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200年に一人の天才ボクサーが語る「いつまでもパッキャオvs.メイウェザーに拘るな」

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
2015年の時点で「遅過ぎた実現」「5年遅れのカード」と評された(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現役時代、所属していた協栄ジム会長、故金平正紀に「具志堅用高を超える逸材。200年に1人の天才」と絶賛された元WBAジュニアウエルター級1位、日本同級&日本ウエルター級王者の亀田昭雄。

 本シリーズでお馴染みの彼が、昨今のボクシング界について語った。

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 マニー・パッキャオ(40)とフロイド・メイウェザー・ジュニア(42)の試合が行われたのは、もう4年も前のことです。2015年5月2日でしたよね。今でも、このカード、つまり彼らの再戦がボクシング界で最も注目されている現実って、哀しくないですか?

 パッキャオとメイウェザーがBIG NAMEなのは間違いありませんが、言ってしまえば40過ぎのロートルです。彼らを脅かす若手が出てこなければ、ボクシング界は盛り上がりませんよ。その打開策について具体的にこうすればいい、というのは正直、今の僕には思い浮かばないのですが…。ボクシングの醍醐味を味わうのなら、今更、「パッキャオvs.メイウェザー2」じゃないだろうという気がします。

 それから、ボクシングと関係のない人間たちが、メイウェザーやパッキャオをビジネスに利用しているのも見たくありませんね。自分が手掛けている格闘技を認知させたいのでしょうが、名前のある他業種の人間を連れて来てリングに上げるというのは、どうなんでしょう。僕は嫌ですね。

 ただ、那須川天心だとか、ああいうのをスーパースターに仕上げて、バンバン宣伝して会場を満員にする興行力は、評価せざるを得ません。ボクシング界には無いものですから。単なる見世物でも商売にはなっている。演出力が高いと言えるでしょう。

 かつてのボクシング界では、亀田3兄弟みたいなレベルにマスコミが飛びついて、ワーワーキャーキャーやったことがありました。取材する側がボクシングを知らないから、あんなのに目が行ってしまうんです。それでも、メディアの力は強いですから、少なからず、亀田3兄弟が強いと感じてしまった人もいました。

 アメリカで客を呼べるのって、多くの場合、ウエルター級より重いクラスでしょう。でも、日本は強ければ軽量級だって大スターになれる。そういう意味ではマーケットとしては可能性がある筈です。

 今日の日本は、ボクシングみたいなシンドイことをしなくても、食っていけます。それでもボクシングを選んで努力している子たちがもっと輝けるような演出が必要なように感じます。

 パッキャオ、メイウェザーと騒がれている状況は、本当に寂しいですね。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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