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今世紀2人目の「20敗投手」が誕生するのか。シーズンの3分の1が過ぎたところで早くも10敗に到達

宇根夏樹ベースボール・ライター
ヨアン・アドン(ワシントン・ナショナルズ)Jun 2, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月7日、先発マウンドに上がったヨアン・アドン(ワシントン・ナショナルズ)は、2回裏にタイムリー・ヒットとグランドスラムで5点を取られ、4回裏に3ラン本塁打を打たれたところで降板した。ナショナルズは、2対12で敗れた。

 早くも、アドンの黒星は二桁に達した。12先発で1勝10敗。ナショナルズは、57試合を終えたところだ。このままのペースなら、アドンは20敗に到達する。

 昨シーズン、アドンは、ナショナルズの162試合目にデビューした。当時も今も、年齢は23歳。今シーズンは、4月19日に6.1イニングを無失点に封じ、メジャーリーグ初白星を手にしたものの、ここまで55.2イニングを投げて、奪三振率と与四球率は7.11と5.66、防御率は6.95だ。

 6月8日、アドンはAAAへ降格となった。当然ながら、再昇格しない限り、メジャーリーグでの黒星は増えない。

 ただ、ナショナルズで黒星を積み重ねているのは、アドンだけではない。パトリック・コービンは、12先発で2勝8敗。こちらも、20敗に達してもおかしくない。

 コービンは、2018~19年に2シーズン続けて200イニング以上と防御率3.30未満を記録したが、過去2シーズンの防御率は4.66と5.82。今シーズンの防御率6.71は、チームの試合数×1以上のイニングを投げている投手(6月7日時点)のなかで、ア・リーグも含めて最も高い。

 1960年代の20敗投手は延べ16人、1970年代も延べ14人を数えた。だが、1980年に8勝20敗のブライアン・キングマンを最後に、20敗投手はほぼ消滅した。1981~2021年にシーズン20敗以上を記録したのは、2003年に9勝21敗のマイク・マロースだけだ。

 1981年以降、19敗を喫した投手は、マロース以外に延べ14人いる。ホゼ・デレオンは2度だ。そのうちの8人は、シーズン最後の登板に19敗目を喫したが、あとの6人は、20敗にリーチがかかってからも登板している。例えば、2001年のアルビー・ロペスは、9月25日の黒星で8勝19敗となった後に2登板。9月30日は8イニングを投げて1失点で勝敗はつかず、10月5日は完封して白星を挙げた。

筆者作成
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 アドンが早めに再昇格し、コービンは移籍せず、2人揃ってシーズン20敗に到達すると、1973年にシカゴ・ホワイトソックスで投げた、スタン・バーンセンウィルバー・ウッド以来の20敗デュオとなる。もっとも、49年前の2人は、負け続けたわけではない。それぞれ40試合以上に先発し、18勝21敗と24勝20敗。防御率は、どちらも3.50前後だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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