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「いじめ防止」と「いじめ解決」の話をゴッチャに考えてはいけません。

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

今日は、「いじめ防止いじめ解決」というテーマでお話したいと思います。

ちなみに、私(竹内成彦)は、2002年の10月から、2009年の3月まで、6年半、小・中学校のスクールカウンセラーをやっていたことがあります。学校相談室に寄せられるご相談は、不登校についで、いじめが多かったです。

はじめに、
文部科学省の「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」について、ご紹介させていただきたいと思います。

では、記します。
いじめの防止等は、全ての学校・教職員が自らの問題として切実に受け止め、徹底して取り組むべき重要な課題である。いじめをなくすため、まずは、日頃から、個に応じたわかりやすい授業を行うとともに、深い児童生徒理解に立ち、生徒指導の充実を図り、児童生徒が楽しく学びつつ、いきいきとした学校生活を送れるようにしていくことが重要である。

また、いじめを含め、児童生徒の様々な問題行動等への対応については、早期発見・早期対応を旨とした対応の充実を図る必要があり、関係機関との連携を図りつつ、問題を抱える児童生徒一人一人に応じた指導・支援を、積極的に進めていく必要がある。

以上を踏まえつつ、特にいじめ問題への対応については、下記1の基本的認識に基づき、下記2のポイントについて、遺漏(いろう)なきを期しつつ、これを推進する必要がある。

では、下記1、「いじめ問題に関する基本的認識」のご紹介です。
1.「弱いものをいじめることは人間として絶対に許されない」との強い認識を持つこと。
2.いじめられている子どもの立場に立った親身の指導を行うこと。
3.いじめは家庭教育の在り方に大きな関わりを有していること。
4.いじめの問題は、教師の児童生徒観や指導の在り方が問われる問題であること。
5.家庭・学校・地域社会など全ての関係者がそれぞれの役割を果たし、一体となって真剣に取り組むことが必要であること。

以上です。

続いて、下記2のポイントについてのご紹介です。

1.学校における取組の充実、ですが、これは5つあって、
① 実効性ある指導体制の確立
② 適切な教育指導
③ いじめの早期発見・早期対応
④ いじめを受けた児童生徒へのケアと弾力的な対応
⑤ 家庭・地域社会との連携

です。

続いて、

2.教育委員会における取組の充実、ですが、これも5つあって、

① 学校の取組への支援と取組状況の点検
② 効果的な教員研修の実施
③ 組織体制・相談体制の充実
④ 深刻ないじめへの対応
⑤ 家庭教育に対する支援

です。

さて、今言ったことを、細かく説明しようと思えば、いくらでも書くことができるのですが、このヤフーニュース記事内では、膨大な量になるのでやめておきます。興味がある方は、どうぞ、文部科学省のホームページ「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」をご覧ください。

今私がお話したように、これだけ、文部科学省が力を入れているにも関わらず、いじめが減らないというのが、哀しきかな、我が国の現状です。

私は、いじめに関しては、不登校と同じく、「防止解決分けて考えることが大切だ」と思っています。防火と消火が違うように、いじめの防止といじめの解決は違う、ということです。

消防士で、防火と消火の違いをわかってらっしゃらない方は、ひとりもいないのですが、いじめの専門家と称する人の中にも、いじめ防止といじめ解決の違いをわかってらっしゃらない方は、意外に大勢います。

たとえば、「いじめられる側にも原因はある」という考え方がありますが、これはいじめ解決には、何の役にも立たない意見です。いじめられた人やいじめられた子どもに向かって、石を投げてどうするんですか? いじめたほうの肩を持ってどうするんですか? こういう、「いじめられる側にも原因はある」という意見は、いじめ解決には、何の役にも立たないということを、どうぞ皆さんは知っておいてください。

