後のロイヤルウィングマン型の無人機の開発計画が記されています。巻末に載っている「将来の無人機による航空戦闘のイメージ」で、航空自衛隊が無人機に何をやらせたいか運用構想を知ることができます。
防勢対航空作戦
無人機は味方の有人戦闘機よりも前方に進出し、敵機(脅威航空機)の探知および対空ミサイルの発射を行います。
「防勢対航空作戦」は自国とその付近で行う迎撃戦のことです。敵地の上空に乗り込んで行う攻勢的な制空戦ではないという説明です。
探知だけではなく攻撃を行う空対空戦闘用の無人機となるので、空対空ミサイルが搭載可能なペイロード(搭載量)を持つ大きさの無人機が想定されています。
近接航空支援
無人機は有人戦闘機よりも前方に進出し、敵車両(脅威地上部隊)に爆弾を投下しています。対地攻撃の可能な爆弾・ミサイルの搭載が想定されています。
「近接航空支援」とは味方地上部隊が敵地上部隊と交戦中に空から支援爆撃する行動を言います。赤く塗られた敵の「脅威地上部隊」の手前に居る緑色の車両の「地上部隊」は味方であり、あくまで敵基地攻撃ではなく日本国内での地上戦であるという政治的なアピールをこのイメージ絵からは窺えます。海を越えていますが離島であるという想定です。
ただし無人機の能力的には海を越えた敵国領土での作戦も可能になるでしょう。もちろんそれは従来の有人戦闘機でも可能なことではあります。
航空阻止
無人機は有人戦闘機よりも前方に進出し、敵艦(脅威艦船)を探知して後方の味方の有人戦闘機に伝え、有人戦闘機が対艦ミサイルで攻撃します。つまり無人機では直接攻撃を行わず探知役に徹します。
「航空阻止」とは日本防衛省の用語では主として洋上での対艦攻撃の意味になります。本来は地上の敵の兵站などの後方を狙って航空攻撃する用語であり、日本防衛省でもその意味で使う場合がありますが、ここでの意味は対艦攻撃です。
対空や対地とは異なり対艦では攻撃を行わないのは、想定している無人機に対艦ミサイルを搭載するペイロードが無い、其処までの大きさの規模の機体ではないと予想できます。
小型の舟艇なら攻撃できる対戦車ミサイルくらいの大きさならば搭載は可能なのでしょうが、大型艦を攻撃できる本格的な対艦ミサイルまでは搭載が想定されていないのでしょう。
ただし事前の事業評価のイメージ絵はあくまで大まかな運用構想図に過ぎないので、検討を重ねた将来ではこの通りになるとは限りません。