「予材管理」とは? 目標を絶対達成させる営業シート「予材管理5つ道具」
資産形成の考え方で営業マネジメントする
何をやってもうまくいく人、何をやってもうまくいかない人がいます。何をやってもうまく組織、何をやってもうまくいかない組織があります。うまくいかない人、組織に共通しているのは、「射幸心」。ラクして結果を出したい、すぐに期待通りの成果を手に入れたい、という心情です。しかし、このような思考だと結局はうまくいかないものです。
私は営業コンサルタントです。営業の世界でも、今期の目標、ノルマを達成させるためにはどうすればいいのかと、その都度、場当たり的にやっていると、いつまで経っても結果は出ません。いわゆる「自転車操業」になっていきます。
「予材管理」とは、目標の2倍の「予材(予定材料)」をあらかじめ積み上げ、目標未達成リスクを回避するという営業マネジメント技術です。拙作「絶対達成する部下の育て方」が2011年に世に出たこと、私たちコンサルタントが、年間100回以上のセミナーや講演をコンスタントに続けていることで、かなり広まってきています。
「予材管理」は、営業の商談や案件をマネジメントする、ちょっとしたアイデアではありません。従来からある営業管理の発想を根本的に覆す発想を包含しています。ですから「絶対達成」なのです。
まず「予材管理」の基本思想をお伝えすると、以下の2点になります。
1)リスク分散
2)複利効果
企業として顧客戦略を策定し、その戦略と合致した「予材ポテンシャル」のお客様に対し、継続的に接点を持つことで「リスク分散」します。重要なポイントは、「今期、仕事をもらえるか。受注するか」という観点ではなく、接触する先が「予材ポテンシャル」の基準を満たしているかどうかです。営業個人の勝手な判断や、相手の反応に一喜一憂しないことが「予材管理」の基本的な営業活動だと受け止めてください。
また、ある一定のトップセールスに依存した経営もリスクがあります。偏った成績とならないように、個人の営業スキルという視点からも「リスク分散」を心がけます。営業スキルに左右されない手法の積み重ねで目標達成にこだわるのはそのためです。
「複利効果」とは、運用で得た利益を再投資して利益を生み出すことであり、時間が経過すればするほど雪だるま式に利益(資産)が増えていきます。予材管理も同じような発想で資産形成を目指します。外部環境が変化しても、安定的に目標を達成させなければなりません。ですから、「今期の結果を出すのに、どこへ行けばいいんだ!」と迷うのではなく、「予材ポテンシャル」のあるお客様へ「水まき」活動を続け、「予材資産」を蓄積していきます。短期的なリターンを狙うのではなく、中長期的な視点で資産形成を考えることが重要です。
それでは「予材管理5つ道具」を使いながら、予材管理が実現するまでの手順を解説します。
(※ 予材管理5つ道具の描き方、作成方法は、5枚のシートで営業目標を絶対達成で解説しています。シート(PDF版)のダウンロードサイトも書籍に記載されています。ご参照ください)
(1)予材ポテンシャル分析
1)「予材ポテンシャル分析シート」で、顧客戦略(ターゲットイメージ)に合致したお客様の予材ポテンシャルを分析します。
既存のお客様であれば、過去の取引実績、推移を加味しながら将来のポテンシャルを予測します。ここで「漏れ」が発生すると、今後のプロセスはすべて崩れます。営業パーソンの先入観は捨て、ポテンシャル数値のみを参考にして「種まき」先の選定をします。
(2)KPIカウントシート
2)「KPIカウントシート」で、お客様への訪問回数(接触回数)KPIをカウントします。「予材ポテンシャル分析」で抽出したお客様をすべて並べます。「5つ道具」の中で、このシートが最も重要です。
「KPIインターバル(どれぐらいの間隔で接触するか)」「ミニマムKPIリミットカウント(最低でもいつまで接触を続けるか)を設定し、営業パーソン個人の感情、お客様の表面的な態度に振り回されることなく、淡々と「水まき」を継続します。
(3)予材配線図
3)「予材配線図」は、3C(当社、チャネル、お客様)ごとに登場人物を表現し、どの人物とどの人物がどのようなプロセスにおいて繋がっているか。そしてそれがどのぐらいの「量」に達しているかを表現したものです。
この「配線図」をもとに、営業活動の質(コンバージョン率)をアップさせるKGI(Key Goal Indicator)を設定していきます。
(4)予材管理表
4)「予材管理表」にて、目標の2倍の予材を1年程度積み上げ、「見える化」します。正しく「予材ポテンシャル分析」をし、「KPIカウントシート」によって、「水まき」活動を十分に続けた結果、蓄積された「予材資産」の中で、今期に花が咲きそうなもののみを「白地」「仕掛」「見込」の順に記していきます。
「予材資産」が正しく蓄積されていない状態で「予材管理表」を書くと失敗します。
(5)予材管理ダッシュボード
5)「予材管理ダッシュボード」で現状の行動が最適化しているか、改善されているかを「見える化」します。KGI推移表に記された指標は、「予材配線図」からピックアップしたもの中で、特にキーポイントとなる導線です。
表面的な結果が出ていないと、営業の取り組みが正しいかどうか経営者は判断できません。そこで、右上の「予材資産推移表」に着目します。予材資産が順調に蓄積されていれば、期待リターンが返ってくるのはもうすぐです。
また、「白地」から「仕掛」。「仕掛」から「見込」へのコンバージョン率も、KGIの推移をみることで問題点が明らかになっていきます。
「予材管理」は、営業目標を絶対達成させる、新しいマネジメント手法として脚光を浴びています。しかし、奥が深いことも事実です。マーケットポテンシャルが十分にない事業であれば、従来の「予材」から「予材の種」を作り、それを培養させて、新しい商品や事業を作っていく「商品戦略」にまで発展させることができます。あくまでも目標から逆算して予材を作り上げるという発想で、どのお客様へどのような製品・サービスを提案するかまで考案するのです。すべては「目標未達成」というリスクを回避するためです。
営業も資産形成と同じ。行き当たりばったりで考えるのではなく、ゴールから逆算してコツコツやっていきたいですね。