「年収200万円で豊かに暮らせるのか」値上げラッシュで節約は限界、海外在住FPが考察
『年収200万円で豊かに暮らす』というテーマがTwitterで話題になっているようです。私は2010年頃からFPとして独立をして活動をしています。
当時はリーマン・ショックの影響から節約がブームとなっていました。経済が厳しくなると、節約がブームとなり、好景気だと投資がブームになることが繰り返されています。
日経平均株価が1万円を割れていた2012年頃までは節約ブームで、「節約疲れ」をする若い女性も多かったのです。私がTVや雑誌の取材をしていた頃は、野草を食べて節約をするなど、かなり無理のある節約も多いと感じました。
しかし、2013年以降は節約よりも投資という流れで、2021年などはファッション誌などでも投資や仮想通貨の記事を見かけるようにまでなりました。好景気の時は節約の記事は反対に少なくなります。
スタグフレーション下では節約しても豊かになれない
しかし、今回はリーマン・ショック後の不況とは事情が違うと感じます。リーマン・ショック後は米国と中国の景気がよく、世界的に景気がよい時代が2019年まで続きました。また、コロナの際にも世界中の政府が予算をつけて大規模な経済刺激策を行いました。
現在はコロナやウクライナ情勢から需給が乱れ、歴史的なインフレーションに世界は見舞われています。日本は海外と比べると、物価の上がり方がマイルドです。しかし、景気がよく物価が上がるディマンドプルインフレではなく、コストが上がる悪いインフレ(コストプッシュインフレ)と言われています。
値上げラッシュでカップヌードル、調味料、菓子、小麦粉、缶詰、飲料、酒、外食など多くの品目で値上げが発表されています。また、もちろん、ガソリン代、電気代などの光熱費なども影響を受けています。
海外旅行に関しては燃油サーチャージ、航空運賃、ホテル代などが上昇しているのに加えて、円安のダメージが大きいです。年収200万円で現在の物価や為替レートでは海外旅行にも行くのがきびしいでしょう。コロナ前であれば格安航空会社なども利用でき、かなり多くの人が海外旅行を楽しむことができました。
年収200万円で豊かな生活ができるか
65歳以上の単身無職世帯の家計収支の平均を見ると、収入は13万6964円、税や社会保険料を引いた後の可処分所得は12万5423円、消費支出は13万3146円で7723円の赤字となっています(家計調査2020年)。
高齢者世帯の生活費の目安は現役時代の7割とも言われています。子育てなども終えて、現役時代と比べるとそれほど支出がかからなくなるからです。つまり、現役時代は逆算すると、月20万円程度の支出は一人当たりかけてもおかしくないはずです。年間だと240万円程度。社会保険料や税金の支払いもあるので年収300万円程度はほしいところです。
もちろん、地方に住み、様々なコストを浮かせることができる環境にある人は年収200万円で豊かに暮らせるかもしれません。しかし、そういう方はネットワークがあって米と野菜は物々交換ができるなどという特殊な事情がある場合もあります。すべての人が同じコストで生活をできるわけではないので注意が必要でしょう。
この30年間、海外と比べると日本の平均賃金がいかに伸びていないかがよく分かります。米国の平均賃金は約800万円で日本は約400万円と約半分です。
韓国にも平均賃金が抜かれたことは話題になりました。しかも、米国や欧州の多くの国では義務教育期間の公立学校の費用が無料などだったりもします。
韓国に抜かれた日本の平均賃金 上がらぬ理由は生産性かそれとも…
このように、日本人がずっと節約を続けていかなければならない理由として、賃金が伸びない、少子高齢化から税金や社会保険料が増え続けるなどのマクロ的な環境要因が大きそうです。やみくもに節約をするだけではなく、選挙に行って自分の意見が反映されるようにするなどの工夫も必要かと感じます。
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