【秋田県横手市】漫画「ゲゲゲの鬼太郎」にも登場?令和に残る明治時代の洋館『旧日新館』とは?
明治35年に完成!全国的にも珍しい明治期の木造洋館が横手に?
漫画・ゲゲゲの鬼太郎に、横手市の古い洋館が描かれている。
先日、このような記事が地元の新聞に掲載された。「ゲゲゲの鬼太郎」といえば、言わずと知れた水木しげる先生の代表作だが、その歴史は深く連載が始まったのは今から58年前の1965年。当時のタイトルは「墓場の鬼太郎」だ。
だがそんな国民的漫画に、なぜ横手市の建物が描かれているのか。その真意を探るため私は車を走らせた。急勾配な坂を上り、辿りついた場所は横手市城南町である。
令和の横手に吹く、明治の風。そこにはまるでタイムスリップしたかのような風景が広がっていた。明治期の木造洋館が現存している例は全国的にも珍しく、秋田県内に唯一残るのがこの『旧日新館』だ。
秋田県の指定有形文化財に登録されているこの歴史的な建物だが、それと同時に現役の個人宅でもある。つまり「今も普通に人が生活している家」なのだが、水曜日のみ一部の部屋が無料公開されている。
始まりはアメリカ人教師の小さなお宿?歴史的建築物から見えてくる風景とは?
『旧日新館』が完成したのは、今から121年前の明治35年。元々は横手中学校(現在の横手高校)のアメリカ人教師のための宿として建設され、その後は昭和30年まで海外から赴任した英語教師向けの住宅として使用された。
その歴史ある洋館の扉を開けると、現在の所有者さんが快く迎えてくれた。『旧日新館』は外国人として最後の住民となった英語教師が、当時お手伝いさんだった鶴岡タカさんに譲渡。現在は姪にあたる鶴岡功子さんが、この貴重な建物を守り続けている。
現在『旧日新館』は、1階の一部と2階が見学可能なスペースとなっている。玄関から向かって左の部屋にはこの建物に関する貴重な資料や写真が並び、1階奥には現代ではなかなかお目にかかれない明治期の洋風トイレも現存している。
2階は現在展示室や応接室として使用されている。大正期のミシンや、オリバー社製としては最も初期型にあたるタイプライターなども展示。2階に足を運ぶと、当時の生活風景がさらに色濃く見えてくる。
その噂は本当だった?「墓場の鬼太郎」に旧日新館とそっくりな建物が登場!
『旧日新館』の1階に、古びた一冊の漫画本が置いてある。タイトルは「墓場の鬼太郎」。国民的アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」の前身にあたる漫画だ。その漫画の102ページ目を覗いてみると、見覚えのある建物が描かれている。間違いない。これは『旧日新館』だ。
……って、ごめん。ここで該当ページの写真を挿入する予定だったが、水木プロから掲載許可が下りなかった。
ちなみに「墓場の鬼太郎」に『旧日新館』と類似した建物が初登場したのは1967年。実は同時期にこの場所を訪れ、建物を隅々まで観察し写真を撮影していった見学者がいたという。今となってはもちろん調べる術はないが、その見学者は水木しげるさんのアシスタントだったかもしれない。
「高齢になって大変だけど、体が動くうちは一般公開を続けたい」
そう語ってくれたのは現在の所有者である鶴岡さんだ。実は私と同じタイミングで『旧日新館』を訪れたひとがいたが、その方は東京から足を運んだという。この建物を通して繋がる多くの出会い。現在『旧日新館』は鶴岡さんと訪問者の交流の場にもなっている。
「子供たちに、当時の文化を残したい」
所有者さんのそんな想いと共に、この『旧日新館』は次世代にも語り継がれる。あの国民的漫画「ゲゲゲの鬼太郎」のように。
旧日新館
所在地:秋田県横手市城南町7-1
開館日時:毎週水曜日 午前9時~午後4時
見学料:無料
問合せ先:0182-32-2403(横手市教育委員会教育総務部文化財保護課)、0182-32-0503(所有者宅)