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もっともっと大きくなって大阪に帰ってきたい――真っ白なキャンバス東名阪ツアー大阪公演レポート

宗像明将音楽評論家
真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))

熱狂と狂騒のライヴだった。2019年11月3日、真っ白なキャンバスの初の東名阪ツアー「NOW STEP ON TOUR」の大阪公演が梅田バナナホールで開催された。

2019年10月15日にリリースされたセカンド・シングル「いま踏み出せ夏」が、オリコンでデイリー1位、ウイークリーで7位を記録した「真っ白なキャンバス」(通称『白キャン』)。しかし、彼女たちが大阪でライヴをすることは決して多くなく、単独公演は2018年12月30日の無料ライヴ「Thanks HEISEI. 〜1年間ありがとうございました。来年もよろしくお願いします大感謝祭!〜@大阪」以来、約1年ぶり。ところが蓋を開けてみれば超満員のファンが梅田バナナホールを埋めた。

真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))
真っ白なキャンバス(撮影:真島洸(M.u.D))

「NOW STEP ON TOUR」大阪公演は、2019年10月26日の名古屋公演の最後を飾った楽曲「PART-TIME DREAMER」でスタート。ステージの背景には、全面にVJが投影されていく。

前列左から麦田ひかる、橋本美桜、小野寺梓(撮影:真島洸(M.u.D))
前列左から麦田ひかる、橋本美桜、小野寺梓(撮影:真島洸(M.u.D))

まだ見たことのない大きなステージに歩み始めたい――真っ白なキャンバス東名阪ツアー名古屋公演レポート

この大阪公演に先立つ2019年11月1日には、名古屋公演のハイライト映像も公開された。監督は、白キャンの映像作品を手がけてきたShin Ishihara。そして、音声トラックが「PART-TIME DREAMER」、しかも現在の6人体制でのスタジオ新録音源と思われるものだったことが、大阪公演の1曲目の予兆のようだった。

「PART-TIME DREAMER」のイントロで大歓声が起きると、ファンが一斉にコールや「MIX」と呼ばれる掛け声を入れる。2曲目での「いま踏み出せ夏」でもそれは同様だ。関西弁を話す会場のファンたちにとっては、白キャンを見る機会は多くはなかったはずなのに、MIXやコールをどこに入れるのかを誰もが知っている。3曲目の「清涼飲料水」は、CDにもなっていなければ、白キャンの公式SoundCloudにもないのに、ファンが即座に対応していた。大阪のファンが白キャンを待ち望んでいた証拠だ。

三浦菜々子(撮影:真島洸(M.u.D))
三浦菜々子(撮影:真島洸(M.u.D))

「真っ白なキャンバス初の東名阪ツアー大阪公演ということで、今日のライヴがひとつの素敵な思い出になるように私たちも楽しんでいくので、皆さんも一緒に、私達に負けないぐらい楽しんでいってください」と三浦菜々子が語ると、「Whatever happens, happens.」のイントロが鳴り、想像しうる最大の音量でファン歓声とMIXが梅田バナナホールに響いた。楽曲の間奏に隙間なくMIXが挿入される。小野寺梓が久しぶりに「カモン!」と叫んだ。ステージ上のメンバーのパフォーマンスと、フロアのファンの熱気が完全に呼応していた。「untune」や「白祭」では、シンガロングとともにファンたちが腕をあげる。

麦田ひかる(撮影:真島洸(M.u.D))
麦田ひかる(撮影:真島洸(M.u.D))

冒頭からここまで、会場の熱量は落ちることなく続き、そこから「モノクローム」へ。ソロ・パートから構成されており、サビ終わりのDメロまでユニゾンが登場しない楽曲だ。内省的なこの楽曲をメンバー全員で歌いあげていく。そして、今回のツアーで初披露となった新曲「パーサヴィア」へ。歌い終わると、橋本美桜は「この曲は、どんな形であっても未来に向かって歩くことを歌った曲です」と紹介した。

橋本美桜(撮影:真島洸(M.u.D))
橋本美桜(撮影:真島洸(M.u.D))

後半戦は「アイデンティティ」からスタート。BPM90程度で、決して速くはないこの楽曲が、なぜ異様なほどの昂揚感と盛りあがりをもたらすのかは不思議なほどだ。そして、ユニゾンで歌われる「僕がやりたいことはなに?」という歌詞はクワイアのように響く。「HAPPY HAPPY TOMORROW」ではフロアでサークルモッシュが起き、「闘う門には幸来たる」ではメンバーとファンが一斉にジャンプする。白キャンのダンスとフォーメーションが魅力的な「セルフエスティーム」では、ファンが新たにMIXを入れた。白キャンもフロアも、常に変化している。

小野寺梓(撮影:真島洸(M.u.D))
小野寺梓(撮影:真島洸(M.u.D))

小野寺梓は語った。「大阪は、真っ白なキャンバスが初めて遠征した場所で、東京以外で初めてライヴをした場所なんですけど、そのときからすごくあたたかく迎えてくださって、こうしてたくさんの方に来ていただけるようになって本当に嬉しいです。次、こういう形でまた大阪に来ることがあったら、もっともっと大きくなって帰ってきたいです。2周年に向けて、6人と会場の皆さんでひとつになりましょう」。

鈴木えま(撮影:真島洸(M.u.D))
鈴木えま(撮影:真島洸(M.u.D))

「My fake world」では、シリアスな世界観を表現するメンバーの表情と歌も素晴らしく、さらに白キャンの最大のキラー・チューン「SHOUT」へ。「Begin」「全身全霊」という終盤の流れでは、内省的ながら「未来」を意識した歌詞の楽曲が続いた。

西野千明(撮影:真島洸(M.u.D))
西野千明(撮影:真島洸(M.u.D))

大阪公演は、名古屋公演に比べると盛りあがりの山場がわかりやすかった気がするが、盛りあがる楽曲であろうと聴かせる楽曲であろうと、白キャンの楽曲には常に内向的な「影」があり、それをステージ上のメンバー6人が全力で表現し続ける。ある種のアンビバレントが白キャンにはあり、それが若年層を中心とするファンを熱狂させている光景に、改めて白キャンというグループの特異さを感じることになった。

前列左から麦田ひかる、西野千明、小野寺梓(撮影:真島洸(M.u.D))
前列左から麦田ひかる、西野千明、小野寺梓(撮影:真島洸(M.u.D))

「NOW STEP ON TOUR」のツアー・ファイナルとなる東京公演は、2019年11月17日に新宿BLAZEで開催される。当日は、2017年11月18日の白キャンのお披露目から2周年の節目だ。

左から鈴木えま、橋本美桜、三浦菜々子、小野寺梓、西野千明、麦田ひかる(撮影:真島洸(M.u.D))
左から鈴木えま、橋本美桜、三浦菜々子、小野寺梓、西野千明、麦田ひかる(撮影:真島洸(M.u.D))

<セットリスト>

01.PART-TIME DREAMER

02.いま踏み出せ夏

03.清涼飲料水

04.Whatever happens, happens.

05.untune

06.白祭

07.モノクローム

08.パーサヴィア

09.アイデンティティ

10.HAPPY HAPPY TOMORROW

11.闘う門には幸来たる

12.セルフエスティーム

13.My fake world

14.SHOUT

15.Begin

16.全身全霊

音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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