【南海トラフ地震|兵庫県被害想定:中播磨地域】津波が襲うのは姫路市のみ!だが震度5強の揺れが襲う
南海トラフ地震による兵庫県内の被害想定は、2014年(平成26年)6月に公表した内容が最新です。
そのため、県内でどのような災害が起きるのか、知らない方や忘れてしまった方も多いはず。
そこで、地域ごとの被害想定のまとめを、11年ぶりに改めて紹介しています。
今回は「姫路市・市川町・福崎町・神河町」の、1市3町で構成される『中播磨地域の被害想定のまとめ』を紹介します。
姫路市については前回単独で公開していますが、詳しい震度分布図の掲載がなかったため、今回改めての紹介です。
今回は4自治体の紹介になるため、ボリュームが多くなっています。ご自身が関係する自治体だけでもご覧頂けると幸いです。
地震は姫路市で震度6強!ほか3町では震度5強が予想される
南海トラフ地震では姫路市において、震度6強の揺れが3.2%の地域を襲います。そのほかの3町では「最大震度は5強」となりますが、いずれも油断はできません。
▼1市3町の震度分府率一覧
- 震度 |6強| 6弱 | 5強 |5弱以下
- 姫路市|3.2|19.6|60.5|16.7
- 市川町|0.0| 0.0|68.3|31.7
- 福崎町|0.0| 0.0|95.3| 4.7
- 神河町|0.0| 0.0| 8.3|91.7
▼1市3町の震度分布率グラフ
このグラフは「姫路市・市川町・福崎町・神河町」の1市3町における、震度別分布率をまとめたものです。
最大震度6強の揺れが襲うのは、姫路市内の3.2%のエリアで、神河町を除く地域では、震度5強の揺れが襲う面積が最も多いです。
神河町は中播磨地域で最も北に位置するエリアであり、町内の約92%に震度5弱の揺れが起こります。
ここで気象庁が公開している「震度階級関連解説表」から、人が感じるそれぞれの揺れの状況を紹介しておきましょう。
震度5弱:多くの人が、身の安全を図ろうとする。一部の人は、行動に支障を感じる。
震度5強:非常な恐怖を感じる。多くの人が、行動に支障を感じる。
震度6弱:立っていることが困難になる。
震度6強:立っていることができず、はわないと動くことができない。
▼中播磨地域、1市3町の位置関係
中播磨地域の1市3町の位置関係は、上記のとおりです。大部分を姫路市が占めており、南の家島諸島も含みます。
先の震度分布と姫路市を除く各町の位置を関連づけると、震度5強の揺れの範囲は「福崎町:95.3%⇒市川町:68.3%⇒神河町:8.3%」と、北に行くほど揺れが小さくなっていることが分かります。
姫路市の震度分布図|沿岸部の3.2%で震度6強
姫路市の震度分布図を見ると、沿岸部に集中して震度6強の揺れが襲います。
そして南部地域の約20%で震度6弱となり、世界遺産姫路城を含む市街地から北部にかけて約68%が震度5弱の予想。
北部地域では揺れが小さくなりますが、それでも震度5弱の揺れが襲います。諸島でも一部地域に限られますが、震度6強の揺れが予測されています。
姫路市の沿岸部は工場地帯となっているため、地震による産業への影響が懸念されます。
市川町の震度分布図|約68%が震度5強
市川町の震度分布図では、約68%の地域に震度5強の揺れが襲います。
市川町は中山間地域が多く、地震の揺れによる土砂災害が心配です。後述する人的被害の予想にて、土砂災害による影響を確認してみましょう。
福崎町の震度分布図|約95%が震度5強
福崎町の震度分布図を見ると、市川町に隣接する一部の約5%で最大震度5弱の予想です。
それ以外のほぼ町内全域で、震度5強の揺れとなります。福崎町も中山間地域が多いため、後ほど土砂災害による影響を確認したいと思います。
神河町の震度分布図|町内ほぼ全域が震度5弱
神河町は地形がハートの形をしていることと、兵庫県のほぼ中央に位置することから「ハート型のまち」のキャッチフレーズが定着しています。
姫路市の沿岸部から約40km離れていますが、この地域でも南海トラフ地震が起きれば最大震度5弱の揺れが、町内のほぼ全域で起こります。
津波の影響は姫路市のみ!最大2.5mの高さの波が最短120分で到達
中播磨地域では津波の影響を受けるのは、海に面している姫路市のみで、姫路市には最大2.5mの高さの波が、最短120分で到達する予想です。
浸水深50cm以下の被害を含めると、全体で276ヘクタールが浸水します。
▼姫路市での最高津波高と最短到達時間
・姫路市:2.5m⇒最短120分
