シリ、アレクサ、グーグルは反競争的、EU競争当局が懸念、バイデン大統領がTikTok禁止を撤回
筆者が注目した海外発最新テクノロジーニュース3本をダイジェストで
[1]「Siri」「Alexa」「Google Assistant」は反競争的、EU競争当局が懸念
欧州連合(EU)の競争当局が米テクノロジー大手3社の人工知能(AI)音声サービスに反競争的慣行の可能性があるとの懸念を表明した。ロイターが6月9日に報じた。
欧州委員会は1年にわたり、米アップルの「Siri(シリ)」、米アマゾン・ドット・コムの「Alexa(アレクサ)」、米グーグルの「Google Assistant(グーグルアシスタント)」を調査していた。
欧州委で競争政策を担当するマルグレーテ・ベステアー上級副委員長は「我々がよく知っている慣行がティッピング(市場の偏り)やゲートキーパー(門番)の出現につながる可能性があることが分かった」と述べた。
欧州委は最終報告書を2022年上半期までにまとめ、その後提訴するかどうかを決めるという。
アマゾンは「この市場に単独の勝者はいない」と反論している。「アレクサは14万種のスマートホーム機器と互換性がある。1台の機器で複数のサービスを利用できるようにするため、80社が参加する相互運用性の取組みにアマゾンも参加している」と述べた。
EUは自社製品・サービスの優遇などを禁じる「デジタル市場法」の22年施行を目指している。
[2]社員向け医療サービス「アマゾン・ケア」の外販本格化、複数企業と契約
米アマゾン・ドット・コムが医療サービス「アマゾン・ケア(Amazon Care)」を提供する契約を複数企業と締結したと、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や米CNBCが6月9日に報じた。
WSJのヘルステックに関するオンラインイベントでババク・パービズ副社長が明らかにした。今夏にも契約企業を公表する予定だという。事業拡大のために新たに数千人を雇用するとしている。
アマゾンは2019年9月、同名の医療サービス部門を立ち上げた。当初は実験プロジェクトという位置付けだったが、20年2月に本社のある米ワシントン州シアトルで社員と家族向けに本格サービスを始めた。専用アプリを通じ、ビデオ通話とテキストチャットによるオンライン医療相談が可能で、必要に応じて訪問診療・看護も受けられる。処方薬の配達サービスも利用できる。
21年3月には規模を全米に広げ、他の企業にも提供すると発表。今夏までに米50州でオンライン医療相談を開始し、首都ワシントンやメリーランド州ボルチモアなどの都市で対面サービスを始めるとしていた。パービズ副社長は今回の声明で「できるだけ早く対象地域を広げ、将来は地方部でも提供する」と意気込みを示した。
[3]「TikTok」禁止するトランプ氏の大統領令、バイデン大統領が撤回
バイデン米大統領は6月9日、中国系の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」や対話アプリ「微信(ウィーチャット)」などとの取引や、米国内での使用を禁じるトランプ前大統領の大統領令を撤回すると発表した。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や米CNBCが同日報じた。バイデン大統領は新たに大統領令を出し、敵対国が関与するアプリが米国の安全保障に脅威をもたらしているかどうかを判断するため、広範な調査を実施するよう政府機関に指示した。
TikTokを巡ってはトランプ前大統領が2020年8月、「米国人利用者の個人情報が中国政府に渡っており、国家安全保障上の懸念がある」とし、米事業を親会社の中国・北京字節跳動科技(バイトダンス)から切り離し、米企業に売却するよう命じていた。
トランプ氏はアプリの配信禁止も命じたが、首都ワシントンの連邦地裁は配信禁止措置は「行き過ぎの可能性がある」として一時差し止め命令を下した。21年2月にはバイデン大統領が広範囲に及ぶ見直しに着手したため、米事業売却計画が無期限延期になったと報じられた。
WSJによると、バイデン大統領の新たな大統領令は特定の企業を対象にしたものではない。だが、中国発のアプリはトランプ前政権時代よりも厳しい締め付けを受ける可能性があるという。