なぜレアルはCLの舞台で強いのか?ヴィニシウスの“覚醒”と中長期スパンの方針の結実。
欧州の舞台で、強さが際立っている。
今季のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント一回戦で、レアル・マドリーはリヴァプールと激突した。注目の一戦においては、マドリーがアウェーのファーストレグで5−2と先勝している。
「我々が毎週、レアル・マドリーと試合を行わなくていいというのは、神に感謝しなければいけない。彼らは決して相手のミスを見逃さない。そういうのを許してくれないんだ」
「彼らを前に、ディフェンスをするのは非常に難しい。プレミアリーグの試合より遙かに困難だ。(セカンドレグでは)リスクを冒す必要がある。だが、彼らはカウンターに強いチームだ」
このように語ったのは、リヴァプールを率いるユルゲン・クロップ監督である。
■覚醒したヴィニシウス
リヴァプールとの試合では、ヴィニシウス・ジュニオールが2得点と活躍した。
マドリーは今季、カリム・ベンゼマが度重なる負傷で苦しめられてきた。そのような状況で、攻撃を牽引してきたのがヴィニシウスだ。
ヴィニシウスは今季ここまでリーガエスパニョーラで23試合に出場して7得点4アシストをマーク。また、チャンピオンズリーグにおいては、7試合6得点2アシストを記録している。
マドリーがヴィニシウスの獲得に動いたのは、2017年夏だ。 フラメンゴでプレーしていた当時16歳のアタッカーを引き入れるため、移籍金4500万ユーロ(約64億円)を準備。2018年夏に正式加入する契約で、取引が成立した。
ヴィニシウスに関しては、バルセロナ、パリ・サンジェルマン、マンチェスター・シティと複数クラブが興味を抱いていた。そのなかで、マドリーが確保に成功した。
マドリーは2011年にネイマール、2016年にガブリエウ・ジェズスの獲得を目指していたが、その2選手を手中に収めることはできなかった。つまり、マドリーにとって、「念願」のヴィニシウス獲得だった。
■クラブの補強方針
マドリーはヴィニシウスの獲得を重要視していた。それは「若手推進」という新たな補強方針を据えるためだった。
「レアル・マドリー」と言えば、銀河系軍団であり、金満クラブというイメージがあるかもしれない。事実、第一次フロレンティーノ・ペレス政権では、ジネディーヌ・ジダン、ルイス・フィーゴ、ロナウド、マイケル・オーウェン、デイビッド・ベッカムらの獲得に高額な移籍金が費やされた。
だが第二次ペレス政権においては変化が訪れている。
マドリーは近年、ガレス・ベイル(移籍金1億ユーロ/2013年夏加入)、エデン・アザール(移籍金1億1500万ユーロ/2019年夏加入)を除いて、1億ユーロ以上の移籍金で選手を獲得していない。
一方、若い選手への先行投資を惜しんではいない。前述したヴィニシウスを筆頭に、ロドリゴ・ゴエス(移籍金4500万ユーロ)、 エデル・ミリトン(移籍金5000万ユーロ)と21歳以下の選手を獲得するために決して安くない移籍金を用意してきた。
ただ、問題がないわけではない。若い選手を重宝すれば、年齢を重ねた選手が軽視される可能性がある。しかし、そこはカルロ・アンチェロッティ監督がうまくマネジメントしている。
「(ルカ・)モドリッチや(トニ・)クロースのような選手に、何かを説明する必要はない。彼らは試合に出ていない時、その理由を理解している。そのテーマについては、シーズンのはじめに話していた」とはアンチェロッティ監督の言葉だ。
「現在、このチームは転換期にある。全員がそれを理解しなければいけない。ベテランの選手の理解、若い選手の忍耐、そういうものがあって、はじめて成功を手にすることができるんだ」
マドリーは転換期にある。世代交代が、推し進められている。
「ヴィニシウス、特殊なレアル・マドリーの王様」(スペイン『エル・パイス』紙)という見出しがリヴァプール戦後にスペインメディアで踊った。敵地アンフィールドでの劇的勝利で、ヴィニシウスの活躍は象徴的だった。
ただ、それは一朝一夕で成し遂げられるものではない。昨季の逆転に次ぐ逆転からのビッグイヤー獲得を含め、中長期スパンのクラブの方針が実ってきている。