けれど、「いじめられる側にも原因はある」という意見は、いじめ防止には、時に役に立つ考え方です。私は、心理カウンセラーであると共に、2人の子どもを持つ父親でもあるのですが、自分の子どもが幼稚園や小学校にあがるとき、我が子がいじめっ子にもいじめられっ子にもならないことを、祈りました。特に、いじめられっ子にはならないよう、強く祈りました。

と言うのは、我が子がいじめっ子になった場合は、「バカ野郎。くっだらないことやってんじゃねえぞ。今度やったら許さないからな!」と叱り飛ばすことが出来ます。けれど、我が子がいじめられっ子になった場合は、途方に暮れると思うのです。「バカ野郎。いじめられて泣いてんじゃねえぞ。やられたらやり返して来いよ!」なんてこと、とっても言えないと思うからです。

だから私は、たとえばですが、自分の子どもが、極端な肥満児にならないよう、極端なやせお君にならないよう、気をつけて育てました。ブクブクに太っていたり、ガリガリに痩せていると、健康にも良くないし、それだけでいじめの対象になることが多いのを、私は知っていたからです。

もちろん、太っているからと言って、痩せているからと言って、いじめていい訳はありません。人をいじめるのは悪いことであり、どんなときも、いじめは、いじめる側が悪いに決まっています。

けれど、我が子が、多くの子と違っている体型をしていると、人からいじめられやすいという事実は残ります。哀しきかな、人間には、多くの人とちょっと違うという、ただそれだけの理由で、その人を排除しようとする働きが生じてしまう習性があるからです。

だから、私は、自分の子どもを、肥満児にも痩身(そうしん)児にもしないよう、気をつけて育てた。そういう訳です。

もう1度言います。肥満が悪いわけでも痩身(そうしん)が悪いわけでもありません。いじめは、いじめる側が悪いに決まっています。私が言いたいのは、肥満や痩身(そうしん)など、人と違っていると、それだけで、いじめのリスク(危険)を負うということです。

さてここで、せっかくの機会ですから、どんな子がいじめられやすいか、皆さんにご紹介したいと思います。

極端に太っている子、極端に痩せている子、不潔な子、グズグズしてのろまな子、自分勝手な子、意思表示のできない子、オドオドして弱そうな子、運動が苦手な子、カッコ悪い子、いつも先生に褒められようとしている子、勉強の出来ない子、スグに目立とうとする子、冗談の通じない子、口が軽い子、嘘つきな子、暗くて陰湿な雰囲気を持っている子。

こういう子は、いじめられやすいです。
よって、こういう特徴を持っている子は、その特徴を改善させた方がいいと、私は思います。

学校の先生は、どのような子がいじめられやすいか、長年の経験から、概ね判断できるかと思います。よって、いじめられやすい要因を持っている子に対しては、どうぞ注意深く見守っていってあげてください。そして、我が子がいじめられやすい要因を持っていると感じる親御さんは、自分のお子さんの性格および特徴を、積極的に矯正していってあげてください。

私は、「小学校でも中学校でもいじめられていた。高校に入ってもいじめられていた。社会人になった今もいじめられている」という人に、幾人も会ったことがあります。そして、そういう人は、残念ながら、今言ったような、いじめられやすい子の特徴を、例外なく、ほとんど全員持っていました。

私が、「親は、自分の子どもの好ましくない性格や特徴は、なるべく矯正していったほうがいい」というのは、上記の理由からです。自分の子どもがいじめの対象になるなんて、哀し過ぎるじゃないですか。

「いや、これは、我が子の個性だ。いじめは、いじめる側が悪いのであって、我が子には、何の落ち度もない。だから矯正する必要などない」とおっしゃる方については、私から申し上げることは何もありません。どうぞ、いじめられるリスク(危険)を持ちながら、学校に行かせ続けるか不登校にさせてください。私もあなたと同じ、いいめはいじめる側に原因があり、いじめる側が悪いという意見には大賛成ですから…。

くり返しになりますが、「いじめられる側にも原因はある」という考えは、いじめが起こった後では、何の役にも立ちません。けれど、いじめが起こる前には、いくらかは役に立つこともあるということです。

