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日本代表の優等生ピーター・ラブスカフニ、「対母国、どう?」と聞かれて…。【ラグビーあの日の一問一答】

向風見也ラグビーライター
「自分の役割と責任は何か、何を求められているかを意識してきました」(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 ラグビーワールドカップ日本大会で初めて8強入りした日本代表にあって、5試合中2試合でゲーム主将を務めたのがピーター・ラブスカフニ。身長189センチ、体重106キロの31歳だ。

 この国での代表資格を得たのは大会開催年になってからだが、それ以前からきょうだいチームのサンウルブズなどで存在感を発揮。オープンサイドフランカーとして地上戦で身体を張るだけでなく、団結力の問われる練習を率先して仕切るなどリーダーシップも際立っていた。

 その人柄について、チームに深く携わるスタッフの1人はこんな言い回しで表現した。

「こちらが恥ずかしくなってしまうくらいちゃんとしている」

 本稿では、録音機の回っていない私的な空間でも誠実なラブスカフニの談話を紹介する。発言したのは2019年10月19日。日本大会の予選プールを4戦全勝で通過し、準々決勝で母国の南アフリカ代表とぶつかる前日のことだ。自国と戦う心境を聞かれた際のその答えは当時、ファンの共感を呼んだ。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――明日の試合、ポイントは。

「重要なのはこのチームがどこからきているのか。私たちは様々な背景のある場所から集合し、『ONE TEAM』としてワンゴールに向かっている。ひとつの考え方を持つことが重要です。今週の準備は先週までと異なっていません、試合をする準備が整っていて、成功するためにも計画通りにディテールを推し進めるということにこだわっています。今週、皆、燃えていて、早く試合がしたい気持ちです」

――母国の南アフリカ代表と戦いますが。

「かつてもこの答えを申し上げたことがあります。私は南アフリカ国民を愛しています。そして私は日本国民を、ここにいる皆さんのことを愛しています。日本は私の新しい故郷です。ここは私のチームです。すでに立てた目標(ワールドカップ8強入り)は達成しましたが、目標に向かってきた歩みを止めるつもりはありません。これまでやって来たことを、やり続ける。お互いのために戦うことが大事です」

 7歳の頃から楕円球を追い、グレイカレッジ高校卒業後に地元ブルズのジュニアチームとサインする。

 なかなか正規の契約には至らずフリーステート大で会計などを学んでいたが、ブルズのライバルであるチーターズに声をかけられた。これがプロ生活の始まりで、2016年に来日してクボタの一員となると、ワールドカップ開催国の代表として歴史的偉業を成し遂げた。

 その延長線上に、「新しい故郷」の一員としての母国との対戦があったのである。別な場所ではこうも語った。

「確かなのは、どんな環境であっても、自分ができることを一生懸命やる、努力することが何よりも大事だと思います。自分のなかでよく言い聞かせていたのは、なぜか、ということです。なぜ、これ(チームで課される役割など)をやるのか。その答えを知れば、自分のなかでも理解でき、遂行することで、結果、成果が得られるという考えでやってきました」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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