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「地面師たち」に続き、今クールのドラマでも引っ張りだこ。安井順平が選ばれる理由

中西正男芸能記者
50歳を迎え、今の思いを語る安井順平さん

 NETFLIXのヒットドラマ「地面師たち」ではクセのある不動産開発企業社長・阿比留剛を演じ存在感を示した安井順平さん(50)。今クールのドラマでも、読売テレビ「オクトー」、TBS「あのクズを殴ってやりたいんだ」、フジテレビ「わたしの宝物」、テレビ朝日「民王R」など引っ張りだこ状態になっています。これまでもフジテレビ「エルピス ―希望、あるいは災い―」「silent」、NHK朝の連続テレビ小説「ちむどんどん」など注目作で存在感を示してきましたが、仕事が途切れない理由とは。

「あの人が出ている作品は面白い」

 良いご縁が重なって「地面師たち」にも出してもらったんですけど、SNSの反応を見ても、やっぱりたくさんの方が見てくださったんだなということは純粋に感じますね。

 こういう取材の時に「撮影時の印象的なエピソードは?」と聞かれたりもするかなと思って、もう一回、その時のことを思い出したりもしていたんですけど、これがね、僕が参加した撮影期間も短かったし、普通の撮影として終わってまして(笑)。

 ただ、僕がやった役がとにかくうさんくさくてガチャガチャしているというか、隣にいるんだけど、存在が“うるさい”。そういう存在で、大根仁監督もそこを目指されたようで、こだわりはすごかったですね。衣装合わせの時点から、身につける眼鏡や腕時計も細かいところまで精査されていて。そういうところから出る味は確実にあるんだろうけど、なかなか普通はこだわれないという部分にまでこだわってらっしゃいました。

 キャストに関しても、僕自身の撮影ではマキタスポーツさんとか限られた人としかご一緒はしてないんですけど、キャスト表を見た時に「これは、監督、力を入れて(人を)集められたんだなぁ」と思うような人選で。「なんとなく、こんな味の人を」ではなく「どうしても、この人を」というこだわりが強く見えた座組だなということも感じました。

 NETFLIXのドラマは面白い。お金をかけている。そんなイメージが多くの人の中にもあると思うんですけど、今回そういったことを直に感じもしました。お金をかけるということが全てではないと思うんですけど、とある実績のあるカメラマンの方もおっしゃっていたのが「ここではお金をかけないとダメ」というところでお金を出せる作品はやっぱり良い映像が撮れるし、ヒットする確率も上がる。

 文字にするとそのままの言葉に思えるかもしれませんけど、身をもってそれを感じた撮影でもありました。

 今回僕なんかは最小限の力で、最大限印象に残る作品に出ていたヤツに過ぎないんだとも思いますけど(笑)、烏滸がましい話ながら、常に考えているのは「あの人が出ている作品は面白いよね」と思っていただけること。そこなんです。

 今回もSNSのコメントなんかを見ていると「『地面師たち』にも安井さん、出てたよね」という言葉があった。「地面師たち」“にも”と思ってもらえることがありがたいですし「こいつが出てると、面白くなるんだよな」というところまでなんとか頑張りたい。それは強く意識してはいます。それが何か良い形に結び付いているとすれば、こんなにうれしいことはないですけどね。

50歳になって見えたもの

 大きなことを言ってしまってますけど、僕、地の部分ではものすごく怖がりなんです。最大限良いように言うと繊細なのかもしれませんけど(笑)、シンプルに言ってビビリというか。ちょっとしたことが気になるし、監督からOKと言われても「いや、今の言い方は本当はOKじゃないんだろうな…」と思ったり、初めての撮影現場だと前の晩に「自分に合わない現場だったらどうしよう…」と心配になったり。

 そんな性分だったんですけど、今年で50歳になってそこが変わってきた気もしているんです。

 人生の逆算が始まったというか、もし80歳が人生のゴールだとすると、動けるのはあと何年なんだろう。ここから自分ができることはどれくらいあるんだろう。ここから信じられないくらいブレークすることもないだろう。

 もちろん、夢のある世界ではあるので、ここからでも何かがあるかもしれないけど、その“何か”の幅は若い頃に比べると狭まっている。老い先短いという領域ではまだないんでしょうけど、ゴールを意識するようになって、変な気負いはなくなって、覚悟が出てきた。そんな感覚にはなりました。

 できることをしっかりとする。そして「この人の出ている作品は面白いよな」とみている方に思ってもらい、できれば役者仲間からは「安井さんの出方、うらやましいな」と思ってもらう。それはこの仕事でしか得られない喜びだと思いますし、そこに向けての積み重ねをしていければというところですね。

 …と、ここでもエラそうなことを言ってしまってますけど、まだまだ事務所にも貢献できてないし、もっともっと頑張らないといけないんですけどね。まずは極めて近いところで、マネジャーさんに楽をさせる。良い思いをさせる(笑)。そのあたりから始めていければと思っています。

(撮影・中西正男)

■安井順平(やすい・じゅんぺい)

1974年3月4日生まれ。東京都出身。ワタナベエンターテインメント所属。95年、杉崎政宏とお笑いコンビ「アクシャン」を結成。2002年に「アクシャン」の活動に区切りをつけ、ピン芸人として再スタートする。07年、劇団イキウメ主宰の「散歩する侵略者」に客演。14年には読売演劇大賞優秀俳優賞を受賞する。今年配信されたNetflixのヒットドラマ「地面師たち」ではクセのある不動産開発企業社長・阿比留剛を演じて話題に。今クールのドラマにも多数出演しテレビ朝日「民王R」(火曜、午後9時)の11月26日放送分にもメインゲストとして出演する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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