医療機関に「治癒証明書」を求めないで インフルエンザの療養期間まとめ
風邪とは違い、インフルエンザは学校保健安全法によって「発症から5日間かつ解熱してから2日間(幼児では3日間)」の出席停止期間が設けられています。いまだ求められることがある治癒証明書についても解説したいと思います。
小学生以上の子どもの療養期間
小学生以上の子どものインフルエンザは、基本的に解熱後2日目まで出席停止となります(図1)。これは、学校保健安全法において「発症後5日を経過し、かつ、解熱後2日経過」までが出席停止期間と定められているためです。
発症した日を0日目として、6日目に初めて登校できます。実際には6日間休むケースが多いと思いますが、解熱不良の場合、解熱後2日目までしっかりと療養する必要があります。
乳幼児の療養期間
乳幼児のインフルエンザは、解熱後3日目まで出席停止となります(図2)。学校保健安全法において、例外的に「3日」と定められているためです。
1日長く設定されているのは、乳幼児のインフルエンザは症状が分かりにくいこと、そして健康状態をしっかりと観察する必要があることが理由です。
また、乳幼児は大人と違って免疫を持たない初感染が多く、ウイルス排出期間が長いことも理由の1つです。
そのため、小学生以上の子どもと比べると乳幼児の療養期間は長めになりがちです。
大人の療養期間
大人には学校保健安全法が適用されないため、厳密にはインフルエンザの療養期間というものは存在しません。
しかし、社会通念上、小学生以上の子どもの療養期間と同じように扱われることが多いです。
周囲へ感染を広げないためには、発症後5日を経過し、かつ、解熱後2日が経過するまで自宅療養することが望ましいでしょう。
同居家族がインフルエンザになった場合の出席は?
家族が感染していても、本人の体調に問題がなければ登校しても問題ありません。
新型コロナが5類感染症に移行する前は、「濃厚接触者」ということで、きょうだいともに休まざるを得ないこともありましたが、現在はほぼ撤廃されています。
治癒証明書は本来不要
医師によるインフルエンザの診断書や治癒証明書は医学的には不要です。厚生労働省からも「インフルエンザの診断書や治癒証明書の提出を求めないように」という通達が出されていますが、いまだにこれが適用されていない園や学校があります。
この理由の1つにこども家庭庁の「保育所における感染症対策ガイドライン」(令和5年10月10日一部修正)の存在があります(1)。
ここには、「子どもの病状が回復し、保育所における集団生活に支障がないと医師により判断されたことを、保護者を通じて確認した上で、登園を再開することが重要である」と記載されています。登園にあたって「医師の判断」が重要という位置づけになっています。
「必ずしも意見書は必要ではない」と注釈に書かれていますが、もし私が保育所の責任者なら、このガイドラインを読めば、登園許可を医療機関に求めてしまうかもしれません。
つまり、現状の指針がダブルスタンダードに近いことが、現場で混乱を招いている要因と考えられます。
実際、横浜市では「保育・教育施設における感染症対策について」という行政のホームページにおいて、「季節性インフルエンザについて、令和4年11月9日から医師の意見書の提出が不要としていましたが、 令和5年5月8日から医師の意見書の提出が必要となります」と右往左往している様子が分かります(2)。
インフルエンザは、療養期間が過ぎれば登園・登校可能です。もちろん症状が長引いたり悪化したりして、病態が思わしくない場合には再受診すべきですが、治癒証明書をもらうために医療機関を訪れるのは、混雑している医療機関の業務負担を増やすだけです。
自治体や園・学校が医療機関に証明書を求めないよう足並みをそろえなければ、この慣習はゼロにはならないと思います。
補足:新型コロナの療養期間
最後に補足ですが、新型コロナの出席停止期間は、「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」とされています(図3)。
これは園や学校に限らず、大人でも同様です。
■参照:新型コロナの療養期間が短縮 なぜ「5日間」なのか? 現在の療養期間のまとめ(URL:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1191673e9aa3f44340d821681318448393baa39c)
(参考)
(1) こども家庭庁. 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)<2023(令和5)年10月一部修正>. (URL:https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/cd6e454e/20231010_policies_hoiku_25.pdf)
(2) 横浜市. 保育・教育施設における感染症対策について(URL:https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kosodate-kyoiku/hoiku-yoji/shitukoujou/kansen/20190329095234280.html)