「やる気」のない組織の評価制度はこうする
■やる気の足りない社員はどうすれば変わるのか?
「どうやったら、もっと主体的に動いてくれるのか?」
「当事者意識が足りない。なぜ、もっと危機感をもってくれないのか?」
そんな声を多くの企業経営者から聞く。
現在、外部環境は大きく変化している。経営者は、課題を解決するだけでなく、将来に向けた新しいチャレンジをしなければならない。
しかし現場で働く人々の「現状維持バイアス」は強く、経営者が想像する以上に大きい。では、なかなか変わらない社員の意識をどう変えることができるのか。
今回の記事では、評価制度の活用方法を紹介する。評価制度を「ツール」として活用するのだ。それはなぜか? 3部構成で解説していく。
①評価制度は意識改革ツールになるのか?
②インパクトの高い運用ルールの設計
③3つの評価基準ごとの運用について
この記事を最後まで読むことで、評価制度を活用して「やる気」に満ちた組織になるためのヒントが得られることだろう。
このコンテンツはTwitterでも多くの反響を呼んでいる。やる気を引き出したい部下を持つマネージャーや経営者の皆さん、ぜひ最後まで読んでみてください。
■評価制度は意識改革ツールになるのか?
まず、評価制度についての基本的な知識を説明する。
評価には、成果評価、能力評価、情意評価の3つの基準がある。会社によって名称が異なる場合もあるが、基本的には同じものだ。
また、この3つの評価基準は常識的なもの。絶対に覚えておく必要がある。
この3つの評価基準を正しく理解し、対話を通じて項目設計をする。そうすることで「意識改革ツール」として力を発揮するのだ。
■インパクトの高い運用ルールの設計
3つの評価基準を押さえたら、次に運用ルールについて解説する。
過去の貢献度を考慮するのは構わない。が、年次評価では(原則的に)過去をリセットし、新たなスタートを切ることとする。
考慮すべきは、加点主義か減点主義かである。
私は「情意評価」においては、徹底的に減点主義を採用すべきだと考えている。組織のルールや約束を守らない人々に対して減点措置を取らないと、真面目に働く人たちが不公平な扱いを受けるからだ。
重要なのは、「やる気」を上げることではない。むしろ「やる気」を下げないような組織を作ること。この考えがなければ、組織の改善は望めない。
■3つの評価基準ごとの運用について
では、評価基準ごとの運用について説明していく。
最初に、①成果評価について。
成果評価はシンプルだ。期首に本人と対話して、今期の目標(KGI・KSF・KPI)を設定し、定量評価を行う。(原則的に)定性評価は行わない。
マネージャーが定性評価に頼ろうとするのは、具体的な目標を設定する能力が不足しているためだ。
感情が入ると公正な評価ができなくなる。重要なのは、「KPIマネジメント」を正しく理解し、KSFやKPIを修正するための対話を継続すること。
評価自体が目的ではない。目的は、組織目標を達成することだ。日々、適切な「KPIマネジメント」を実践し、成果評価の項目も同じ指標を使用することが重要である。
次に、②能力評価について。
能力評価は最近、急速に「意義」が変わっている。
業務に必要なスキルだけで評価するのは適切ではない。なぜなら、一度身につけたスキルは、評価スコアが高いままになってしまうからだ。現代は、40歳や50歳でも他の業界に移ることができるような、多様なスキルを身につけることが必要な時代だ。
ベテランでも能力開発に消極的だと、加点すべきではない。
判定にはテストが基本。専門家が立ち会い、診断してもらうのが理想的だろう。緊張感があればあるほど、短時間で能力開発が進むものだから。
研修を受けさせ、レポートを提出させるだけでは、新しい能力は「開発」されない。その過程で、脳に負荷をかけ、汗をかかせることが重要だ。
最後に、③情意評価について。
これが最も重要であり、今回のテーマでもある。
経営者や中間管理職の最大の悩みは、「社員の意識改革」だ。「ぬるい職場」になると、組織全体のパフォーマンスが低下し、優秀な社員が退職するリスクも高まる。
そのため、意識が低い社員の評価を減点し、他の評価スコアで加点された点数を「差し引く」必要がある。これはインパクトが強い方法だ。しかし、会社のメッセージがより明確に伝わるために必要なことだ。
それでは、実際の評価事例をいくつか紹介しよう(すべて架空のイメージ)。
【事例①】
40歳の中堅社員についての事例。
本人は「自分はしっかりと結果を残している」と主張しているが、それは成果評価の観点からのみの判断である。組織がDXを進める方針を示しても消極的で、過去のやり方に固執し、後輩の指導も怠っている。推奨された研修に参加しないことが多く、意見を求めても「別に」という回答ばかり。
このように、組織の方針に従わない場合、情意評価は大きくマイナスになることがある。
【事例②】
27歳の若手についての事例。
この社員は成果評価は平均的だが、組織内でムードを盛り上げるムードメーカーとしての役割を果たしている。組織の方針には従うが、必要な場合には自分の意見もハッキリ言う。
日ごろから勉強しているので「心理的安全性とは快適さではなく、健全な衝突ができる環境を指す」と知っているからだ。優秀な後輩からも慕われており、情意評価のマイナススコアは少ない。
そのため、成果評価と能力評価の加点があり、それによって全体的な評価スコアが上がっている。
【事例③】
32歳の中堅社員についての事例。
この社員は他責グセがひどく、成果が出ない原因は商品、市場、そしてコロナなどの外的要因にあると考えている。
また、自身の能力開発にも後ろ向きで、不満や不平を口にし続けている。これらの態度が、若手社員にも悪影響を与え、組織にとっても示しがつかない状況だ。評価スコアがマイナスになっても、社員自身が自覚を持つようになるまで、マネジャーは対話を通じて根拠を伝える必要があるだろう。
このような社員に対しては、感覚的な評価を行うことは避けるべきである。
まとめを書く。
評価制度は、単なる評価ツールではなく、真面目に取り組む人が報われる組織にするためのツールであるべきだ。
しかし、そのような評価制度を構築するのは簡単ではない。だからこそ、常に対話を通じてアップデートしていく必要がある。
加点主義と減点主義を明確に区別し、できるだけ定性評価に逃げず、具体的な根拠を示すことがポイント。そもそも最終的な評価は抽象的なものだ。評価の根拠まで抽象的にしてはならない。
フィギュアスケートの採点に例えると、わかりやすいだろうか。抽象的な基準で【A】【B】【C】と評価されたら選手は納得できない。企業の社員も同じように納得できるような評価の根拠が必要だ。