正確に言うと、「いじめは、いじめられる側にも、原因がある時がある」というものです。そして、今言った言葉は、いじめの解決には役に立たないが、いじめ防止の観点からは、役に立つこともあるということです。

さて、前回の記事で、私は、いじめが起こる原因についてお話しました。
いじめは道徳論だけではなくなりません。正論でいじめがなくなれば、そんないいことはないのですが、そう簡単にはいかない…ということです。

それは、「煙草は身体に悪いからやめておけ」と言っても、煙草を吸う人があとを絶たないのと同じ理由です。大の大人でもやめられないわけですから、大人より幼い子どもが、自分の本能に逆らってまでして、いじめをやめられるわけはありません。

ちなみに、私のカウンセリングルームは、名古屋市内にある金山駅近くにあります。金山駅付近は、何年も前から禁煙区域に指定されています。歩道には、禁煙とデカデカと書かれてあります。でも昨日も今日も、その禁煙区域で煙草を吸っている人がいます。ざまあねえなという感じです。

話は戻ります。「人ってものは、放っておけば自然に仲良くなる。いじめなど起こらない」というのは幻想です。人は、放っておけば、本能に近いパワー欲求に従って、つい、強いものが弱い者をいじめてしまう、そんな情けない生き物なのです。

よって、いじめをなくすためには、ひとりひとりが理性を失うことなく、他者の痛みを感じる共感力を持ち続ける必要があります。そのためには、ストレスを溜めないこと、いじめに変わる楽しい気晴らしを見つけること、それが大切です。

具体的な、いじめをなくす方法としては、学校の先生には、クラスの雰囲気を良くするスキル(訓練や学習によって獲得した能力)を持って欲しいと思います。そして、そのスキルは、構成的グループエンカウンターを学ぶことによって、獲得することが出来ます。

続いて、いじめが起こった場合ですが、まずはいじめられている子の命を守ることです。いじめられている子の尊厳を守ることです。それをいの一番にしてあげてください。間違っても、「いじめられているお前にも、何かしら原因があるのではないか」等と言わないでください。今言ったことは、いじめの防止と違って、いじめの解決には非常に大切な考え方です。

そして、いじめている側の話にも耳を傾けてあげてください。
私はスクールカウンセラーを6年半やった経験がありますが、いじめている子も、往々にして、何かしらストレスを抱えていたり、心を傷つけているものです。もう2度と、くだらないいじめなどをすることのないよう、しっかりいじめをしてしまった子の心のケアもしていってください。
と同時に、いじめをした子に関しては、いじめ以外のストレス解消の術も、根気よく教えていってあげてください。

長々と書いてしまいました。すみません。

結論として、
1.いじめをなくすためには、いじめの防止といじめの解決を分けて考えることです。
2.いじめられないよう親自身が、子ども自身が、十分に気をつけることです。
3.いじめをしないよう、日頃からストレス解消に励み、気分転換を図る術を持つことです。今言ったことは、非常に重要です。どうやったらストレスを溜め込まないようになるか? どうしたら誰をも傷つけることなく、ストレスを解消することが出来るか? どうぞ真剣にお考え下さい。
4.学校の先生は、構成的グループエンカウンターを学び、クラスの雰囲気を常に良いものにしておくことです。
5.いじめが起きたらいじめられた子の命を守ることです。そして、いじめた子の気持ちも思いやることです。

以上です。

最後に、前回の記事でも言いましたが、私はいつも、自分がいじめの加害者にも被害者にも傍観者にもならないよう気をつけています。それは、いつなんどき、自分がいじめの加害者や被害者や傍観者になるかもしれないと思うからです。
この記事をご覧の皆さんには、私の生き方を真似しろとは言いませんが、何かしら参考にしていただけたらと思います。

というわけで、今日は以上です。
最後に私は、「人間の本性は愛である」と大きな声で言いたいです。

今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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