NASAが公開!あり得ない方法で撮影された「金星の動画」
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「撮れるはずのない金星の姿が写った偶然の映像」というテーマで動画をお送りしていきます。
●NASAの宇宙探査機が捉えた金星
去年2021年の2月、太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」によって撮影された金星の姿が、NASAによって公開されました。
この画像は、2020年7月にパーカー・ソーラー・プローブが実施した3度目の金星スイングバイの際に、その表面の夜側の部分を撮影したものです。
公開された画像を見てみると、金星の縁が白く光っているのが分かります。
これは、大気中の酸素原子が夜側で酸素分子に再結合する際に発せられる「大気光」ではないかと考えられています。
画像全体に細い傷のようなものがいくつも走っていますが、大抵の場合この白い線は、宇宙塵に反射した太陽光や宇宙線等によるものだそうです。
金星中央の黒く見える部分は、金星最大の大陸である「アフロディーテ大陸」です。
この大陸は、周囲よりも標高が高く、30度ほど温度が低いため、このように暗く見えるそうです。
●撮れるはずのない映像
実は研究者たちにとって、今回撮影された金星の姿は想定外のものでした。
ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所の研究者は、「当初は雲が見えると予想していましたが、カメラは地表まで捉えてくれました」と語っています。
パーカー・ソーラー・プローブに搭載された「WISPR」というカメラは、太陽コロナや太陽圏内、太陽風などを可視光で撮影するように設計されているため、本来なら金星の表面を写すことはできません。
なぜなら、金星全体を厚い濃硫酸の雲が覆っているからです。
金星表面から宇宙空間へ向けて放たれた可視光線は、この雲に遮られてしまいます。
では何故WISPRは金星の「撮れるはずのない姿」を撮ることができたのでしょうか。
WISPRは可視光線だけでなく、金星表面の熱放射による近赤外線を観測することができている可能性があります。
その証拠に、JAXAの金星探査機「あかつき」が近赤外線で撮影した画像と非常によく似ています。
標高が高く、周囲より低温なアフロディーテ大陸が黒く大きく写っているところも共通していますね!
温度を持つ物体は、その温度に応じた波長の光を放ちます。
これが「熱放射」という現象です。
低温な物体ほど長い波長の光を放ち、高温なほど短い波長の光を放ちます。
例えば人間の体温程度の温度であれば、可視光より波長が長い「赤外線」を放ちます。
ですがマグマのように高温になると、赤い可視光線を放って夜でも輝いて見えます。
金星表面は平均で460度と超高温であるため、可視光線に近い「近赤外線」の光を放っているんですね。
また仮にWISPRが近赤外線の波長での観測が不可能でも、近赤外線に非常に近く波長が長い可視光、つまり非常に赤い光であれば、金星表面が観測できるという知られざる事実が新たに明らかになった可能性があります。
●4度目のスイングバイ時の最新映像
2020年7月に行われた3度目の金星スイングバイの際にこれだけの発見があった中で、2021年2月の4度目のスイングバイでは、改めて金星表面の夜側の撮影が行われました。
その結果、可視光線の中でも最も波長が長く、赤外線に近い光が、金星の分厚い雲を通過して宇宙へ漏れ出ていることが明らかになりました!
金星は焼けた鉄のように、高温のために目に見える光を放っていたんですね。
今回得られた画像によって金星表面の地形を調べられるだけでなく、これまでの画像と組み合わせてより幅広い波長の光で調べることで、金星表面の地質や鉱物組成の情報まで明らかにできるそうです。
さらに、金星の進化の歴史を調べるのにも役立つそうです。金星表面には90気圧以上に相当する分厚い大気がありますが、このような大気が形成されたメカニズムを解明するために、さらなる研究が必要となります。
一説では金星表面での火山活動が関与しているとされていますが、その真偽を確かめるためにも、今回新たに得られた画像が役立つとされています。
本来は太陽の探査が目的で打ち上げられたパーカーソーラープローブですが、偶然とはいえ金星にも新たに大きな発見をもたらしたのは、本当に偉大な貢献ですね!
そんなパーカーソーラープローブですが、本業である太陽探査においても最近偉大な功績をおさめ、非常に大きなニュースとなっていました。
何と人類史上初めて、「太陽の大気」に突入したんです!
このようにパーカーの最近の成果を以下の動画でより詳細にまとめているので、併せてご覧ください。