Amazonが拡大する陸、海、空の物流事業
米ウォールストリート・ジャーナルなどの海外メディアの報道によると、米アマゾン・ドットコムは中国の小売業者に向けた航空輸送サービスを始める計画だという。
中国小売業者向けの物流サービス
アマゾンのこの分野の事業については以前から、中国の小売業者がアマゾンのeコマースサイトで販売する商品の、米国への海上輸送を同社が始めていると伝えられていた。
先ごろはアマゾンが陸上輸送や航空輸送だけにとどまらず、海上輸送の分野にも進出しており、その動きが本格化しているというニュースが話題になった。
今回のウォールストリート・ジャーナルの記事では、アマゾンが中国の小売業者向け物流サービスのウェブサイト「Amazon Logistics+(亞馬遜物流+)」を開設していると指摘。
ここに、中国の小売業者向け航空輸送サービスのことが書かれている。例えば次のような文章がある。
「アマゾンの物流サービスでは、エンド・ツー・エンドのワンストップ海上輸送サービスを提供しています。航空貨物のソリューションについては、現在サービスを開発中です。我々の数多くの小売業者に向けて、迅速にこのサービスを開始する計画です」
今のところ、新サービスに関する具体的な説明はなく、サービス開始時期などの詳細については分からない。しかし同社はここ最近、陸、海、空のすべてにおいて物流事業の拡大を図っている。今回の中国業者向け航空輸送サービスが始まる日も近いのだろう。
15億ドル投じ米国に航空貨物ハブ建設へ
同社は今年1月、米国に航空貨物ハブを建設する計画を発表した。
その場所は、ケンタッキー州ヘブロンのシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港内で、面積は最大200万平方フィート(18万5000平方メートル)と、東京ドーム4個分。アマゾンはこの計画に約15億ドル(1696億円)を投じる予定だ。
またアマゾンは昨年8月、米大手貨物航空会社と合計40機の「Boeing 767-300」をリースすることで提携。これにより「Amazon One」と呼ぶ自社ブランドの航空機を利用した輸送業務を始めている。このほか同社は自前のトラックを利用した輸送ネットワークの構築にも力を入れている。
UPSやDHLなどの国際物流企業と競合関係に
ウォールストリート・ジャーナルによると、アマゾンはこうした動きについて、「当社の顧客が注文する、増え続ける商品を配達するための能力を確実なものにするためには、物流事業を構築する必要がある」と説明している。
ただ、上述したようにアマゾンは、この事業をますます本格化させており、米UPSやドイツポスト傘下のDHLなどと、これまで以上に直接的な競合関係になりつつあると、ウォールストリート・ジャーナルは指摘している。
アマゾンのウェブサイトによると、中国小売業者向け物流サービスは現在、海上輸送のほか、集荷、倉庫保管、長距離陸上輸送、配達、輸出入手続き、顧客サービスなどを一貫して手がけており、現在の主要輸送先は米国、欧州、日本となっている。
アマゾンは商品を仕入れ、自社サイトで販売する事業に加え、それらの商品をアマゾンの倉庫に移動、保管・管理し、さらには顧客の元に届けるといった、物流全般に及ぶシステムを構築しようとしている。
(JBpress:2017年3月17日号に掲載)