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コーヒーが広げた笑いへの意識。「コマンダンテ」石井が示す趣味と本業の相関関係

中西正男芸能記者
趣味が高じて、コーヒーに関する書籍を上梓した「コマンダンテ」の石井輝明さん

 上方漫才協会文芸部門賞などを受賞し、2017年から活動拠点を大阪から東京に移したお笑いコンビ「コマンダンテ」の石井輝明さん(38)。年間約300軒新規のカフェを開拓するほどのめり込んでいるコーヒーへの思いを綴った著書「全人類に提唱したい世界一手軽な贅沢 おいしいコーヒーライフ入門」(KADOKAWA)も上梓しましたが、趣味から見えた笑いの本質とは。

コーヒーからの学び

 昨年12月にコーヒーに関する書籍を出させてもらったんです。もともと、僕がコーヒー好きであることを知ってくださっていたライターさんがKADOKAWAさんに話をしてくださり、ありがたい話、本にしていただきました。

 そもそも、コーヒー好きになったきっかけは今から7~8年前。後輩コンビ「アイロンヘッド」のナポリ君が僕の誕生日プレゼントにコーヒーミルをくれたんです。「石井さん、キャラがないのでコーヒーを始めたらどうですか?」と。

 半分ボケでもあるんですけど本質を突いた話でもあり、もちろんくれたことも本当にうれしかったので始めることにしたんです。これといった趣味がなかったことも事実ですし、何かのきっかけになればと思って。

 それまでコーヒーは普通に飲むけれど、何のこだわりも、知識もない。いわゆる普通の人の関わり方というか(笑)、そんな感じだったんです。

 ただ、ミルをもらって楽屋で実験的に淹れてみたコーヒーが飲めたものじゃなくて。当時はまだYouTubeなども今ほど整備されてなかったのでノウハウを知る術もあまりなく、ドラマとかで喫茶店のマスターがやっているような感じで見よう見まねで淹れてみたんですけど、全くもってダメだったんです。

 そのまずさがあまりにもすさまじくて「いったい、何がダメだったんだろう」と。そこから理由を調べる中で徐々にコーヒーの世界に惹かれていきました。

 そういう感覚でカフェに行くようになると、全てが勉強ですし、たまたま人に恵まれたのか、必然なのか、会う人、会う人、本当に感じの良い人ばっかりだったんです。

 それまで僕は極度の人見知りで、初対面の人とフランクにしゃべることが苦手でした。ただ、コーヒーという入口があることでカフェの人にもスッと話しかけられるし、それ以外の人ともつながりやすくなりました。

 もちろん、コーヒーを飲まない方もいらっしゃいますけど、大好きではなくても「ま、普通に飲む」という人が大半。そうなると、会話の入口としても非常に間口の広い良質なものでもあったんです。

 そんな感覚もあいまって、どんどんコーヒーにのめり込んでいき、気づけば、年間300軒ほどは新規のカフェを開拓するような状況になっていました。

 そうやってハイペースで新たなカフェに行き出すと、その中での気づきも出てきました。コーヒーとお笑いの共通点というか、通じるものを感じるようになっていったんです。

 僕ら芸人も自分が面白いと思うネタを作って見てもらう。喫茶店のマスターも自分がこだわったコーヒーを淹れて味わってもらう。「どんな商品を出したいか」「商売の何に重きを置いているのか」みたいなところに人間性が出てくるのも同じじゃないかなと。

 例えば、自分の店のコーヒーを全国のコンビニに並ぶような缶コーヒーにする。これはこれですごいことだし、普通は絶対にできないことなんですけど、缶コーヒーにした時点で自分の店での淹れたてとは風味が変わる。

 でも、自分の味を多くの人に知ってもらいたい。度胸を持ってそう思う人もいれば、逆に「自分で淹れたコーヒーを目の前のお客さんにだけ出したい」と思う人もいる。

 これはね、本当にどちらが良いというものではないと思うんですけど、いろいろなコーヒー、そして、その数だけの仕事ぶりに触れる中で、仕事への自分のスタンス、本質的な部分がクリアになっていった気がしています。

全てはコンビのために

 本を出す前から番組でコーヒーを淹れたり、コーヒー関連のイベントに出演させてもらったりはしていたんですけど、本を出してそこに説得力が増したというか、そんな流れは感じています。

 そして、これは結果的にいきつくところ「コマンダンテ」を知ってもらうためのツールであり、コンビのための広報活動だと思っているんです。どんな方法であったとしても知ってもらったらありがたいし、そこから「コマンダンテ」を面白いと思ってもらえたら本当にうれしいことだなと。

 あとは相方の安田君がお客さんを喜ばせてくれるだろうし、入りが仮に僕だったとしても、僕より安田君を好きになってもらえたらうれしいですし、そのためにもコーヒーは一つの入口として非常に良いものだと思っています。

 なんでしょう、カッコいい感じに言い過ぎましたかね(笑)。ただ、本当にそう思っていることですし、なんとかコーヒーの道は進み続け、それがコンビのためになるように頑張ります。

(撮影・中西正男)

■石井輝明(いしい・てるあき)

1984年10月17日生まれ。大阪府出身。吉本興業所属。NSC大阪校29期生。同期は「見取り図」「吉田たち」など。2008年に安田邦祐と「コマンダンテ」を結成する。上方漫才協会文芸部門賞、ytv漫才新人賞決定戦優勝。17年に拠点を大阪から東京に移し、大宮ラクーンよしもと劇場を中心に活動し、年間900ステージ以上に出演する。昨年、結婚。趣味のコーヒーへの思いを綴った著書「全人類に提唱したい世界一手軽な贅沢 おいしいコーヒーライフ入門」(KADOKAWA)が発売中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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