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マリナーズが獲得した三塁手と外野手は、どちらもスラッガーだが「懸念材料」も

宇根夏樹ベースボール・ライター
エウヘニオ・スアレス(手前)とジェシー・ウィンカーJun 3, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 シアトル・マリナーズは、トレードにより、三塁手と外野手を同時に獲得した。ブランドン・ウィリアムソンジェイク・フレイリージャスティン・ダンの3人をシンシナティ・レッズへ放出し、その見返りとして、エウヘニオ・スアレスジェシー・ウィンカーを手に入れた。【追記:3/22】マリナーズによる放出は、後日決定するPTBNL1人を含めた4人。

 30歳のスアレスは、パワーのある三塁手だ。直近4シーズンのホームランは、2018年が34本、2019年が49本、短縮シーズンの2020年が15本、2021年は31本。このスパンの合計129本塁打は、ネルソン・クルーズ(現ワシントン・ナショナルズ)の126本を上回り、どの選手よりも多い。

 ウィンカーは28歳。ホームランはスアレスほど多くないが、過去2シーズンともOPS.930以上を記録している。このスパンのOPS.945は、600打席以上の162人中6位に位置する。守備は、レフトを守ることが多い。

 今回の移籍により、彼らの本拠地は、グレートアメリカン・ボールパークからT-モバイル・パークとなる。それぞれの傾向は、打者有利とやや投手有利だ。けれども、過去4シーズンにスアレスが打ったホームランは、ホームで63本、アウェーで66本だ。ウィンカーが過去2シーズンにアウェーで記録したOPSは、ホームには及ばないものの、両シーズンとも.900を超える。

 懸念材料は、他に存在する。

 スアレスの場合は、打率と出塁率だ。2018~19年は両シーズンとも打率.270以上と出塁率.355以上だが、2020~21年はどちらも打率.205未満と出塁率.315未満。そこには落差があり、昨シーズンに至っては、打率.198と出塁率.286だった。この打率は500打席以上の135人のなかで最も低く、出塁率は下から6番目に位置する。ちなみに、昨シーズンのスタッツは、前任の三塁手、カイル・シーガーとほとんど変わらない。シーガーは、打率.212と出塁率.285、35本塁打を記録した。直近の2シーズンとも、スアレスのBABIPは極端に低く、ツキがなかったという見方もできるが、2021年の四球率は5年ぶりに10%を下回った。三振率は3年続けて自己ワーストを塗り替え、昨シーズンは29.8%に達した。

 ウィンカーの懸念材料は、左投手だ。2020年のOPSは、対右が.944、対左は.890とどちらも優秀ながら、2021年は1.070と.572。通算のOPSも.960と.600なので、2020年よりも2021年が「本来」の姿だと思われる。

 また、マリナーズが三塁とレフトに補強を必要としていたのは確かだが、ローテーションの整備も課題になっている。サイ・ヤング賞を受賞したロビー・レイを5年1億1500万ドルで迎え入れたものの、まだ万全とは言い難い。

 レッズは、スアレスとウィンカーを手放す前に、ソニー・グレイをミネソタ・ツインズへ放出している。グレイの他にも、レッズには2人の有力な先発投手、ルイス・カスティーヨタイラー・マーリーがいる。マリナーズは、レッズから野手2人を獲得するのではなく、できれば、野手と先発投手を1人ずつ手に入れるべきだったのではないだろうか。スアレスとカスティーヨ、スアレスとマーリー、ウィンカーとカスティーヨ、ウィンカーとマーリー、どの組み合わせでも構わない。

 カスティーヨもマーリーも、ここから放出の可能性は大いにあるが、その交換にレッズが欲しがり、マリナーズが手放してもいいと考える若手は、今回のトレードにより、すでに残っていない気がする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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