【南海トラフ地震|兵庫県被害想定:東播磨地域】急激に被害が減少!加古川市で死者数251人が最多
南海トラフ地震による兵庫県内の被害想定は、2014年(平成26年)6月に公表した内容が最新です。
そのため、県内でどのような災害が起きるのか、知らない方や忘れてしまった方も多いはず。
そこで、地域ごとの被害想定のまとめを、11年ぶりに改めて紹介しています。
今回は「明石市・加古川市・高砂市・稲美町・播磨町」の3市2町で構成される『東播磨地域の被害想定のまとめ』を紹介します。
5自治体分なのでボリュームが多くなっていますが、関係する部分でもご覧頂けると幸いです。
地震は稲美町を除く3市1町で最大震度6強が予想される
南海トラフ地震では、最大震度6強は稲美町では発生しませんが、逆にすべての自治体で震度5弱以下の地震も発生しません。
つまり、震度5強・6弱・6強と、強い揺れが東播磨地域を襲います!稲美町を除く3市1町の一部地域では、最大震度6強が発生します。
▼3市2町の震度分布一覧
- 震度 | 6強| 6弱| 5強|5弱以下
- 明石市 |16.4|81.8| 1.8|0.0
- 加古川市|17.1|57.8|25.2|0.0
- 高砂市 |26.6|55.8|17.6|0.0
- 稲美町 | 0.0|99.9| 0.1|0.0
- 播磨町 |31.0|69.0| 0.0|0.0
▼3市2町の震度分布グラフ
このグラフは、3市2町の震度別面積率をまとめたものです。震度6強の割合は播磨町が最も多いです。
次から、各市町別の震度分布図を確認していきましょう。
明石市の震度分布図|市内の約82%が震度6弱となる
明石市の震度分布図を見ると、市内の約82%が震度6弱となります。震度6強が予測されているのは、大蔵海岸公園から西側の樽屋町や日富美町、材木町周辺地域です。
震度6弱と6強との違いについては、気象庁の震度解説では次のように定義されています。
・震度6弱:立っていることが困難になる
・震度6強:立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある
また、人の体感では震度6強と震度7は、同じとなっています。このことから、震度6強の地域では特に揺れに注意が必要といえるでしょう。
加古川市の震度分布図|南部の埋め立て地は震度6強
加古川市の震度分布図を見ると、南部の埋立地全域は震度6強の揺れとなります。
また、加古川を挟むように市役所周辺などの地域で、震度6強の地域が点在。そのほか市内の約58%が震度6弱の揺れに襲われます。
高砂市の震度分布図|市内中央地域の約56%が震度6弱
高砂市の震度分布図を見ると、南部から北部に向かって「震度6強⇒震度6弱⇒震度5強」に分かれています。
震度6強が予想されている南部地域には「高砂火力発電所」があるため、大きな被害が懸念されます。
震度5強となる北部地域は山間部となるため、土砂災害のリスクが高まるでしょう。特に発災が豪雨と重なると、中央部よりも災害リスクが高まります。
稲美町の震度分布図|99.9%が震度6弱の揺れとなる
稲美町では北東部の0.1%のみが震度5弱であり、そのほか99.9%が震度6弱の揺れとなります。
稲美町は海に面していないため、津波の心配はありません。しかし、ため池が多い自治体なので、震度6弱の揺れによって堤が崩壊して、ため池による浸水被害が懸念されます。山や高台がないため、土砂災害の心配はありません。
播磨町の震度分布図|南部31%の地域で震度6強
播磨町の震度分布図を見ると、図的にはほぼ半分で南部地域が震度6強、北部地域は震度6弱に分かれています。
南部には海が含まれるため約31%の面積で、北部69%が震度6弱の揺れとなります。
播磨町も稲美町と同じく平野で山や高台がないため、土砂災害のリスクはありません。ため池も少ないため、比較的被害は少ない地域です。
津波は最高2.0m~2.3m!神戸市から西になると一気に浸水被害が減少
津波による浸水被害は神戸市を境に、西の地域になると一気に減少します。確かに神戸市でも中央区から長田区⇒須磨区⇒垂水区と、西に行くほど津波被害は小さくなっていました。
最も西に位置する垂水区では、浸水面積は全体で9ヘクタールと全体の0.75%まで減少しています。ただし、明石市や高砂市では、垂水区よりも被害は大きくなります。
▼3市1町の最高津波高と最短到達時間
- 明石市 :2.0m⇒最短115分
- 加古川市:2.2m⇒最短113分
- 播磨町 :2.2m⇒最短110分
- 高砂市 :2.3m⇒最短117分
このように、東播磨地域には2.0~2.3mの津波が襲います。神戸市や阪神南地域と比較すれば、津波も小さくなりますがそれでも油断はできません。
▼3市1町の津波による浸水面積グラフ
この地域の特徴は、播磨町ではほとんど津波の被害がない点です。
