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ザ・ストラングラーズが来日公演中。ライヴ・レビュー/2019年11月3日(日)東京・渋谷WWW

山崎智之音楽ライター
The Stranglers / photo by David Boni

2019年11月、ザ・ストラングラーズが来日公演を行っている。

1970年代の初期UKパンク・ロックを代表するバンドのひとつとして愛され続けるザ・ストラングラーズは同時に、“パンク・ロック”というスタイルの多様性を象徴する存在でもある。

鋭いエッジのあるロックにヨーロピアンな詩情を加味したメロディは、1977年のレコード・デビューから異彩を放っていた。彼らのアプローチはセックス・ピストルズのロックンロールな無軌道、ザ・クラッシュの政治的なメッセージ、ザ・ダムドのヴィジュアル的なインパクトともまったく違ったものだった。それはもはやパンク・ロックという枠組みすら超えるものだった。パンク直撃世代に間に合わなかった筆者(山崎)にとってザ・ストラングラーズ初体験は1982年の「ストレンジ・リトル・ガール」だったが、この曲と少し後に発表されたザ・トイ・ドールズの「ネリーさんだ象」が同じ“パンク・ロック”で括られるのは、なんだか納得の行かないことだった。

ジャン=ジャック・バーネル(ベース、ヴォーカル)、デイヴ・グリーンフィールド(キーボード)と共に、そのザ・トイ・ドールズに在籍したこともあるバズ・ウォーン(ギター、ヴォーカル)が2000年にザ・ストラングラーズに加入、同じステージに立っている。人生とは、何とも不思議なものである。

『オール・ライヴ』ジャケット(ソニーミュージック/現在発売中)
『オール・ライヴ』ジャケット(ソニーミュージック/現在発売中)

1979年2月と12月に二度の来日公演を行って以来、ザ・ストラングラーズは何度も日本でライヴを行ってきたが、今回は2007年の“サマーソニック”そして2010年の“パンクスプリング”以来となる公演。単独来日としては1992年12月から27年ぶりとなる。

東京3デイズの初日、11月3日のステージは、「トイラー・オン・ザ・シー」からスタート。「グリップ」「ナイスン・スリージー」「ゴールデン・ブラウン」「ピーチズ」など、ザ・ストラングラーズ・クラシックスが次から次へと飛び出す。どの曲もイントロだけで大きな声援が湧き上がり、「オールウェイズ・ザ・サン」では会場が一体となってコーラスを熱唱した。

熱気でヒートアップする会場に、ジャン=ジャックはMCで「キョウハ、アツイネ」と語りかけるが、それは温度の“暑い”と観衆のノリが“熱い”のダブルミーニングだったのかも知れない。

「あまり日本語は話せないんだ。でも、この言葉は知っている」というMCでひと呼吸を置いて、彼は「押忍ッ!」と叫ぶ。1978年に初めて日本を訪れたのはライヴでなく空手の修行のためで、現在では士道館ロンドン支部長である彼ならではの、丹田に気を込めたMCであった。

翌4日のライヴではセットリストを変えて、1曲目から「ザ・レイヴン」を披露。初日に「アウトサイド・トーキョー」、2日目には「デス・アンド・ナイト・アンド・ブラッド」と、日本に所縁のあるナンバーをプレイしたのは、日本のファンへのサービスだろうか。

5日(火)東京・渋谷TSUTAYA O-WESTでの最終公演も曲目を変えてくることが予想される。3日・4日のチケットはソールドアウトとなったが、5日は若干枚数の当日券チケットが残されているという。今回の3デイズがどんなフィナーレを迎えるか、期待が高まる。

この日、約1時間半のショーのラストを「ノー・モア・ヒーローズ」で締め括った彼らだが、ヒーロー不在の時代を憂いたこの曲に対して、ザ・ストラングラーズがUKパンク・ロックのヒーローズであり続けることを証明したステージだった。

The Stranglers / photo by Derek D'Souza
The Stranglers / photo by Derek D'Souza

【THE STRANGLERS LIVE IN JAPAN 2019】

- 11月3日(日)東京・渋谷WWW

- 11月4日(月)東京・渋谷WWW

- 11月5日(火)東京・渋谷TSUTAYA O-WEST

open 19:00 / start 19:30

Avandam.jp

https://avandam.jp/

H.I.P.

https://www.hipjpn.co.jp/archives/53589

【ザ・ストラングラーズ、エピック・イヤーズ5タイトル紙ジャケ発売/完全生産限定盤】

- 黒豹

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- オーラル・スカルプチャー

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- 夢現

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- オール・ライヴ

SICP-6228

- 10

SICP-6229

ストラングラーズ/ソニーミュージック オフィシャルサイト

https://www.sonymusic.co.jp/artist/TheStranglers/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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