鳥取の大雪は、降雪だけでなく積雪もランクインしており、歴史的な大雪
鳥取の大雪は、2月10日に日降雪量65センチで歴代4位、2月11日に最深積雪91センチで歴代5位となっていますが、統計する期間に差があります(表)。
鳥取だけではありません。降雪の統計開始年は積雪の統計開始年よりも新しく、明治、大正、昭和の前半は含まれていません。
降雪の統計開始年 積雪の統計開始年
札幌市 1953年1月 1890年1月
仙台市 1953年1月 1926年10月
新潟市 1953年1月 1890年10月
東京都千代田区 1953年1月 1875年6月
名古屋市 1953年1月 1890年7月
大阪市 1953年1月 1901年1月
広島市 1953年1月 1883年1月
高松市 1953年1月 1941年10月
福岡市 1953年1月 1894年1月
鹿児島市 1953年1月 1892年1月
那覇市 1953年1月 1891年1月
この差は、降雪の本格的な観測が、積雪の観測より遅く始まったことに起因します。
今回の鳥取の大雪のように、降雪だけでなく、積雪でもランクインしている場合は、文字通り、歴史的な大雪ということができます。
戦前の積雪と新積雪の観測
戦前の雪の観測について、三浦栄五郎が昭和15年に書いた「気象観測法講話(地人書館)」によれば、次のようになります。
1 積雪は、風の影響のない所に数箇所、センチ目盛をした木柱(積雪柱)を鉛直に建ててたてて行う(積雪の深さはセンチメートル単位で観測)。
2 特別の調査研究に資するため、幅30センチ、長さ50センチ位の平らな木板を白く塗って水平に起き、観測時刻に払い除け、新たに降った雪の深さを定規を垂直に差し込んで観測するものを新積雪と称する。
3 新積雪は「その日0時より24時までの間に降り積もったもの」をいうが、「前日10時から当日10時までのもの」「前日22時から当日22時までのもの」もある。
つまり、積雪については木柱を用いて日に何回か観測するものの、降雪については特別な調査研究に資する場合だけ、木板を用いて1日に1回観測するというものでした。
雪尺と雪板
戦後、アメダスが登場するまでの雪の観測は、木柱を「雪尺(図1)」、木板を「雪板(図2)」、新積雪を「降雪」と称するようになり、次第に降雪の観測が重視されるようになっています。
これは、車社会の到来によって、除雪活動に必要な降雪の観測が重要になってきたからです。
アメダスで変わった雪の観測
昭和49年から運用を開始したアメダス(地域気象観測所)は、降水量、風向・風速、気温、日照時間、積雪の深さの観測を自動的に行い、気象災害の防止・軽減に重要な役割をしています。
アメダスで使うために開発された、自動的に雪の観測を行う測器の原理は次のようなものです。まず、高さがH0の場所から地表面に向かって超音波を発射し、雪面で反射して戻ってくるまでの時間から積雪Hを求めます(図3)。積雪がより深いと超音波がより早く戻ります。超音波が進む速度ほ、温度による差がありますので、同時に計っている気温で修正します。
積雪の高さは、時間と共に雪が引き締まってきますので、融けなくても低くなります。しかし、雪が降った直後で考えると、降雪の分だけ積雪が増えます。このことから、アメダスでは1時間ごとに降雪の深さの差をとり、増えた場合のみを加えて降雪量 としています。例えば、6時間を考えたとき、1時間ことの降雪差が、1センチ、0センチ、ー1センチ、1センチ、0センチ、ー1センチなら、降雪量は、プラスだけを加えた2センチです。プラスマイナスゼロではありません。
積雪量から降雪量を計算するメリットは、1時間毎に降雪量を出すことが可能という点です。このため、降雪情報が必要な除雪作業などに、きめ細かい雪情報を提供することが可能となりました。
その後、赤外線を用いるものや、真下に放射ではなく斜めに放射するものなど、自動的に積雪を観測する機器が登場しますが、降雪については、観測した積雪量から計算する方式は踏襲されています。
図3の引用:饒村曜(2012)、お天気ニュースの読み方・使い方、オーム社。