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マーシュのOPSは両リーグ1位。3年目の開花なのか、春の椿事なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブランドン・マーシュ(フィラデルフィア・フィリーズ)Apr 22, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月22日を終えた時点で、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)の防御率0.64は、は、規定投球回以上――チームの試合数×1.0イニング以上――の76人のなかで最も低い。一方、規定打席以上――チームの試合数×3.1打席以上――の181人中、OPSが最も高いのは、昨年の夏まで大谷チームメイトだったブランドン・マーシュ(フィラデルフィア・フィリーズ)だ。開幕から20試合に出場し、73打席でOPS1.157を記録している。

 打率.359は6位、出塁率.438は5位、ISO.359は6位、長打13本は5位。ホームラン3本と三塁打4本に、6本の二塁打を打っている。

 マーシュは25歳。今シーズンは、メジャーリーグ3年目だ。過去2シーズンのOPSは、どちらも.680未満。2021年が260打席でOPS.673、2022年は461打席でOPS.679だった。

 今シーズンの好調は、春の椿事という可能性もある。高打率については、BABIPの高さも理由かもしれない。BABIPをごく簡単に説明すると、ホームラン以外の打球がヒットになった割合だ。数値が異常に高い場合は、いい当たりでなくても飛んだり転がったりした方向によってヒットになるなど、ツキに恵まれていることが少なくない。マーシュのBABIP.500は、両リーグで最も高い。

 ただ、開花の兆しということも、大いにあり得る。フィリーズへ移ってから、マーシュはバッティング・フォームに変更を施した。どう変わったのかは、昨年9月に「マーシュが移籍後の打率を3割に乗せる。エンジェルスを去り、新天地で打撃開眼!?」で書いたとおりだ。昨シーズンのOPSは、移籍前と移籍後で.637→.773と推移した。

 また、三振率は、今シーズンも28.8%と高めながら、過去2シーズンの35.0%と34.3%と比べると、5%以上も低い。スタットキャストとファングラフス、どちらのデータにおいても、ボール球に手を出す割合は下がっている。1打席平均の球数は、2021年の4.13球と2002年の3.92球から、今シーズンは4.33球に増加。四球率は、過去2シーズンが7.1%と6.1%、今シーズンは12.3%だ。

 一方、昨夏のトレードで、マーシュと入れ替わりにフィリーズからエンジェルスへ移ったローガン・オホッピーは、左肩を痛めて4月21日に故障者リストへ入ったものの、それまでは、チームの19試合中15試合でスタメンマスクをかぶり、打率.283と出塁率.339、OPS.886を記録していた。長打は、ホームラン4本と二塁打2本だ。

 復帰の時期はまだわからないものの、昨年9月にメジャーデビューしたオホッピーは、まだルーキーだ。年齢は、マーシュより2歳若い。今のところ、このトレードは、ウィン・ウィンになりそうな雰囲気を漂わせている。

 もっとも、両チームとも、今シーズンの出足は、順調とは言い難い。ここまで、フィリーズは10勝12敗、エンジェルスは10勝11敗だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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