日本のお茶文化が北欧のカフェに フィンランドの抹茶ラテ現象
4月、フィンランドの首都ヘルシンキにて。
総選挙の取材をしている間にカフェを回っていると、とある「文字」を頻繁に見かけた。
「MATCHA LATTE」
マッチャ・ラテ。
そう、抹茶ラテだ。
私が住んでいるノルウェーでもたまに見かけるが、まだまだ浸透していない。
「どうして、至るところのカフェにあるのだろう? 流行っているの?」
「アルティザン・カフェ」で働くバリスタのカーポ・パーボライネンさんは、こう教えてくれた。
「フィンランド人は、甘いものが大好き。抹茶ラテには砂糖を入れることが多いから、男女問わず人気なんだ。甘すぎるとも、僕は思うけどね」。
「首都だけでだよ。ヘルシンキ以外の街では、こんなに抹茶ラテは見つからない」。
そう言いながら、こだわりの抹茶の粉などを見せてくれた。
確かに、フィンランドのカフェやスーパーを見ていると、甘いケーキやお菓子の種類が豊富で驚いた。ノルウェー国民に比べると、フィンランドの人は糖分の摂取量が多そうだ。
実は、高品質のコーヒーにこだわる北欧スペシャルティコーヒーのカフェには、「メイド・イン・ジャパン」がひっそりと隠れている。
バリスタの皆さんが愛用している器具は、大抵は日本製のHARIO(ハリオ)か、Kalita(カリタ)だ。
そして、今ヘルシンキのカフェでは、メニューに「マッチャラテ」という日本語が躍るようになった。
なぜ、抹茶ラテが流行るようになったか?
ぱっと思いついた理由は、スターバックスとエスプレッソハウスの進出だ。
エスプレッソハウスというのは、スウェーデン発のコーヒーチェーン店で、北欧各地に店舗を構える。
ブラックコーヒーやカフェラテ以外のコーヒーメニューに加え、フラペチーノなどの新しいドリンク文化が広まったのには、彼らの役割が大きい。
さて、肝心の味はどうか?
「なんだか、薄いぞ」というのが私の感想。
日本での抹茶ラテはこんな感じだろうか?もうちょっと抹茶の味を濃くしてくれると、さらにいい感じだ。
4月にヘルシンキ・コーヒー・フェスティバルを取材した際、自分が耳にする音や目にする色で、同じコーヒーでも味が違うように感じるという実験をした。
そのことを思い出し、鼻をつまんで、ヘルシンキの抹茶ラテを飲んでみた。
泡の上にかかった抹茶の粉の香りがないと、ホットミルクを飲んでいるようだった。
まぁ、これも海外を旅している時の醍醐味か。
5月、ヘルシンキをEU議会選の取材で再び訪れた。カフェ「ポーリグ・クルマ」で、抹茶ラテを淹れてくれたのはソニアさん。
「オートミルクと緑茶のブレンドを好む人が多いので、抹茶ラテを健康的なドリンクだと思っている人が多い」。
「私たちのカフェでは砂糖を入れないので、甘い飲み物を好む若い人はチャイラテを代わりに注文します」。
「10人中1人は抹茶ラテを注文。これからもブームは続くと思います」。
「抹茶」という言葉がそもそも浸透していなかった数年前を考えると、フィンランドの人が「マッチャラテ」、「マッチャラテ」とカフェで注文している光景には、しみじみとしたものを感じる。
コーヒーやカフェ文化にこれだけこだわりが強い人々だ。いつかメニューには、「マッチャ」が登場して、抹茶を点てる人が現れるかもしれない。
Photo&Text: Asaki Abumi