▼姫路市における津波による浸水面積グラフ
このグラフは「防潮門扉等一部閉鎖、津波が堤防を越流した場合破堤あり」の条件で、算出された予想を採用したものです。
被害想定では「浸水深1m以上の区域に残っている人は津波に巻き込まれればほとんどが死亡すると考えられる」とされていることから、浸水深1m以上に当たる32ヘクタールの中にいる方は、地震発生から120分以内に安全な地域へ避難することが重要です。
姫路市の浸水予測図
姫路市の浸水予測図を確認すると、沿岸部への浸水がほとんど見当たりません。また、海に面している家島諸島においても1m以上の浸水がなく、意外にも内陸部での浸水が目立ちます。
これは、津波が川を遡上して地震の揺れによって決壊した堤防から、越水して浸水被害を起こすことを意味しています。
そのため、自宅が浸水地域に当たらないか兵庫県CGハザードマップで確認することをおすすめします。
被害想定では、浸水深が2m以上の地域も「微小」と予測されているため、しっかり確認しておきましょう。
人的被害(死者)は姫路市のみ!3町での死者数はゼロの予想
人的被害(死者)は中播磨地域では、姫路市のみです。ほかの3町でも地震による揺れは震度5弱~5強となりますが、揺れによる死者は発生しない予想となっています。
姫路市の死者数グラフ
被害想定では「冬5時」「夏12時」「冬18時」の、3パターンの発災時刻で被害状況を予想しています。
姫路市の死者数を確認すると「冬18時」の発災が435人と最多ですが、津波に限って見ると「夏12時」が293人と最多です。
3パターンを平均しても、津波による死者は約288人と多いため、やはり浸水想定内に自宅があるのか、浸水する地域がどこなのかしっかり確認しておくことが、津波から身を守る最善の策でしょう。
津波到達まで120分のアドバンテージを活かして、浸水域からいち早く逃げることが先決です。
市川町・福崎町・神河町|揺れによる土砂災害も心配ない
前述した市川町・福崎町・神河町の震度分布図では、最大震度5弱~5強の揺れが襲うため、土砂災害の心配があると記載しています。
しかしながら、被害想定を確認すると地震による土砂災害での人的被害は、死者・負傷者ともゼロでした。
大きな地震が起きるのは確かですが、約10年前でこの想定であれば耐震強化や防災強化してきた現在では、建物の倒壊件数も大きく減少できるはずです。
▼福崎町の建物被害(棟)
【全壊】
- 種別 |冬5時|夏12時|冬18時
- 揺れ | 3 | 3 | 3
- 合計 | 3 | 3 | 3
【半壊】
- 種別 |冬5時|夏12時|冬18時
- 揺れ | 126 | 126 | 126
- 液状化 | 10 | 10 | 10
- 合計 | 136 | 136 | 136
▼市川町の建物被害(棟)
【全壊】
- 種別 |冬5時|夏12時|冬18時
- 揺れ | 1 | 1 | 1
- 液状化 | 2 | 2 | 2
- 土砂災害| 1 | 1 | 1
- 合計 | 4 | 4 | 4
【半壊】
- 種別 |冬5時|夏12時|冬18時
- 揺れ | 37 | 37 | 37
- 液状化 | 78 | 78 | 78
- 土砂災害| 1 | 1 | 1
- 合計 | 116 | 116 | 116
▼神河町の建物被害(棟)
- 【全壊】=0棟
【半壊】
- 種別 |冬5時|夏12時|冬18時
- 揺れ | 5 | 5 | 5
- 液状化 | 9 | 9 | 9
- 合計 | 14 | 14 | 14
3町の地震における建物被害も、多くが半壊との予測です。昔ながらの築年数が古い住宅も多いため、家具の固定や安全地帯の確保が重要といえるでしょう。
この建物被害を見ても、北に行くほど被害が減少していることが分かります。
最後までご覧頂き、ありがとうございます!
今回は姫路市を含む、中播磨地域の被害想定のまとめを紹介しました。
南海トラフ地震が起きれば、中播磨地域では姫路市に大きな被害が予想されています。
ほかの市川町・福崎町・神河町の3町は、震度5弱~5強の揺れに襲われますが、被害は小規模な建物被害に留まっています。
それでも、あくまでも予想なので、安心しきるのはよくありません。全域で家具の固定や防災対策は必須ですし、特に姫路市では地震発生から120分以内に浸水域から脱出する必要があります。
繰返しになりますが、姫路市民の方は自宅が浸水するのか、どの地域が浸水するのか、しっかり把握して自分の命を守りましょう。