独立行政法人福祉医療機構のメルマガ「望ましくない例」から学ぶ助成金申請のポイント
NPOや任意団体の経営運営に民間の「助成金」獲得に期待を寄せ、応募申請に挑戦し続けている団体は少なくないのではないでしょうか。一般企業では馴染みが薄いかもしれませんが、何かしらの事業を行うときその経費の一部を助けてくれる「助成金」という枠組みが日本には無数にあります。行政が出しているものもありますし、民間企業が財団などを設立して広く募集をかけていることもあります。
そのなかでも比較的メジャーな独立行政法人福祉医療機構さんの助成金申請締め切りが近づいています。とても丁寧なメルマガが法人に送られてきたのですが、申請担当者にとっては勉強になるとともに、基本的な留意点を抑えていないからこそ、このような諸注意が記載されるのだなと、”おかしみ”を持って読んでおりました。
私も審査側を務めさせていただくことがあるのですが、実際に下記の「留意点」は留意を促さなければならない応募申請書は多々あります。
締め切りが設定されている以上、その期日までに申請情報が届いていなければなりません。諸事情があるかもしれませんが、期日を越えて書類が届くことも少なくないのでしょう。特にギリギリになってしまうときには、何日の何時までに近くの郵便局に提出すれば「確実に」到着するのかは押さえときたいところです。某財団系助成金担当者から聞いたのは「メールか郵送のみの受付と記載してあっても、間に合わなかったためという理由でオフィスに直接持ち込まれるひともいる」ということです。ルールなのでとお断りするそうですが、目の前にいるものなので粘られたり、(なぜか)お叱りを受けたりと言うこともあったそうです。
学校の試験や大学入試を受けるときに注意事項はきっちり読むようにと、先生方に口をすっぱくして助言されていたことを思い出します。そもそも要領を読んでいないと思われる記載もありますし、「○○してください」という留意事項そのままに「○○」をしていない書類も結構あります。ネット経由だと使わないように指定されている記号などもありますし(ネット申請の審査はしたことがありません)、その場合何らかの影響が採点に反映されていると思います。
提案プレゼンなどをされるビジネスパーソンであれば「基本のき」と思われるかもしれません。しかし、実際には熱意や理念が選考しているもの。具体的な記述がないままに「社会」「地域(コミュニティ)」といった言葉が並ぶだけのものや、「○○と言われている」「××と考えられる」「□□するべきだろう」と、いったい誰が何を言い、考え、誰がやるのか(あなたではないの?)と思わざるを得ないものもあります。
ただ、少しだけ言えるのは、ビジネス上の提案プレゼンなどは上司や先輩が自社のビジネス成功と部下の育成のために指導や助言をくれますし、提案がうまくいかない場合にはフィードバックもあるあと思いますが(ウチはそんなのない、という企業もあるかもしれませんが)、助成金申請は審査結果が「採否」のみであることが大半で、何がダメだったのか。どの部分がうまくなかったのかなど審査側からのフィードバックはありません。ただ落ちたという事実が書面などで来るだけですので、反省しようにもなかなか難しい実情があります。就職活動に近いかもしれません。
積算については上記でも書かせていただいております。特にギリギリで書かれている場合は最後になりがちですが、焦っていることもあるのでしょうか、かなり粗いことも多いです。
特に最近では、採用されたけれども積算予算を10%~50%減額されるというものも少なくありません。助成金は「アテ」にするような性質のものではないかもしれませんが、「採用されたら実効する」くらいで申請をすると「採用された」けれど「予算が減額(実行できないかも・・・)」ということも出てきますので注意が必要です。
NPOや行政などの申請書を拝見することが多いのですが、取り組む活動の社会環境、実情、ソリューション、KPI、広報関係、体制図など記載する内容はかなり経営的視点が必要なものもあります。書きなれていない社員やインターン生、なんとなく時間がありそうなひとに、「ダメ元」で丸投げして大量に申請をさせていても確度は相当低いと思います。
フィードバックがもらえないということも大きいのですが、申請書類の作成は経営者/経営層が「人材育成」の観点から行うことがよいように思います。書かされる側からしたとき、「採否」だけで判断されればフィードバックが効かない以上、何がダメだったのかわからないまま呆然とするしかありません(投入した時間コストを振り返りつつ)。採否はミズモノだったりもしますので、助成金の獲得という目標以外にも、自団体内で目的を持って取り組むことが大切ではないでしょうか。