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平安甲子園99勝! 2年ぶりVへ死闘制す 準決勝見どころ

森本栄浩毎日放送アナウンサー
龍谷大平安は、エース・市岡が気力の投球。明石商を振り切って甲子園99勝目を挙げた

大阪桐蔭、敦賀気比(福井)、東邦(愛知)などの優勝候補が次々に敗退し、近年まれに見る混戦となったセンバツは準々決勝。智弁学園(奈良)は、39年ぶりのセンバツ準決勝へ。龍谷大平安(京都)は延長にもつれ込む大熱戦の末、初出場の明石商(兵庫)をサヨナラで振り切って2年ぶりのセンバツ制覇に一歩近づいた。秀岳館(熊本)は、1点を追う9回2死から底力を発揮して逆転サヨナラで、木更津総合(千葉)の好左腕・早川隆久(3年)をうっちゃった。第4試合は、第1回センバツの覇者・高松商(香川)が、投手陣の苦しい海星(長崎)に22安打の猛攻。苦しい投手リレーを強いられたが最後まで攻撃の手を緩めず、17-8で圧勝した。

平安は甲子園100勝に王手

第1、第2試合は近畿勢同士の顔合わせとなり、この段階で近畿のチームが決勝に進むことが確定している。まず、智弁学園が立ち上がりから甲子園経験の差を見せ、滋賀学園を6-0で圧倒した。エース・村上頌樹(3年)がわずか2安打に抑える快投で、初出場校を寄せ付けなかった。104球で完封し、消耗が少なかったのは今後に生きるはずだ。第2試合は死闘となった。平安の市岡奏馬(3年=カバー写真)と明石商・吉高壮(3年)の気迫溢れる投げ合いとなり、1-1で決着は延長へ。12回、平安は先頭の市岡が二塁打で出塁し、バントで三進すると、明石商は満塁策をとった。ここで1番・小川晃太朗(3年)が左中間へサヨナラ打を放ち、2時間30分の熱戦に終止符が打たれた。市岡175球、吉高178球のタマ数が示すように、最後は両投手が気力で投げ抜いたナイスゲームだった。平安はこれで甲子園春夏合計99勝目。一昨年の優勝後、2大会連続で初戦敗退を喫していたが、今大会は投打のバランスが良く、辛抱強い戦い方ができている。原田英彦監督(55)は、劇的な試合に目を潤ませて、「選手たちがよくがんばってくれました」と声を震わせた。準決勝に勝てば中京大中京(愛知)の133勝に続く史上2校目の100勝となる。

秀岳館は、終回に底力を発揮

第3試合も熱戦に沸いた。大阪桐蔭を破って自信をつけた木更津総合の早川が、2回戦18安打16得点の秀岳館打線を、8回まで2安打に抑えて9回を迎えた。

秀岳館は、9回に追いつくと、堀江がサヨナラ打。一塁を回って喜びを爆発させる
秀岳館は、9回に追いつくと、堀江がサヨナラ打。一塁を回って喜びを爆発させる

先頭の2番・原田拓実(3年)が四球で出塁するが2死3塁となって、5番・天本昂佑(3年)はフルカウントから内角いっぱいの直球を見送って四球。早川にとってはベストピッチと思われたが審判の手は上がらなかった。これでチャンスをつないだ秀岳館は、続く広部就平(2年)がしぶとく二塁手横を抜く同点打。さらに気落ちした早川から、7番・堀江航平(3年)が中堅越えに快打を放って、2-1で逆転サヨナラを演じた。早川の低めの変化球が冴えて秀岳館打線に付け入るスキを与えなかったが、決勝点となった2死からの四球は痛恨。審判の判定とはいえ、素晴らしい一球だった。

打線上向きの智弁か、気力の平安か 準決勝第1試合

さて準決勝の第1試合はまたも近畿対決。昨秋には対戦しておらず、両エースの投球がポイントになる。準々決勝までの消耗度は平安の市岡の方が大きい。終盤にはカーブが抜け、直球とスライダーのコンビネーションで何とか投げ切ったが、中1日の休養でどこまで回復できるか。一昨年優勝時は、継投も決まったが、原田監督は、「今年は持ち駒がありません。正直、いっぱいいっぱいです」と市岡に全てを託す。

平安の岡田は、初戦でバックスクリーン右へ特大アーチ。準決勝でも鍵を握る
平安の岡田は、初戦でバックスクリーン右へ特大アーチ。準決勝でも鍵を握る

一方、智弁の村上は、直球の走りが良く、制球も申し分ない。エースの状態は智弁に分がある。ただ、攻撃陣は平安も引けをとらない。潜在能力の高い両校の2年生も随所で活躍していて、準決勝でも鍵を握る。初戦で特大アーチを放った平安の岡田悠希は、準々決勝では7番に下がったが相手から徹底マークされた。スイングは力強く、力勝負で甘くなると危険だ。智弁は3、4番の太田英毅、福元悠真が勝負強い。

智弁の太田は滋賀学園戦で初回に先制打。秋の1番から3番になって勝負強さが増した
智弁の太田は滋賀学園戦で初回に先制打。秋の1番から3番になって勝負強さが増した

太田は、滋賀学園戦で初回に先制打を放ってチームを勢いづけた。福元は、鹿児島実戦で、終盤に試合を決定づける2ラン。さらに、1番・納大地(3年)が滋賀学園戦で4安打と復調し、小坂将商監督(38)を喜ばせた。智弁打線は明らかに上昇気配だが、ここまでの3試合で左投手と当たっておらず、好左腕・市岡との対決は興味深い。日程運にも恵まれ、チーム状態のいい智弁が押し切るか、サヨナラで勢いが出た平安が気力で乗り切るか。休養日を挟んでの準決勝となるだけに、とりわけ平安がどこまで疲労から回復しているかも重要だ。

伝統の高松商 投手陣が踏ん張れるか 準決勝第2試合

第2試合は打線好調の秀岳館と高松商の投手陣の激突。秀岳館は、1、2回戦で打線が集中打。準々決勝も土壇場で打線がつながった。高松商は、主戦の浦大輝(3年)に疲れがみられる。

高松商の浦は創志戦で完投したが、海星戦は途中降板。強打の秀岳館を抑えられるか
高松商の浦は創志戦で完投したが、海星戦は途中降板。強打の秀岳館を抑えられるか

海星戦では得意のスライダーが高めに浮き、痛打を浴びた。準決勝でも先発が予想されるが、リードした状態で美濃晃成(3年)につなげるか。2回戦のように変化球を低めに集めないと、秀岳館は長打がある。打線に目がいきがちだが、秀岳館は投手の総合力も見逃せない。準々決勝で先発した大型右腕の有村大誠(3年)は、8回を1点に抑え、鍛治舎巧監督(64)の期待に応えた。準決勝先発は、準々決勝サヨナラ打の堀江か。中井雄亮(3年)、田浦文丸(2年)、川端健斗(2年)の左腕3枚も甲子園のマウンドを経験し、特に不調だった投手はいない。特定の勝ちパターンを作らず、臨機応変に起用するが、大会終盤に5人の使える投手を擁するとは他校からみればうらやましい限り。高松商は、競り合って投手の交代機をとらえたい。51年ぶりに4強進出を果たした第1回センバツ優勝の名門・高松商が、伝統の力を発揮できるか。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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