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まだ見たことのない大きなステージに歩み始めたい――真っ白なキャンバス東名阪ツアー名古屋公演レポート

宗像明将音楽評論家
真っ白なキャンバス(撮影:Shin Ishihara)

2019年10月15日にリリースされたセカンド・シングル「いま踏み出せ夏」が、オリコンでデイリー1位、ウイークリーで7位を記録した「真っ白なキャンバス」(通称『白キャン』)。2020年に向けて、今もっとも注目されているアイドルグループだ。彼女たちの初の東名阪ツアー「NOW STEP ON TOUR」の名古屋公演が、2019年10月26日にNAGOYA ReNY limitedで開催された。

NAGOYA ReNY limitedは、2017年5月にグランドオープンしたばかりのライヴハウス。ゴージャスな照明に加えて、白キャン独自のVJも投入されたステージになった。

真っ白なキャンバス(撮影:Shin Ishihara)
真っ白なキャンバス(撮影:Shin Ishihara)

白キャンのワンマンライヴの1曲目は「アイデンティティ」という楽曲であることが多いが、名古屋公演は2019年3月にリリースされたファースト・シングル「闘う門には幸来たる」でスタート。ファンからは「MIX」と呼ばれる掛け声が激しく湧き起こる。ポップな「HAPPY HAPPY TOMORROW」が続いたと思うと、一転して緊張感のある「untune」へと雰囲気を変えていく。

三浦菜々子(撮影:Shin Ishihara)
三浦菜々子(撮影:Shin Ishihara)

三浦菜々子の「ぶち上がって行こうぜ!」という煽りから、ファンが一斉にメンバーの振りつけを真似る「白祭」、白キャンがダンスとフォーメーションで見る者を魅了する「セルフエスティーム」が続いた。さらに、疾走感に満ちた「清涼飲料水」、先述の最新シングル「いま踏み出せ夏」と、夏の空気を蘇らせるような2曲も披露された。

橋本美桜(撮影:Shin Ishihara)
橋本美桜(撮影:Shin Ishihara)

橋本美桜が「この曲は『どんな形でも未来へ向かうこと』を等身大で歌った曲で、前に進むのが怖い人とか、辛いことがあって踏ん張れない人とか、『自分らしさ』とは何か迷ってる人に聴いてほしいです」と語ってから初披露された新曲が「パーサヴィア」だった。歌詞には「真っ白なキャンバス」というグループ名も出てくる。

真っ白なキャンバスに

未来地図描いた日思い出す

あの日ネタにして笑った目標

今は本気で言うの

出典:真っ白なキャンバス「パーサヴィア」

「パーサヴィア」とは「persevere」の略称だという。その意味は、辛抱する、我慢する、目的を貫く、やり抜く、耐える――。初披露された「パーサヴィア」は、2017年11月に初めてステージに立ってから約2年、さまざまな葛藤を乗り越えてきた白キャンの現在地を歌うかのような楽曲だった。

鈴木えま(撮影:Shin Ishihara)
鈴木えま(撮影:Shin Ishihara)

そこからファンが一気に盛りあがる「Whatever happens, happens.」を披露したかと思うと、メンバーがじっくりと歌いあげる「モノクローム」、内向的な歌詞だがMIXが入りまくる「全身全霊」へと展開。セットリストを作るとき、一般的には盛りあがる楽曲だけで固めたパートを作ったり、聴かせる楽曲だけで固めたパートを作ったりするものだが、そうした構成を排していたのが名古屋公演でもあった。1曲ごとに次々と表情を変えていく。

小野寺梓(撮影:Shin Ishihara)
小野寺梓(撮影:Shin Ishihara)

最後のMCで、メンバーの小野寺梓は語った。「私たちはここまで順調に進んできたわけじゃなくて、紆余曲折あったんですけど、みなさんと一緒にここまで来ることができたので、『NOW STEP ON TOUR』というこのツアータイトルにある通りに、ここから踏み出して、6人でまだ見たことのない大きなステージに歩み始めたいと思います」。

麦田ひかる(撮影:Shin Ishihara)
麦田ひかる(撮影:Shin Ishihara)

そして最後のセクションでは、白キャン最強のキラーチューンである「SHOUT」が披露され、メンバーの歌とファンのMIXが響き合う様相となった。その「SHOUT」前後をシリアスな「Begin」と「My fake world」で挟み、最後は代表曲のひとつである「PART-TIME DREAMER」で締めくくった。

西野千明(撮影:Shin Ishihara)
西野千明(撮影:Shin Ishihara)

「PART-TIME DREAMER」を聴くとき、2019年の夏、日本最大のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL2019」のメインステージ出場を賭けた戦いのために、白キャンが駆け抜けてきた日々を思い出す。結果は惜しくも準優勝で終わったが、今、満員の会場のステージには白キャンが立っている。あの夏の日々は無駄ではなかったのだと感じた名古屋公演だった。

「NOW STEP ON TOUR」の大阪公演は11月3日に梅田バナナホール、東京公演は11月17日に新宿BLAZEで開催される。

真っ白なキャンバス(撮影:Shin Ishihara)
真っ白なキャンバス(撮影:Shin Ishihara)

<セットリスト>

01.闘う門には幸来たる

02.HAPPY HAPPY TOMORROW

03.untune

04.白祭

05.セルフエスティーム

06.清涼飲料水

07.いま踏み出せ夏

08.パーサヴィア

09.Whatever happens, happens.

10.モノクローム

11.全身全霊

12.Begin

13.SHOUT

14.My fake world

15.PART-TIME DREAMER

真っ白なキャンバス(撮影:Shin Ishihara)
真っ白なキャンバス(撮影:Shin Ishihara)
真っ白なキャンバス(撮影:Shin Ishihara)
真っ白なキャンバス(撮影:Shin Ishihara)
音楽評論家

1972年、神奈川県生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『大森靖子ライブクロニクル』(2024年)、『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志氏の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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