また、明石市や高砂市では0.5~1m未満の浸水域が最も多く、1m以上は意外に少少ないです。それでも、被害がゼロではないため自宅が浸水域に当てはまるのか、兵庫県CGハザードマップにて津波による浸水想定を確認しておきましょう。
明石市の浸水予測図
明石市の浸水予測図ですが、沿岸部の狭い範囲に津波による浸水が確認できます。
航空写真で確認すると浸水部のほとんどが砂浜のようで、西側の1m以上となる黄色の地域は「大蔵海岸公園」です。
冬場は安全ですが夏場は海水浴客などが集まるため、津波で浸水することをしっかり把握しておきましょう。
加古川市の浸水予測図
加古川の浸水想定図を見ると、加古川の東側の一部地域と別府川の両岸の一部で浸水被害が起こるようです。
これらの場所は住宅地となるため、自宅が浸水域に入るのか、兵庫県CGハザードマップで確認することをおすすめします。
播磨町の浸水予測図
播磨町の浸水予測は、ほんの一部(3ヘクタール)のみが最高0.5m~1.0未満の浸水が発生します。
航空写真で確認すると、次のように住宅はないため被害は起きないでしょう。
高砂市の浸水予測図
高砂市の浸水想定図を見ると、海岸よりも離れた場所で浸水被害が発生する予想です。
川を遡上した津波が地震の揺れで決壊した堤防から、越流して浸水被害を起こします。海から離れていても危険なため、高砂市民の方も自宅が津波で浸水しないか、兵庫県CGハザードマップで確認しておきましょう。
人的被害「死者数」は津波よりも地震被害が多い!加古川市で251人が死亡する想定
東播磨地域では、死者数は神戸市や阪神南地域よりも大幅に減少。しかも、死亡原因は津波よりも、地震の揺れの方が多くなっています。
このことから、死者数は少ないといえども浸水地域では、地震の揺れにも注意する必要があるため、家具の固定や安全地帯の確保は必須といえるでしょう。
それでは次から、各市町の原因別の死者数を確認していきましょう。ここでも発災時刻「冬5時」「夏12時」「冬18時」の、3パターンをグラフ化しました。
明石市の死者数グラフ
明石市では「冬18時」の発災時刻での死者数が最も多いです。原因別で見ると津波:73人、揺れ:92人と多く、若干ですが揺れによる死者数が津波を超えています。
発災時刻が「冬5時」だと、津波による死者はゼロの予想。これについては解説には記載がありませんが「冬5時」は、ほとんどの方が家で過ごしているはずです。
明石市では津波による浸水域は1m以下が多く、外で浸水に遭うことがないためと推測できます。
加古川市の死者数グラフ
加古川市では「冬5時」に起きる災害で、251人が死亡すると想定されています。
津波による浸水面積が小さいため、津波よりも揺れによる死者数が約3.7倍多いです。加古川市では市内の約58%が震度6弱で、市の中心地では震度6強の地域もあります。やはり、住宅内の家具の固定は見直すべきでしょう。
高砂市の死者数グラフ
高砂市は東播磨地域で唯一、津波が原因での死者数が多い地域で「冬5時」で津波:117人と揺れ:70人の約1.7倍多い予想です。
津波の浸水面積は、50cm以下も合わせると59ヘクタールで、東播磨地域内で最も多いです。それでも浸水深は低いため「冬5時」で津波による死者が多いのは、先の明石市のパターンとマッチしません。
調べて見ると、高砂市では津波による建物の半壊数が「冬5時」で117棟あることが判明。一方で明石市では2棟であるため、同じ「冬5時」に襲う津波でも死者数が異なる訳です。
確かに「冬5時」に家屋が壊され冷たい海水に襲われれば、溺れるのでなく凍死または低体温症で死亡に至るでしょう。
稲美町の死者数グラフ
東播磨地域で唯一稲美町だけが海に面しておらず、津波被害のない地域です。
町内99.9%が震度6弱の揺れに襲われますが、被害は少なく想定では「冬5時」と「冬18時」で揺れによる死者が14人とされています。
ため池の多い地域ですが、想定では問題なさそうです。家具の固定や耐震化を徹底すれば、死者数ゼロを実現できるかもしれません。
播磨町の死者数グラフ
播磨町は海に面している地域でありながら、津波による死者はゼロの想定です。
その理由は、先の浸水予測図でもお分かりのように、津波が襲うのは人のいない海岸の一部のみだからです。
そのため「冬5時」で揺れによる死者が20人とされています。稲美町と同じくこの人数なら、防災対策を進めていけば死者ゼロを実現できるでしょう。
最後までご覧頂き、ありがとうございます!
今回は東播磨地域「3市2町」の南海トラフ地震による「兵庫県の被害想定のまとめ」を紹介しました。
阪神南地域では、津波による被害が揺れによる被害を上回っていましたが、この地域では揺れの被害が多くなっています。
その理由は、南海トラフ地震で起きる津波を淡路島が受けることで、被害が軽減されていると推測できます。
とはいっても、少ないとはいえ揺れによって死者も予測され、多くの建物被害も起こります。そのため、各個人の防災対策の強化が重要といえるでしょう。