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【追記あり】スペースX、スターリンク通信衛星を5月15日打ち上げへ

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
スペースXは巨大通信衛星網構築を開始する。Credit: SPACEX

日本時間5月17日の打ち上げ予定は、ソフトウェア不具合のため延期となった。新たな打ち上げ日は「およそ一週間後」とされ、5月24日ごろとみられる。

※5月20日18:00追記

米フロリダ州ケープカナベラル空軍基地から予定されていた現地時間5月15日の打ち上げは、上空の強風のため延期となった。新たな打ち上げ日時は米東部夏時間5月16日22:30(日本時間5月17日11:30)の予定。スペースXによる打ち上げ中継も行われる。

※5月16日12:30追記

スペースXによる巨大インターネット衛星通信網、Starlink(スターリンク)の初期型衛星が2019年5月15日以降に打ち上げられることがわかった。米で開催された人工衛星事業関係者によるコンベンションで同社のグウェン・ショットウェル社長がコメントしたほか、FCC(連邦通信委員会)に提出された文書で15日から電波の使用申請が記載されている。

スターリンク通信網とは、スペースXが計画している1万2000機を超える通信衛星による世界規模のインターネット接続網。「メガコンステレーション」と呼ばれる多数の衛星を使ったサービスの中でも最大級の規模になる。

2018年3月末、SpaceXはFCCからスターリンク初期の4425機の衛星(Ku帯およびKa帯を使用)を打ち上げ認可を得た。2024年3月までに予定数の2分の1、2027年3月までには全機を打ち上げる”という条件が課せられている。打ち上げが順調であれば、さらに7518機の衛星(衛星通信ではほぼ使われていないV帯を使用)を追加し、全体で1万2000機近い衛星網になるという計画だった。しかし、2018年末にソフトバンクが出資する衛星通信網OneWebや地球観測衛星網を展開するPlanet Labsなど、他の衛星事業者から周波数の混線について懸念が寄せられた。また、役目を終えた人工衛星が地球の大気圏に再突入する際に燃え残るリスクも指摘され、FCCが調整にあたっていた。

2019年4月26日、FCCの調整を受け入れてスペースXは衛星の機数を削減し、軌道を大幅に下げることを決定、打ち上げに向けた許可を得た。衛星数は4409機となり、周回する高度は1150キロメートルから550キロメートルとなった。また、初期に生産した75機の衛星を除き、燃え残りリスクを避ける設計変更も行われた。

スペースXはイリジウム衛星など他の通信衛星事業者の衛星打ち上げつつ、自社の通信網構築を開始することになる。Credit: SPACEX
スペースXはイリジウム衛星など他の通信衛星事業者の衛星打ち上げつつ、自社の通信網構築を開始することになる。Credit: SPACEX

イーロン・マスクCEOが「できるだけ早く」と急がせているスターリンク衛星の打ち上げ開始について、グウェン・ショットウェル社長は5月6日から9日まで米ワシントンDCで開催された衛星事業者のイベント「サテライト 2019」の席で「初期の12機を5月15日打ち上げ」とコメントした。

この日付の裏付けだが、スペースXの子会社スペースX サービシズの名前でKu帯の人工衛星と地上局が通信を行う電波の使用申請がFCCに提出されている。開始日は5月15日となっており、ショットウェル社長のコメントと一致する。天候やロケット調整などによる多少の延期の可能性はあるものの、ついにスターリンク衛星の打ち上げが始まる見込みだ。

現在のライバルであるOneWebは今年2月から衛星打ち上げを開始している。また、4月にはAmazon.comが3000機を超える衛星通信網「プロジェクト・カイパー」始動を表明したばかりだ。有人宇宙船クルードラゴンの開発や他の衛星打ち上げも抱える中で、期限内に初期型衛星を打ち上げできるかどうか注目される。

5月12日、スペースXのイーロン・マスクCEOは複数のStarlink衛星を搭載する際の画像を公開し、1度に搭載できる衛星数は60機だと公表した。打ち上げ日は「水曜日を目指している」といい、5月15日の目標を裏付けた。

Starlink衛星の設計の詳細は公表されていないが、衛星同士の光通信機能を持つとされる。また、ホールスラスタと呼ばれる電気推進エンジンを持ち、軌道修正が可能だ。写真の衛星はコンパクトな薄型の形状をしているように見え、ディスペンサー(衛星を1機ずつ軌道に放出する専用機器)は使用しないという。2018年に打ち上げられた試験機からは設計変更されているという。最初の打ち上げでは、「多くの不具合が発生するはず」といい、さらに6回の打ち上げ(全420機)でようやく「小規模のカバー率を達成」としている。12回の打ち上げ(全720機)まで実現すれば、「中程度のカバー率」になるとコメントした。

(2019年5月12日追記)

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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