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もちもちふわふわ、さらにトロリん「佃餅」創業156年の気取らない名物は爽やかな杏子がきいた求肥菓子

柳谷ナオ和菓子ソムリエ・ライター

その世界の重鎮とよばれる存在は、高級感や重厚感が伴うものも多く、それもそのお店を構成する重要な要素となっていますね。

けれども、その逆も然り。ここぞという時だけではなく、日常使いできるからこそ細く長く続いているようなお店の存在の名物もまた愛しい。

テープでとめただけの包装もまた味があります
テープでとめただけの包装もまた味があります

東京都中央区、新旧さまざまな歴史が入り混じるこの町は、実に表情豊か。その中でも時折足を運んでいるのが、月島のお隣に位置する佃。地図を見ていただくとわかりやすいのですが、ザ・埋立地という地形の観光地というには非常にアットホームなエリア。

街の入口あたりにお店を構えるのが、創業1868年の「二葉家」さん。当初は江東区で商いを営んでおりましたが、1918年より現在の地に移転なさったこの地の歴史を物語るようなお店には、毎日のおやつに欠かせない和菓子があるのです。

佃餅
佃餅

今回は、10個以上まとめ買いする方も多い「佃餅」をご紹介。

シンプルな花柄の紙につつまれたパッケージは、地元の人たちにとってお馴染み。そっと包を開くと、長方形の餅肌にオレンジ色の花が咲いている上質な和紙の如きお菓子がお目見え。

「あらー!」と思わず声をあげてしまうのは私だけではないはず
「あらー!」と思わず声をあげてしまうのは私だけではないはず

この柔らかさのおかげで、いくらでも食べられます
この柔らかさのおかげで、いくらでも食べられます

そっと指先でつまんでも、ふにゃりとお辞儀をしてくれるほど柔らかく繊細な触感です。丁寧に練り上げられた求肥はどこまでもシンプルでありながら、舌先に柔らかく広がる甘味にほっと肩の力が抜けていきます。そして細かく刻まれた杏子が散りばめられているのですが、こちらの加減もまた絶妙で、求肥のまろやかさを損なわずそれでいて時折心地よい酸味と果実の甘味を演出。ゆっくりと糸をひいていったかと思いきや、口の中では何度かもちもちとした弾力を楽しませてくれる食感もたまりません。

鮮やかな杏子は小花模様のよう
鮮やかな杏子は小花模様のよう

3個食べて物足りない、5個食べてここで我慢しておこうかな、というほど開封する手が止まらないシンプルイズベストな求肥です。

ちなみに、ご飯のお供に最適な「佃煮」の由来はこちらの佃から。徳川家康が江戸幕府を開いた際に、ゆかりのある摂津国の漁師たちを呼び寄せて住まわせたこの街。そこで販売できない小魚などを保存食として調理しはじめたのが始まりとのこと。

花柄の包み紙も佃餅のトレードマーク
花柄の包み紙も佃餅のトレードマーク

焦げたソースの香りに満ちたもんじゃストリートへ向かう前に、ぐるりと一周してお腹に佃餅をいれてから、ぐびっと一杯いかがでしょうか。


最後までご覧いただきありがとうございました。
柳谷ナオ

<二葉家>
東京都中央区佃2-14-3
03-3531-2830
11時~18時30分
定休日 月曜

和菓子ソムリエ・ライター

■年間400種を優に超える和菓子を頂く和菓子ソムリエ&ライター。美味しさだけではなく、職人さんやお店、その土地の魅力をいかに伝えるかに重きを置いて執筆中! ■製菓衛生士免許所持・製造・販売・百貨店勤務経験有 ■和菓子・お取り寄せ・お土産・アンテナショップ・都内物産展&催事・和菓子とお酒&珈琲&ノンアルコールとのペアリングなどの執筆や取材、監修を得意としています。

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